【投稿】明快な判断―広島高裁の伊方原発3号機運転差し止め仮処分決定

【投稿】明快な判断―広島高裁の伊方原発3号機運転差し止め仮処分決定
                           福井 杉本達也

1 広島高裁:森一岳裁判長・伊方原発3号機運転差し止め認める
1月17日、広島高裁:森一岳裁判長は、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを山口県の住民が求めた仮処分申し立てで、広島高裁は、運転してはならないとする決定を出した。決定の中で、原発付近に活断層がないとした四国電力の調査は不十分で、阿蘇山の大規模噴火時の想定も過小評価だと判断した。運転を差し止めの判断は5件目で、うち高裁段階では2件目となる。3号機は定期検査で運転を停止中であるが、司法判断が翻らない限り、運転再開はできない。ただし、差し止めの期間は山口地裁岩国支部で係争中の差し止め訴訟の判決言い渡しまでとした。
伊方3号機をめぐっては、広島高裁が2017年12月、阿蘇山の破局的噴火で火砕流の影響を受ける可能性があるとして、運転をしてはならないとする決定を出したが、同高裁の異議審では取り消されてしまった経過がある。

2 伊方原発の沖合数百mに「中央構造線」の活断層
今回の即時抗告審で一番大きな論点だったのは活断層と火山、特に弁護団が重視したのが、伊方原発の沖合500~700mの佐田岬沿岸に「中央構造線」(MTL)の活断層があるかどうかであった。四国電力は音波調査から、「中央構造線系断層帯」の南側・伊方原発がある佐田岬半島北岸部には活断層は存在せず、活断層が敷地に極めて近い場合の地震動評価は必要ないと主張したが、2017年12月の国の地質調査研究推進本部が断層帯の長期評価を見直し、佐田岬半島沿岸の中央構造線については「現在までに探査がなされていないために活断層と認定されていない。今後の詳細な調査が求められる」と活断層である可能性に言及した。新規制基準では、敷地から2km以内に震源域がある場合、より厳しい設置基準が要求されている。
原告側は、四国電力が音波検査によって確認したと主張する佐多岬半島沖合8kmの断層=「中央構造線系断層帯」と称される断層群はは副次的に形成された「偽物の活断層」にすぎず深部で基盤に達していないとする(抗告理由書3・補充書3:2019.10.15)。一方、本来の「中央構造線」は伊方発電所の600 m 沖付近を通過しており,直近に隣接する伊方発電所は「中央構造線」のダメージゾーンに位置している(早坂康隆広島大大学院准教授資料:2016.11.13)と反論した。
高裁決定は「長期評価の記載は音波探査では不十分であることを前提にしたもの」と指摘。ようするに、伊予灘での四国電力の地震波探査結果から伊予灘でも中央構造線が活動しており、「中央構造線」は四国電力が主張するような、沿岸から8km沖合の離れた断層帯ではなく、活断層の「中央構造線」は佐田岬半島の沿岸すれすれに走っており、「本件発電所の敷地至近距離において、地質境界としての中央構造線自体が正断層成分を含む横ずれ断層である可能性は否定できない」(決定要旨)として、山口地裁岩国支部決定の判断を覆したのである。

3 最大規模の火山噴火は現在の科学の水準からは予測できないとした
さらに高裁が新たな判断を示したのが、原発から約130km離れた阿蘇山の火山リスクである。破局的噴火については、発生頻度はめて低く運転差し止めを命じるほどのリスクはないと判断したものの、「破局的噴火に至らない程度の最大規模の噴火」で、四国電力が想定する噴出量を大きく超える数十立方kmが噴出すると指摘した。その上で、原子炉設置変更許可申請を問題ないとした規制委の判断は誤りで不合理だと結論付けた。
岩国支部の2019年3月15日の決定では、「巨大噴火の可能性の評価については,①現在の火山学の知見に照らした火山学的調査を十分に行った上で,火山の現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状態ではないことが確認でき,かつ,②運用期間中に巨大噴火が発生するという科学的に合理性のある具体的な根拠があるといえない場合は,巨大噴火の可能性が十分に小さいと判断でき,巨大噴火によるリスクは,社会通念上容認できる水準以下であると評価することができる。」としていた。しかし、今回の広島高裁決定では「現在の科学技術水準によれば,火山の噴火の時期及び規模を予測できるとしても精々数日から数週間程度前にしか予測できないから,本案訴訟の確定判決が得られる前にそのような事態が生じることもあり得る」として火山噴火予知などほとんどの火山でできないという現在の火山学の水準から判断しての合理的決定を下したといえる。
以上2点に争点を整理したうえで、福島第一原発事故等の災害経験を踏まえ、伊方原発から30~40km離れた距離に住む山口県の住民であっても「本件原子炉施設について放射性物質が外部へ放出される事故が起こったときに,その生命,身体等に直接的かっ重大な被害を受けるものと想定される」としており、非常に論理的に整理され、明快な決定である。

4 政府・電力会社は何の反省もなく原発再稼働に盲進
広島高裁のこうした明快な決定にもかかわらず、相変わらず政府・電力会社は原発再稼働推進の姿勢を崩していない。「梶山弘志経済産業相は17日、記者団に「(原子力規制委員会が)世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると判断した」と述べ、原発再稼働を目指す政府方針は今後も変わらないとの立場を強調した。…電気事業連合会の勝野哲会長(中部電力社長)は同日の記者会見で『極めて残念だ』と表明。原発は『エネルギー資源が乏しい日本で電力の安定供給など引き続き役割が大きい』との考えを示す」(時事:2020.1.17)と広島高裁の決定にもかかわらず、全く反省の色はない。
しかし、再稼働勢力の存在は益々影が薄くなりつつある。関西電力は現在稼働中の高浜3、4号機も、いわゆる『テロ対策施設』=「特定重大事故等対処施設」 (特重施設)の完成が遅れるとして、それぞれ、今年8月及び10月に稼働を停止すると昨年末に正式に発表した。定年退官前の判決とはいえ、権力に忖度しない森裁判長のような裁判官も今後どんどん生まれてくるであろう。日本では近々に稼働する原発は一つもなくなるであろう。3.11から10年、東京オリンピック誤魔化し策略にもかかわらず、人類の手ではどうしようもない原発事故の悲惨さは益々あきらかになりつつある。原発のない社会がもうすぐ来ることを期待したい

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