【投稿】原発直撃地震の可能性

【投稿】原発直撃地震の可能性   -兵庫県南部地震が提起したもの-

<<「楽に立っていられる」安全実証試験>>
この3月10日に、原子力発電機構・多度津工学試験所(香川県多度津町)は、世界最大規模の震動台を使った原発機器の実証試験をマスコミに公開したという。その日、蒸気配管、給水配管のそれぞれ1/2の模型を15㍍四方の震動台に設置、水平方向1503ガル・上下方向352ガルの加速度で揺らした。記者の報告によると「振幅が約3㎝と小さいのでひざで揺れを吸収して楽に立っていられる程度」であったが、それでも「配管の支持部分などはガタガタと大きな音をたてて揺れた」という。試験所の担当者は、実験の前後の配管内圧モニターの数字が変動せず、「全く影響はなかった」と胸を張ったそうである(3/11日経)。これで「原発の安全神話」が実証されたというわけである。
この報道で一見して明らかなことは、上下方向の揺れが極めて少ないことである。兵庫県南部地震では、352ガルどころか、大阪ガス神戸では833ガルを記録しており、600~800ガルを観測した地域は幾つも確認されているのである。縦揺れが横揺れを大きく上回った地域も確認されている。そして最新耐震基準をクリアした建造物が数多く崩壊しているというのに、「ひざで揺れを吸収して楽に立っていられる程度」とは、何という現実を無視した実験であろうか。実は多度津工学試験所は、そもそも最大加速度値を300~400ガルにしか想定していないのである。これは何もこの試験所に限らず、すべての耐震設計の基準になっているからでもある。この「最大加速度値300~400ガル」というのは、関東大震災の時、たまたま東大の地震計記録が392ガルだったことからきており、震源地の小田原周辺では約600ガルに達していたことが、震災1年半後の1925年に政府にも報告されていた。ところが新耐震設計では、600ガルにもすると「用途上、経済上問題がある」として、東大地震計の記録を関東大震災の最大加速度にすり替えてしまったのである。

<<まっかなウソ「福井県ではM6.5を超す地震はありえない」>>
したがって、「今回の地震は、世界最大級の内陸直下型地震だった」、「今回の地震で、関東大震災の二倍以上の最大加速度が観測された」などというのは、ごまかしと責任回避以外のなにものでもない。観測され、記録されている限りだけを見ても、日本における最大の内陸直下型地震は、1891年10月28日の濃尾地震(M8.0)であるが、この地震による死者は、岐阜・愛知両県を中心に合計7273人に達し、今回の死者の約1.5倍にもなったのである。このときの最大加速度は1000ガルを超えている。1893年9月の鹿児島県の「知覧の地震」では上下加速度が980ガルを超えたと見られている。1971年2月のサンフェルナンド地震では1148ガルを観測している。
原発15基が集中する福井県では、1月17日の震災当日、10基の原発が稼働、敦賀市内は震度4であったが、どの原発も停止せずに運転を続けた。関西電力若狭支社は「点検して異常なしを確認した。震度6でも大丈夫だ」と発表したが、同月25日、関係自治体、電力会社、住民代表が加わる福井県原子力環境安全管理協議会が開かれた席上、多くの疑問と疑惑の声が出た。「固い岩盤の上にあるというが、岩盤が破砕しない保証はない」、「阪神大震災は、通常の原発の耐震設計基準になっているM6.5を上回っているが、大丈夫か」という質問に対して、通産省資源エネルギー庁は「M6.5を上回る設計をしているかどうかは立地によって違う。福井県ではM6.5からM7を超す地震はありえない」と答えている。ところがこれは真っ赤なウソである。1948年6月28日の福井地震は、M7.1、死者3769人、全壊3万6184戸、半壊1万1816戸、焼失3815戸を数えているのである。

<<原爆型原子炉「もんじゅ」の恐怖>>
同じ1月25日、福井地裁で、動燃の高速増殖炉「もんじゅ」(敦賀市、28万kw)の運転差し止めを求める訴訟の口頭弁論が行われ、傍聴席は満席となり、原告側証人の生越忠・元和光大教授は「もんじゅで想定されているM6.5前後よりはるかに大きな地震は敦賀半島でも起こりうる。淡路島と伊勢湾、敦賀半島を結ぶ三角地帯には、活断層が密集し、活動期を迎えている。もんじゅの設置基準では不十分」と証言している。これに対して、2月12日、大阪市内で開かれた「もんじゅ」意見聞く会で、動燃側は、「もんじゅは地表での加速度1000ガル以上の水平動にも耐えられる設計であり、上下動の強い直下型地震を起こすような断層が真下にないことを確認している」と現行基準の妥当性を主張し、活断層の「真下にはない」ことを強調した。ところが、動燃が80年12月に提出したもんじゅの設置許可申請書には、生越氏が指摘する密集する活断層の一つ、敷地のわずか1キロ西の白木―丹生断層の存在をわざわざ隠していたのである。
しかもこの高速増殖炉は、燃料にプルトニウムを使うために、燃料棒同士が近づくだけで原爆と同じ暴走の可能性が極めて高く、その上に冷却系に使わざるを得ない液体金属ナトリウムは水と接触するだけで大爆発を起こすしろものである。95年末には正式運転を目指しているが、「楽に立っていられる」程度の実証試験でも「配管の支持部分などはガタガタと大きな音をたてて揺れた」とすれば、小規模地震や中規模地震でさえ、出力暴走やナトリウム爆発の現実的可能性がますます高まっているといえよう。長崎の被爆は8kgのプルトニウムであったが、もんじゅは内蔵しているだけで1.4tものプルトニウムをかかえている。実際にそのような事故が起これば、何百万単位の死者にとどまらず、放射能の半減期2万4000年のプルトニウムが近畿一円から日本全体、全世界にまき散らされ、はかりしれない人類の破滅的被害をもたらすであろう。
「浜岡原発と東海地震」の論文がある小村浩夫・静岡大教授(物理学)は「直下型に限らず、地震は原発の一番の弱点。例えば、沸騰水型原発は振動で原子炉の中の気泡が抜けて、核反応が増して核暴走しかねない」と指摘している(1/22毎日)。

<<日本には安全な原発立地場所はどこにもない>>
原発の安全性をめぐる問題は、これまではどちらかといえば原子炉そのものの安全性、放射性廃棄物の処理・汚染の問題、温排水の環境問題、そして核燃料サイクルの危険性の問題などに重点が置かれていたと言えよう。筆者もそのような視点からしか見ていなかった。ところが今回の兵庫県南部地震は、原発の立地そのものの危険性を誰の目にも明らかにしたのではないだろうか。原発の立地の際に問題になる、地盤、地震問題が日本の原発にとって最大の問題として浮かび上がってきたとも言えよう。日本列島の成り立ちからすれば、そして二千以上にも及ぶ現実の活断層の分布からすれば、原発にとって安全な所など日本にはどこにも存在していないのである。現行の耐震設計基準やたとえそれを上回る原発の耐震基準であったとしても、地震による地盤の隆起、沈降、陥没、地割れ、新たな断層の出現の前にはまったく無意味なものになりかねない。
世界の原発で地震の直撃を受けて事故を起こした例は確かにまだ一つも存在していない。原発設置の歴史がまだ浅く、またたまたま地震活動の静穏期に一致していたこと、日本を除けば世界の原発の大部分はアメリカ中東部やヨーロッパ中北部の無震地帯に設置されていることなどから、地震の直撃を受けていないわけである。日本では過去に一回だけ、93年11月東北電力の女川1号機で地震直後、炉内に泡が発生して中性子が増え自動的に停止している。しかし今回の地震はそれ以上に、日本列島を取り巻く地震の巣が活動期にすでに入っていること、原発の立地点がほとんど活断層上かその近くに位置していること、日本には事実上安全な原発の設置場所はないことを示した点で大きな警告を発したといえよう。

<<日本が最初の地震直撃原発事故の可能性>>
静岡県の浜岡原発などは、予想される地震の中で最も危険性と可能性の高い東海地震の震源地のど真ん中に立地している。東海村、六ヶ所村もしかりである。愛媛県の伊方原発などは日本列島でも最大の断層である中央構造線上に位置している。新潟県の柏崎刈羽原発では92年に活断層が確認されている。敦賀の日本原電敦賀原発1、2号機と動燃の「ふげん」の真下に活断層があることが91年発行の「日本の活断層」に記されている。こうした事実は、日本が世界で初めての地震による原発事故の犠牲になる可能性が極めて高いことを示している。日本は、もはや躊躇なく原発から撤退することが国内的にも国際的にも求められている最大の義務といえよう。
先に紹介した生越忠氏は、『新版 検証・日本列島 地震国日本の宿命 どこが、何が危ないのか?』(日本文芸社刊、1200円)の中で「地震予知学者が地震危険地帯と認めた場所をわざわざ原発の立地点に選んだわけではなかろうが、それにもかかわらず、多くの原発が次々に地震危険地帯に建設されているという恐るべき事実」を告発している。最近刊行された広瀬隆著『柩(ひつぎ)の列島 原発に大地震が襲いかかるとき』(光文社刊、1500円)とともにぜひとも紹介しておきたい。(生駒 敬)

【出典】 アサート No.208 1995年3月18日

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