【投稿】社民・リベラル新党と3極構造の産みの苦しみ

【投稿】社民・リベラル新党と3極構造の産みの苦しみ

55年体制の崩壊から95年体制への移行は、小沢の社会党いじめが裏目に出て、自社さきがけ連立政権が生まれたことから混迷を深めている。政権に復帰した自民党は、復権を果たした竹下の支配のもとで新・新党に対抗する選挙戦の青写真を仕上げつつあり、一方小沢に対する緊急避難で連立政権をつくった社会党は、選挙協力の可能性が少ないことが明確になればなるほど社民・リベラル新党に傾斜せざるを得なくなっている。来年予想される総選挙は、復活した自民党の独り勝ちか、反自民の選挙協力かというせめぎあいが続いている。いずれにしても、戦後体制の崩壊はいよいよカウントダウンに入り、国民のために新しいビジョンを打ち出すことができる党が生まれるのかどうかを、今こそしっかりと見つめ参画しなければならない。

○動きだした政界再編第2幕
小選挙区比例代表並立制の衆議院通過によって、政界再編の第2幕が俄然活気を帯びてきた。しかし、12月の結成を目前にした新・新党の中で公明党が、任期を3年半残す参議院議員11人と約2000人の地方議員、600人の党職員は新たな公明新党に残すという「分党」=二股膏薬方式を掲げる他、今や落日の日本新党や支持率低下が著しい新生党に、党内矛盾を抱えたままついてきた民社党という寄せ集め集団に国民が大きな期待を懐けなくなっている。新党の政策も各政党の従来の政策の寄木細工であり、新保守から社民まで幅広い勢力が反自民という一点で集まった第2自民党となっている。したがって明確な理念も思い切った政策も期待できないうえに、自民党に秋波を送る公明党の動きに結党前から白けた雰囲気が漂い始めている。
連立与党側はと言えば、竹下復権で総選挙への準備を固める自民党も、社会党の山花前委員長の新民主連合結成から離党=新党づくりの活発化によって村山連立政権の瓦解をくい止めるのに必死である。また自民党・社会党・さきがけの連立政権をつくるまでは勢いの良かった新党さきがけも、国民の前に新しい時代を開くビジョンを未だに打ち出せないばかりか、自民党の前では日に日に影が薄くなりつつある。
村山内閣の支持率は39パーセントと少し不支持率を上回っているが(11月6、7日朝日新聞調査)、国民の中には社会党に対する失望感が広がりはじめている。連立政権とは言え党首が首班の内閣をつくりながら社会党の従来の主張をほとんど実現できないばかりか、消費税の引上げを打ち出すという公約破りの姿勢について不満が募っている。そんな不満に拍車をかけているのが非武装中立放棄・日米安保容認、自衛隊合憲、原発容認など方針を大転換しながら何故か今だに続く党内抗争である。左右両派の派閥抗争はお家芸とはいえ、左右の政策の対立がなくなったにもかかわらず新民主連合の結成に相変わらずの派閥抗争を見て失望をしている。

○社会党右派の社民リベラル新党づくり
時代の変化を無視して、あくまで従来の社会党の路線を継承するのは護憲新党であり、冷戦後の世界に対応した新しい政治が求められている状況下で社民勢力が生き残る道は、連合をバックにした社民リベラル新党しかないということが右派を中心とした認識である。この背後には7単産(全逓、情報労連、電気連合、電力総連、鉄鋼労連、自動車総連、ゼンセン同盟)がついていて、集団離党→新党結成→新・新党との連携へという目論見をもっていた。一方、自治労を中心に新民主連合の動きに警戒をしている労組は、党分裂=村山政権崩壊を恐れるとともに、旧同盟系の狙う小沢主導の新・新党への合流を阻もうとしているからだ。
つまり新民主連合を解剖すれば①旧連立勢力の新・新党との連携を深めることを意図したグループ(松前仰・左近正男・など旧新政策懇話会=数人)②新党はつくるが、自民党、新・新党とは一線を画す勢力(自社連立に反対し改革を推進する連立政権を実現する会=本岡昭次氏ら数人)③社会党内にとどまり民社党などからの離党者を吸収し、力を蓄えてから新党に移行する考えの勢力(五島正規・岩田順介・佐藤観樹氏ら約20数人)に別れているようだ。

○社民リベラルの行方
政権を取った自民党の社会党安楽死作戦は、このまま行くと来年の統一自治体選挙を前にした社会党分裂=村山政権崩壊という自民党にとっては総選挙にやや不利な状況を生む可能性がでてきた。国民にとっては自民党と反自民の対立というよりも、時代に対応した争点を明確にした闘いを期待したいところである。しかし現実には、政権に復帰して息を吹き返している55年体制の亡霊=自民党をまず崩壊させるために、反自民の統一戦線でまず自民党の息の根を止める小選挙区選挙をする必要がある。
次回の選挙で自民党の敗北=党分裂を導いてから、自民党タカ派と新・新党のタカ派の合流による「新保守党」の誕生と自民党ハト派と新・新党ハト派による「新リベラル党」の誕生、そして旧社会党右派と旧民社党一部を中心とした社民政党の誕生につながることが最も国民にわかりやすい政治になるのではないか。そのためには来年に予想される総選挙で、各候補者が政治改革や福祉や環境あるいは人権、平和についてどのような考えかたを持ち行動をしているのかを国民がしっかりと見つめていく必要がある。小選挙区選挙になることによって、候補者の政策や人格に対する有権者の目がより厳しくなるのは必至である。そして小選挙区のただ独りの代表者が国の官僚に対する発言力を強め、結束して地方分権のために国家官僚の解体と地方への分散に取り組むように有権者の闘いを強めていく必要がある。政治改革は、まだ始まったばかりである。(94年11月11日大阪M)

◆リベラル、新保守、社民の3極の政策の相違 (インサイダー№327 より抜粋)

対立軸   リベラル 新保守  社民
福祉 福祉国家 自立・自助  分権型福祉社会
政府 大きな政府  小さな政府  小さな政府・大きな自治体
税制 国税中心の累進課税 間接税中心の一律課税 地方税中心の総合累進課税
分権 中央集権の是正 上からの分権論  下からの分権論
貿易 管理による可能な限りの自由貿易 構造改革による徹底した自由貿易 混合公正貿易
安保自衛隊 軽武装経済優先 武装平和 普遍的安全保障による非武装

【出典】 アサート No.204 1994年11月15日

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