【ロシアレポート PARTⅡ】土地改革をめぐる世論の動向
大木 のり(在ペテルスブルグ)
このデータは、ペテルブルグの「社会プロセス予測研究センター」とモスクワ、ケメロボ、サマラの研究センターが変化している生活条件に対する大都市住民の対応の様子を共同アンケートしたものである。アンケートはペテルブルグのセンターが作成したものであり、約1万人を対象に行われた。
“土地の個人への譲渡は経済危機からロシアを救うと思うか?”と言う質問に対してモスクワ市民の72%がYES、13%がNO。ペテルブルグ市民の75%がYES、11%がNO。サマラ市民の63%がYES、15%がNO。残りはこの問いに対してまだはっきりとした意見を持っていない人である。
この結果から分かるように重要な土地改革の支持者は反対者を上回っている。また、92年2月の時点ではペテルっ子は(この質問から)モスクワっ子より急進的である。そして最も保守的なのがモスクワからそれほど速くないサマラっ子である。これは最近、違う都市の人達が出会ったら必ず話題になる“どの町が最近悪くなった?”ということに対する間接的な回答と見ることも可能である。
一般に30歳までの若い人達が最も急進的である。例えばペテルブルグではこの質問に対して若い人の中での支持者と反対者の割合は15:1である。また年齢が上がるほど過激性が低くなり、“以前と同じように生活したい”と思う傾向がある。しかし最も保守的であると見なされている60歳以上の人の中でも土地改革の支持者と反対者の割合はモスクワでもペテルブルグでも3:1である。この年齢層の人達が以前どのように、またどのような体制下で生きてきたかを考慮すればこの数字は若者の15:1より重みを持っている。
モスクワ、ペテルブルグでは最も支持者の多い層は文科系インテリで、サモラでは技術系インテリ層である。また3都市とも反対者の最も多い層は未熟練労働者である。この層は自分達の現在の経済状態と近い将来の見通しを身にしみて感じているから反対者が多いと見ることができる。このアンケートによるとこの層は2月の時点ではその他の職業グループに比べて今までの食事のレベルを維持できていない(働いていない年金生活者の次に)。そして彼らは土地改革が成功したその効果の恩恵を受けるのもまた一番最後になるであろう。
また国営企業に勤めている人となんらかの形で自由を味わった“新しい経済体系”の企業に勤めている人とでは改革に対する態度はかなり違っている。
土地の個人への譲渡は経済危機からロシアを救うと思うか?
A/ モスクワ市 ペテルブルグ サマラ市
YES 72% 75% 63%
NO 13% 11% 15%
雇用層別に見れば教育、学術、文化関係者が最も改革に賛同している。つまり文科系のインテリと言うことになる。
土地改革を認めるか認めないかということは、イデオロギー的、政治的見解の表明であり、社会経済生活の法則性の理解度でもある。
土地改革に対する見方は、社会的オプティミストと社会的ペシミストでもはっきりと異なっている。
土地改革を承認するか、しないかは価格の自由化と私有化に対するしかるべき評価と一致している。一連の改革は全てセットで受け入れられるかいないかである。
最後に一つだけ確実に言えることは、都市の住民にとって土地改革は不可欠である。今後改革が停滞することがあれば、それは農民が改革を望まない時である。しかし実際農民に土地が不必要であるはずがない。
エリツィン政権は口先では“土地を農民に”をスローガンに掲げているが、実際に新ノメンクラツーラや旧保守層の抵抗を打破して、土地改革を実行することができるかどうか注目されるところである。
(92-3-3)
*サマラ市はボルガジ河中流域の都市で、ウリヤーノフスタ市の近くにある。
く表も送られてきましたが、紙面の都合で省略しています)
【出典】 青年の旗 No.173 1992年3月15日