【投稿】春季生活闘争中間報告

【投稿】春季生活闘争中間報告

連合の91春季生活闘争は、主要単産の闘争が妥結し、最大のヤマ場は終了した。賃上げに関しては、全般的に低調であったが、時短に関しては制度化で一定の前進があった。ここでは、闘争の中間的な報告と今後の労働運動の展望について考えてみたい。
先行相場グループである自動車総連、電機労連、鉄鋼労連、造船重機労連などのIMF-JCの主要組合に対して4月3日に回答が示された。経営側は湾岸戦争を理由に「景気に蔭りが生じた」として、「マイナスα」論を強く主張、賃上げでは一歩も譲らない姿勢を示した。
組合側はこれに押し切られる形で、電機5.55%、鉄鋼4.33%、造船重機5.32%との妥結となり造船重機が昨年と同額を確保したのを除き、いずれも額、率ともに下回る結果となった。
これに対して、昨年ストライキに突入し他単産を上回る実績を確保した全電通、私鉄総連など後発相場形成グループは、額で昨年実績を確保した。連合全体では、率で5.72%額で14687円となっており(加重平均4月9日)、率で0.3ポイント、額で170円昨年度実績を下回った。
これに続く中小、未解決組合は、一部がストライキに突入するなど奮闘しているが昨年度実績を越える成果は厳しい状況である。
一方時短闘争は、完全週休2日制を制度化している電機が、土曜が祝日と重なった場合の金曜振替休日制や年休1-2日増、鉄鋼も常日勤2日、交替勤務3日の休暇増を引き出すなど一定の成果を収めた。
こうした状況を踏まえ、連合の山岸会長は「逆風下の厳しい労使交渉」であったが、「われわれの目標に向け、限りなく前進しつつある。額で昨年実績をクリアーできれば成功との気持ちで対応してきた。もう一歩の踏み込み不足は否めないが、連合効果-相乗効果は表れた。トータルとして一定の前進がはかれた」時短については「JCグループの闘いは、昨年よりも2歩も3歩も前進した。1993年の1800時間に向け、有力な足掛りとなった」と評価した。
連合は今季闘争の獲得目標を賃上げは「昨年度実績と同等もしくはそれ以上」時短は「今年度2000時間の壁を破り、1993年度1800時間にむけた展望を切り開く」としていただけに、当初から困難視されていた賃上げはともかく、時短だけは何としても目に見える成果を上げようと、各単産とも時短にスタンスを移しての闘争を進めた。
確かに大手組合での時短は進んだものの、残業手当がなくても十分な賃金を確保し、さらに下請け、系列、傘下企業にしわ寄せが集中する「カンバン方式」や「ジャスト・イン・タイム方式」が改善されなければ、なかなか全体としての時短は進まない状況にある。この状況を打開していくためには、企業内時短だけではなく、社会的時短を進めていく必要がある。そのためには官公庁の時短や「太陽と緑の週間」はもちろん、学校の週休2日制、地域の特性に応じた実質的な休暇(祭り休暇など)を広く実施していかなくてはならない。こうした取り組みはもはや、労働組合だけの闘争の質、春季闘争の枠を越えるものであり、生活制度闘争の全面的推進を要求するものである。
総評時代の闘いは、経済闘争と政治闘争を巧妙に使い分けて前進した。しかし、連合時代において政治闘争の展望が未だ困難な状況のもと、労働組合に社会性を持たせ、運動を活性化するためには、この問題への取り組みが不可欠である。その意味で、「春闘」の質的な転換を大胆に進めなければならない。
経営側は、春闘に賛成する側も反対する側も、質的変化が分からずに的外れな評論をしている。一方残念なことは組合側にも旧来の「春闘の栄光」から抜け出せない人がいることである。
このような人々を後目にすでに連合は、環境問題、人権問題の取り組みをはじめ社会的イベントへの参加を進めている。今後これらの運動を一層幅広く展開することが望まれているのである。(大阪 O)

【出典】 青年の旗 No.163 1991年5月15日

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