【座談会】総選挙後の情勢をどう考えるか

【座談会】総選挙後の情勢をどう考えるか   (匿名座談会第2弾)

☆.新党勢力‥・新たな保守の受け皿/☆政権交代の意味を考えてみるのも/☆新党の伸長をどう見るか☆選挙制度改革への態度について☆93宣言は効果があったか/☆新党が強調したこと☆政界再編と連合の役割☆社会党は再生可能か/☆共産党は蚊帳の外でいいのか☆団体献金の禁止と公費助成

歴史的結果を生みだした衆議院選挙を終えて、情勢は非自民政権の確立と、従来の保守革新の枠を越えて、新たな政治再編を急速に進もうとしている。
大阪府委員会は、7月25日にこうした問題について、議論を行った。

<新党勢力‥・新たな保守の受け皿>
0:まず最初に今回の総選挙の感想ということで皆さんのご意見をいただきたい。全体的な評価というところではどうだろうか。
A:宮沢は今国会で政治改革をやると、とりわけ選挙改革をやると言いきったが、中曽根らの長老の圧力の中で言うことが変ってきた。社会党の議席が前の消費税の関係で多いと言う関係があって、日本新党やさきがけ、新生党ができる前であれば自民党は敗北していただろう。そういう意味で「第2自民」としての新生党やさきがけの役割があったし、財界の支援もあったと見ておくべきだ。今回の選挙結果を見ると社会党だけが負けて新生党や日本新党などの第2自民が伸びた。選挙前からマスコミなども社会党バッシングに中軸をおいていたのではないか。社会党を伸びさせない、自民党への不満を吸収する受け皿作りをしたと理解すべきだろう。そういう意味では財界は自信を持っている。例え自民党が分裂しても全体的に見て安定的な保守勢力があればあえて自民党にこだわる必要はない。保守2大政党を展望したところに今の政権構想もあるのではないか。
逆に言えば、社会党がなぜあれほど負けたのかが問題だ。政治改革の議論に社会党がまともに乗ったことが良かったのか。選挙制度よりも定数是正や腐敗防止法等の改革を先にやるという共産党の議論はある程度正しかったのではないか。そこの議論を抜きにしていきなり連立政権構想ということで羽田派との連携とか社会党は一見情勢に機敏に対応しているようで実はぶれているだけのようにしか見えなかったのではないか。政治改革の議論はマスコミで騒がれている投票率を見てもわかるように、国民が主体的にかかわろうというテーマではなくて、ドラマを見ているように蚊帳の外からおもしろおかしく見ていると言うのが実態ではないか。政治改革や非自民政権などよりも不況の問題や福祉などの身近な政策を出していく方が良かったのかなと思う。マスコミの論調に躍らされてきたという社会党のスタンスがあったのではないか。
今後の政権構想を考える上で、社会党の支持層の中には、社会党の革新性に期待していたリベラルな部分があるので、その部分を捨ててまでもで安易に政権協議に乗るというよりも、もっと地に足のついた社会党内部の議論をきちんとやって、浮わつかず対応すべきだと思う。公明、民社は頑張ったが、民社はたちが悪いと思う。わずか15議席の党が社会党に向かって「左ミを切らなければ政権協議に乗らない」というのは失礼な話で、マスコミもそれをつかって社会党バッシングをやっている。そこは社会党の主体性をしっかり持って政権協議に乗っていくように言いたい。

<政権交代の意味を考えてみるのも>
T:自民党が政権をおりる可能性がある。この事態はいままでなかった事で、例えば、官僚との関係で、米価審議会など総て白紙だという事がいわれている。結局保守が勝ったといういい方があるが、自民党以外のところが政権を握るということになると、経済にたいして影響を与える可能性があり、やはりこれも一つの政権交代だとおもう。これがいいか悪いかはわからないが大きな変化という感じがしている。社会党が負けたということをどう考えるか。本来の支持者を大事にしていない、主張が曖昧だったという意見もわかるが、従来の社会党の護憲・PKOなどの主張が弱かったから負けたのかというところはよくわからない。それよりも自民党が下野せざるを得ない状況というのはもっと大きな影響があるのではないか。そこから、政権が変るということで経済についても今までと違った対応が出てくるのではないか。その意味では変ったほうがおもしろい。これから政権交代が繰りかえす中で投票率もあがるのではないか。
0:朝日新聞によれば、総保守という観点からみれば今回の選挙ではあまり変っていないという記事が出ていたが。
B:あれは重要な視点だ。自民党に新生党とさきがけをプラスして、絶対得票率でいけば5大政党は総て従来通りの逓減傾向をそのままさし示しているというものだ。総保守は相対得票率では増えているが、絶対得票率では減っている。そこで棄権の果たした意味を分析している。1/3が棄権し、残りの2/3のうち2/3が自民党以外に投票した。自民党に投票したのは1/3で、明らかに時代は変ってきているという考えだ。ここに政権交代の現実的可能性が国民的レベルで確認されたという言い方だった。

<新党の伸長をどう見るか>
C:今日の議論のテーマとして、一つ目に、非自民党政権の成立を我々はどう考えるかということ。もう-一つは新党勢力の伸長をどう考えたらいいか。それと社会党の問題。更に非自民党政権成立後、どんな展開が考えられるか。それを貰いていわゆる旧革新といわれる部分がどういう対応をとるべきかということになるとおもう。
総保守が増えただけだという意見がある。選挙速報を見ていて新党の出ていないところはあまり変化がないのでおもしろくない。国民が新党に投票した原動力というのは新しいものにたいする期待感が絶対あるはずだ。もし、日本新党とさきがけが自民党と連立を組むことになれば次の選挙ではぜんぜんだめになる。その意味では彼らも危ない橋を渡っている。投票率が低かったということは別の総括がいると思うが、日本の国民も新しいものを選びたいという意欲を持っていたということについては評価すべきだろう。
次の選挙で自民党をさらに空中分解することができたなら、その時に本物の政党かどうかが試されるわけだ。マスコミ効果がいい悪い、例えば、投票率が低かったのは当落予想が事前にわかっていたからだという議論があるにしても、やはり自分の一票を入れることで政治が動いたということは肯定的に評価すべきだと思う。
投票率の問題だが、若い人は投票しているのだろうか。例えば、大阪3区4区で日本新党が大きく伸びたが、あれは一体どの層が入れているのだろうか。新党勢力の伸長の原動力はどこにあったのか。ともかくも私は歓迎すべき事態だとおもう。
しかし、みな次が問われているからピリピリしている。日本新党も議員総会で非自民でいかないことには納まらないという事態になった。
B:確かに新生党やさきがけは本来総保守の中の構成部分だとおもう。しかし、集って協議すると当選してきた過程から非自民でいかざるを得ないという事実は一方で存在している。その非自民がいいのかどうかはまた別の問題だが、投票行動に現れた期待度というのはそういう変化を求めた結果だとおもう。その辺をどう評価するかだ。
A:自民党が色あせ、老朽化した。そこに皇民党事件にもあらわれるように、やくざともいっしょになるような政権だったということにたいして国民の中にいやけがさしたというのは事実だろう。それにたいして斬新性を求めて新党ブームがおきたのも事実だろう。そこの国民の心境の変化というものは事実として素直に認めることはできる。しかし、よいとか悪いとかいう評価にはまだ早いという気持ちを持っている。結局このまま自民党に政権を続けさすことによって、結果的に保守に対する期待、結集力を更に弱めさせることになるという財界の危横感があったと思う。そういう意味で、自民党にかわる第2自民をどう作っていくかという中で政治浄化、政権交代が考えられた。新しい保守政権をどう作っていくかという財界の模索の中で新生党やさきがけがあるとみておくべきだと思う。
間題は、そのことが民主主義の拡大につながるかどうかということだ。その民主主義というのは国民にとってよい政府につながるかどうかという議論だ。大衆運動が無い中で政治改革の議論がされ、自民党が割れ、国民の中におもしろいけれど主体的参加はしないという状況が一つと、政治改革の議論が先行して、福祉などの国民的に身近な論議に焦点があたらなかった。その結果が小選挙区制も含めて、選挙制度の改革の議論にいっている。これが本当に民主主義の前進、よりましな政府の樹立という方向にいくのかどうかはすこぶる難しい。変化の時代で孜々がいろいろな提起をしやすいことは事実だが、それは、とり分け社会党がその主体性をいかんなく発揮しながら、よりましな政府をどう作るかという構想を現実的なものとしてだしていかないと、ただ変化があっておもしろいという議論に終わるのではないか。そのことを前進的だと評価するのはマスコミの評価と変らないのではないか。
B:大きな流れの中でいえば冷戦体制終結後の選挙であるという評価がある。確かに、55年体制、自社対決の終焉という意味でそういうこともいえるという感じもする。選挙制度改革というという論議に集約されていったがために、政策的対決は一つも明らかにならないまま選挙になってしまった。その政治改革の中身についてはより一層わけがわからない。そこにしらけたムードと棄権が多かった理由があるのではないか。その一方で社会党の対応のしかたは政策的課題でよりまし政府のあるべき姿がひとつも出てこない。そこで選択枝がなくなった。政治改革で清潔さや腐敗を防止するということで日本新党やさきがけが得点を稼ぐという構図になってしまったのではないか。だがにもかかわらず、それらは時代の大きな流れの中で、より大きくなって政権交代も可能な、よりまし政権も作りうる基盤が形成されつつあるのだという反映だとおもう。

<選挙制度改革への態度について>
T:日本新党とさきがけが政権協議の一つの柱としているのは小選挙区比例代表並立制だが、あの制度は元々自民党が言っていたことだ。あれを提案された時だれでも不思議に思うのは、「あれは自民党の言っていたことやないか。あれをいうのやったら、自民党の推進派といっしょにやってもいいのやないか」ということだ。社会党は非自民政権を作るためにそれを受け入れるといっている。
B:今度は自民党も受け入れるといっている。それなら一体何のために解散したのかということになる。
0:宮沢が一番腹を立てているよ。
T:あれを提案されたとき、受け入れるなら社会党として条件をつけるようなことができなかったのか。
Ⅰ:受け入れたら今度は自民党が一人勝ちする心配もある。何であんなもので妥協するのだろうか。
T:非自民党政権というものが近づいてきたのは確かだ。しかし、そのときに自民党が提案してきたものを踏み絵にされている。
0:もともと日本新党は連用制だったのではないか。あれはどこへいったのか。
C:そのへんは日本新党やさきがけの化けの皮がはげてくるところだ。自民党でポシャツた案でも今は勝った勢いで進めている。まさにそこで社会党がどういう主張をするかだが。今は受け入れそうな雰囲気だ。
K:いうてもあかんというあきらめが社会党の中にある。
T:それでも非自民政権を作らねばならないのか。
A:選挙改革の問題でいえば、小泉元郵政相が、旧守派とレッテルをはられているが、共産党のいっていることは正い、定数是正をきっちりすべきだ、中達挙区制の中でやるべきことはやれ、政治に金がかかるから汚職があるというのは泥棒にも3分の利の理屈だ、そのへんのけじめをつけるような政治改革政策をきっちり出すべきだといっている。これは、区割りの問題や増減の問題などで自民党の長老の中で反対があったり、小選挙区で若手がとおって良老が比例で拾いあげられるというのはメンツが保たれないといったいろんな議論の中で定数是正が自民党の中で翻弄されてきたのは事実だ。小選挙区と比例代表制を入れるような政治改革をとめるために中選挙区の中で定数是正もあるのではないかと中曾根はいった。それは逆にいえば中曾根はどっちもやりたくない。今更選挙改革の議論を止めるということは言えない状況になってきている。ということは保守総体として二大保守政党の展望も含めて、選挙改革を乗りきらなければしかたないと自民党も割りきったのだろう。それはこのあいだの両院議員総会であらわれていた議論だとおもう。しかし、そのことと社会党が今何をいわなければならないかは議論を分けるべきだと思う。それは、社会党が主体性を持ってどう政治改革をするのかという政策を独自のスタンスで出す中で、どうしても選挙改革に触れないと政治資金規制法や政治腐敗防止法などの国民が本当に期待する議論ができないのであれば、ある程度ここまでは認めるが、しかしこちらの方が大事だということをきっちり言わないとだめだと思う。社会党の議論と自民党や新生党がいっている政治改革の議論と我々はきっちり区別して評価していくべきだとおもう。

<93宣言は効果があったか>
A:もっと問題なのは、今回社会党が落ちた原因には93宣言の問題が大きいと思う。社会党の基本政策の問題を大きく見直すということだが、今まで言ってきたことを否定して新しいものを出すということでもない。情勢が変ったからこうだといっているのだが、だれから見てもすりよりにしか見えない。政権を取るために民社・公明がもっと右に来いといったときにそれに答えているとしか見えない。それが一番はっきりしているのが例えば自衛隊問題。はっきり憲法違反だといえばよい。
日本新党の細川が原則はどこかに持っていきながら現実対応は柔軟な発言が多い。それはマスコミにはわかりにくい。センセーショナルでない、曖昧性がある。これからは国民が政治的な思考を身につけていくためにもある程度指向性のある政策を出してもかまわないとおもう。その意味では自衛隊は憲法違反だとはっきり言ったらよい。現実に巨大な組織としてある。これをどうしていくのかということと現実の予算編成で防衛費をどうしていくのかという問題は別の問題であるとはっきり言ったらよい。そういう根本的な思想の部分までぶれるから社会党の本来の思想もなくなってくる。基本的な部分はこうなんだということをいえば左翼バネもそれほど働かないとおもう。93宣言の問題も基本政策の問題もすりよっているという感じしかしないから社会党に対する失望感が現れ、頼りなさが目につくような感がある。
T:自民党というのは結党以来改憲党だが、選挙でそれを支持して自民党に投票している人は圧倒的に少ないとおもう。他のところで投票している人が多いとおもう。
K:世界観の問題を前に出してもすれ違ってしまうとおもう。93宣言にしても世界観の問題に始まって個別具体の生活にかかわる問題まで一緒くたになってしまっているから、わかりにくい。もっと整理して、世界観の勝負はついたということで、ただこれまで社会党が言ってきた政策の中でこれは例えどんな政権になっても押し通すという、例えば人権とか環境とかそこははっきりといった方がよいと思う。特に、外交問題などは余り選択枝の中には入らないのではないか。
T:そのへんを社会党はいつもマスコミや他の政党に攻撃されていて、対応に四苦八苦している。
A:93宣言は選挙向けに作ったという側面があるから、選挙が終わった後、宣言の仕上げをどうするのか、このまま、なあなあで幻の宣言になるのではないかという気がする。93宣言を見るとマクロ的な問題からミクロ的な問題までごちゃごちゃになっている。改革というならもっと国民に理解されやすい政策をどうだすかということだろう。そういう意味では、長すぎる。社会党というのはアバウトなところだからもっと行動綱領的な、簡潔なものにまとめて後は国会のその都度展開していく方が現実的ではないか。あれは民社・公明相手にアリバイ的に作っているようだが、内部の説得のための文章になっている。政権を担うにあたっての地に足のついた政策研究ができているような気がしない。結果的にかえってポロがでている形になっている。新党の見通し問題でいうと、今は新しいからいいのであって、政治の流れが早い中で1、2年も経てば古くなる。そのときに、皮がはげる時が来るだろう。その時が勝負で、その意味では政治が変りやすくなっているということは同感する。その時に社会党がだめなものはだめとしながら、現実セはこういっているということを主体的にきちんと出せれば社会党の支持層は広がるのではないか。変りやすい時に自分をどういかんなく発揮できるかということが今社会党に試されてきているのではないか。

<新党が強調したこと>
B:新生党やさきがけが自民党と区別するために行動綱領的に出したもので、彼らが意図的に強調したことでは、政治改革以外に地方自治と環境問題、女性の重視などがある。これらを旧来の保守とは違うという形で出したことは見ておく必要がある。それが化けの皮がはがれるかどうかの問題になる。
A:そういう意味で一番おもしろいのは米の自由化問題だ。この間題は右か左か真ん中はない。そこでは新生党なども抽象的な書き方をしている。
B:日本新党は最初反対していたのに選挙中に引っ込めた。この間題は社会党でもしんどい。そういうことは自社対立構造ではみな自民党にやらしておいて、社会党は抵抗政党としての存在価値があった。しかし、今やそういう時代でなくなった。連合の選別推薦はどう評価するか。

<政界再編と連合の役割>
A:連合は非自民非共産政権樹立ということで社会党にもものをいう。一方で民社は自民との連立を考えていたようだが、同盟糸の幹部を集めて非自民に説得したと聞いている。個人的におもうのは、連合が今の政治の中核になる力量があるのかどうかそこから議論をしたい。連合の存在意義を問われるとした今回の春闘で結果的に負けている。連合はもっと労働者の利益代表としてもっと徹すべきだと思っている。今政界再編成の仕掛け人になる力量が本当にあるのか。連合はまず労働者の権利を守る政策をもっときっちり出すべきではないか。例えば解雇制限法や労働基準法の改正、時短促進法などやらなければならない課題がいっぱいあるのではないか。そういう政策を出す中で、その連合にとって利益になる党であれば社会党であろうと民社党であろうと政策協定を結んで選挙協力をするということが必要だと思う。前々回の参議院選挙での連合候補の躍進でおもいあがりがあるのではないか。
B:今回連合は社会党の17侯補を推薦せず10人落ちている。これは後々尾を引くだろう。
K:山岸の動きは彼の単なるスタンドプレーとは見られない。やはり有力単産が納得した上でやってるはずだ。
Ⅰ:一方で選挙の5日前だか文化人が護憲の議員を守れという声明を出した。
T:社会党は結局自分の基本政策に振りまわされている。
A:連合は今そういうことをしなければならないのか。連合は労働組合の集まりというところをきちんとするべきではないか。
0:しかし、非自民の連立政権ができれば結果的に連合は仕掛け人としての役割を果たしたことになる。そこから先が本当に連合の力が問われるだろう。
B:彼は今後も社会党の分裂も視野に入れてまだまだやるだろう。社会党は選挙戦衝の問題もあるのではないか。複数区でほとんど落ちている。

<社会党は再生可能か>
C:社会党の今後の話しだが、展望がないと思う。共産党・公明党は抵抗政党・宗教政党として生き残る。社会党はもともとアバウト政党で釆て、これだけ数が減るとつぎに社会党に票を戻すためにはイメージを大分あげなければいけない。しかし、これから分裂も含めてひともめもふたもめもしないと本当の社会党のイメージが出てこないのではないかという気がする。93宣言でも中央ではやっていても各地方では議論になっていない。政党として社会党は本当に成立しているのか。自民・共産・公明に対する社会党というなら確実にそういう層はある。そういう枠組みの中で社会党が票をとってきた歴史があった。それが選択枝がたくさんできて新党に流れ、その中でいわゆる社会党のアイデンティティーをどう出すかということが問われていて、それが今の社会党のギャップになっている。自民党では羽田のように自民党に財界の援助があっても決断するものがいた。社会党を見ると、産別出身の議員は産別の了解がなければできないだろう。最近シリウスなどの議員個人が政策を持つという萌芽が出てきたが今回の選挙でつぶれてしまった。社会党が変っていく契機が奪われてしまったという感じがする。確かに社会党の政策をはっきり出すべきだと思う。しかし出せるのだろうか。結局社会党は自社体制の中での社だったということだu 自が分解しようとしている時、社会党のアイデンティティーが逆に本当に問われてきた。その時に議員はほとんど産別の支援を受けて当選している。社会党が労働組合の支持基盤がなければ成立しない政党になってしまっている。このことでどこかで問題がおきてくるのではないか。これからどうなるか非常に恐い。
K:最悪の場合はばらばらになることも考えられる。そのとき連合が単産出身議員だけでもまとめるという役割を果たすかもしれない。
A:社会党は党員や機関紙や党費などから見ると少数政党だが、集めてくる票からすると非常に幅広いそうが支持する国民政党だといえると思う。それは一つの価値観ではなくていろいろな価値観の人間が集まっているから国民政党としての体面を保ってきたと思う。ところが、その組織実態は党員に支えられているのではなく労組に支えられている。その労組政治部としての社会党が政権党を目指すとしんどい面が出てくると思う。労組によりながら幅広い支持を得て独自の政党としての機関は弱いというのが社会党だが、今回の政権協議の中で注目を浴びているのも事実だ。しかし、社会党の混迷の中で連合がタガ填めをすることは恐いと思う。推薦候補がらみのことを含めて今回の政界再編の問題を無理に絡めると労組の組織分裂も出てくる。それだったら労組は労組としての政策を持って、政党との関係を整理した方が労組にとっても政党にとっても結果的にはよいのではないかという感じがしている。
K:今の社会党執行部よりは連合幹部のほうが現実的な面では大部ましだと思う。
A:社会党は政党である以上は国民的な政策を出さなければならない。ただ支援母体との関係で空回りしているところはある。社会党は政策研究をきちんとやって、従来スタンスは変らない中で新しいものにどう答えを出していくか、きちんと政策を出していくべきだ。それは社会党の主体性でやるべきで連合がやることではない。連合は春闘などきっちりやって欲しい。
0:基本政策では口は出さなくても労働政策では大いに発言していくべきだろう。
T:選挙の話しになるが、年内に選挙ともいわれているが、小選挙区比例代表制では結局社会党は自分の首を自分で絞める結果にならないか。政権党であるならもっと政権にしがみついて欲しいし、予算も組んで欲しい。
C:選挙制度はなかなかきまらないのではないか。きまったとしても周知期間がいる。

<共産党は蚊帳の外でいいのか>
A:社会党が選挙改革論議に乗ったのは基本的には誤りだと 思うが、ここまできたらひき下がれない。けじめはつけな ければならないと思う。それと選挙評価の問題では共産党の問題がある。共産党は一貫して原則的なことをいいつづけてきたという意味では立派だと思う。しかし、今回首班指名になった時にいつまで綺麗事で済むのか。完全に蚊帳の外で、へたをすると自民を助ける可能性がある。そういう意味では今回の非自民政権が日本の民主主義によいものかどうかは拙速な評価をしてはならないと思うが、少なくとも変りやすくしたことははっきりしているし、そこに主体的に関わらなければだめだということははっきりしているとおもう。羽田にしても社会党にしても「よりましな政権」をつくるために最大限のアクションを起こしたということは国民は見ているから、その中でも綺麗事を言い続けていくというのは現実の政治の中では共産党はまったく蚊帳の外になる。
C:東京では社会党票は大部共産党に流れているのではないか。社会党の動揺的な言動を共産党は批判したのでそれに動指した左派的な人は共産党に入れたと思う。
B:しかし、共産党の票は着実に減っている。このままでは伸びる要素はない。
Z:身の回り(社会党糸の人)を見るとほとんど共産党に入れていない。
A:マスコミが教条的左派の共産党をバッシングしなかったことに今の財界の意図が見える。

<団体軟金の禁止と公費助成>
0:さきがけ・日本新党の提案の中で公費助成を前提に企業団体献金の禁止ということがけっこう大胆にうたわれているが、この辺は腐敗防止に結び付くのか。
A:公費助成の問題で、本当に腐敗防止・民主主義に役立つかよくわからない。財界にとって献金をしなくてなおかつ財界のいうことを聞いてくれたら一番よい。大企業丸がかえで票をとりまとめれば影響力を行使できる。
C:問題は公費助成の額だろう。そのことで選挙資金に枠がはめられれば一歩前進だろう。
A:もう一つ問題なのは政党法との関係だ。これは結社の自由や政党活動の自由との関係が出てくる。単に公費助成が腐敗防止に役立つという議論に安易に乗ることは危険だと思う。
B:共産党は公費助成もいらないといっている。実際は労組・宗教団体の問題など難しい問題が多い。
K:政策秘書などと同じでこの問題はまとまるのではないか。
A:ゼネコン汚職に見られる政治腐敗の問題は、選挙制度の問題というより情報公開とか行政組織のありかたの問題だと思う。
K:あれは地方分権たたきの側面もあるのではないか。新聞報道でも大統領並みの権限などと言っている。

*やや、話が広がりすぎた感もある。それだけ、今回の選挙結果と今後の取るべき道について議論が必要だ、ということでしょうか。
8月5日の特別国会、そして組閣、臨時国会という流れの中で、政界再編は一層進む状況にある。こうした変化の中でこそ、政策と思想が問われる。議論の中でも、選挙結果の評価において、ニュアンスの違いもあるが、結局は、こちら側の主体的な行動こそ必要という結論は変わらない。引き続いて紙上討論を行いたいので、読者の皆さんの参加をお願いいたします。 (大阪府委員会発)

【出典】 青年の旗 No.189 1993年8月15日

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