【投稿】一消費者が大企業東芝を謝罪させる–見えてきたインターネットの力–

【投稿】一消費者が大企業東芝を謝罪させる–見えてきたインターネットの力–

インターネットをはじめてから2年ほどになるが、これほど「私たちの力になり得るんじゃないか。スゴイ。」と思ったのは初めてである。
事態の経過を、当事者のAKKY氏のホームページより簡単にまとめると次のようなことになる。
AKKY氏は昨年末に東芝のビデオを2台購入した。しかし、2台ともノイズが出る。東芝に問い合わせたところ、いろいろとたらい回しにされたあげく、東芝本社への問い合わせの電話に対し、考えられないような暴言を吐かれた。これに対し、東芝に謝罪を要求したが受け入れられないため、そのやりとりの録音をインターネットのホームページ上で公開した。というものである。
その暴言なるものを聞いてみた。東芝社員の対応はまったくぶっきらぼう、「なんで電話してくるんだ」という感じで、「あんたみたいなのはお客じゃない」「新製品だって不良品があってあたりまえだ」というような発言には唖然としてしまう。これに対し、東芝側は、ホームページの削除の仮処分申請をし、対決姿勢を強めた。しかし、このホームページは大きな反響を呼び、東芝に非難が殺到。とうとう東芝は仮処分申請を取り消し、自らのホームページに7月19日付で謝罪文を載せざるを得なくなった。AKKY氏のホームページへのアクセス数は、7月19日現在でなんと5,974,184という膨大なものである。これらはすべて自分で選んでアクセスしている訳だからその影響力は計り知れない。もし、インターネットを利用しなければ、泣き寝入りか、仮に訴訟を起こしても、その費用と要する時間でとても大企業には太刀打ちできないだろう。まさに、一消費者が、情報の速さ、情報のリアルさ、大量伝達性とういうインターネットの利点を武器にして、大企業を屈しさせたのである。
しかし、歓迎すべき事ばかりではない。AKKY氏には励ましやまじめなアドバイスのメールもたくさんあったようだが、一方で、東芝社員をかたった嫌がらせや、差別的な言辞を弄して彼を非難する卑劣なメールもかなりあったようである。その匿名性ゆえに、インターネットが犯罪や差別の温床だという負の側面も垣間見た気がした。
いずれにしても、インターネットという新しい時代のツールがもつ大きなパワーと可能性を思い知らされた事件であった。
以下、東芝のホームページに載った謝罪文の一部を転載する。

「お客様各位 1999-7-19

株式会社 東芝

VTRのアフターサービス問題について(お詫びとご説明)

(中略)
2.お客様への発言
上述のとおり、1月はじめの修理依頼から改修後の製品の返送に至るまでの過程で、 お客様との間でいくつかの行き違いはあったものの、当社といたしましては、 できる限りの最善の対応を行ったと考えています。
しかし、お客様とのやり取りの中で、一部対応窓口においてお客様に対する態度としては不適当な発言があり、 これがお客様のホームページ上に音声ファイルとして公開され、当社に対し、多くのご批判をいただきました。
当社といたしましては、この発言につきましては、お客様に対する言葉としては礼を失した不適当なものであり、 重大に受け止めています。今回の発言は、いかなる事情を考慮しても、不適当なものであり、真摯に反省しております。
まず、この場におきまして、この不適当な発言により、お客様に多大なご迷惑をおかけし、 不愉快なお気持ちにさせてしまったことにつきまして、心よりお詫び申し上げます。
現在、当社は、お客様から面会を拒否され、直接お会いできない事情にございますが、 あらためてお会いいただくようお願いをし、ご面会の機会が得られましたときには、 改修の技術的内容をあらためてご説明するとともに、不適当な発言があったことにつきまして、 心からお詫びを申し上げたいと存じます。
また、今回の発言について、多くのお客様方から厳しいご批判をいただきました。 これらに対しまして、謹んでお詫び申し上げますとともに、今後、二度とこのようなことがないよう、 あらためて社内に徹底を図っていきます。」(後略)
若松一郎

【出典】 アサート No.261 1999年8月21日

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