【投稿】統一自治体選挙の結果と地方自治の展望

【投稿】統一自治体選挙の結果と地方自治の展望

統一地方選挙は自民党の大勝、社会党の惨敗で前半戦を終えた。
この中で最も注目されたのは、東京都知事選挙であるが、ここでは東京の前に霞んでしまったかの感のある大阪府知事選挙、府会議員選挙の経過を報告していきたい。
まず、知事選挙であるが、三期続いた岸府政の後継者選びから難航した。一般的には副知事の中から選ばれるとの観測が主流だったが、必ずしも納得して引退を決意したわけではなかった岸前知事が「後継者は庁外から」との意向を表明したことから混乱が始まった。自社公民与党体制を前提としつつも「岸知事(実際は中央)の意向を受けた」自、公と従前から副知事の一人であった中川和雄氏を押す社、民、連合との激しい前哨戦が繰り広げられた。
結果的に、連合大阪が調停役を引き受ける形で、後継者は中川氏に落ち着き、共産候補との対決となった。
このことは、共産党の言う「自社公民なれ合い」がデマであることを物語っているし、与党間の緊張関係は、共産党が考えるほどあまちょろいものではないことである。
ただ、選挙戦自体は、50%を切った投票率が示すように盛り上がりに欠けたものとなったが、これは競争選挙といっても実質は信任投票と同じであったからである。
しかし、この選挙を連合対全労連の対決という視点から見れば、しれつな闘いが展開されたのである。連合は中川氏擁立に大きな役割を果たしたこともあって、選挙戦では全戦線で前面にたって運動を牽引した。
各種集会、イベントの動員は勿論のこと、政策宣伝においても連合の掲げる女性・高齢者対策を中川氏の公約のトップに据えるなど、まさに連合総ぐるみの選挙となった。この意味で、共産党が執拗に宣伝した「財界丸がかえ」との主張も説得力を持たないものであった。だいたい共産党の描く財界対府民との図式は、総労働対総資本という教条を焼き直したものに過ぎず、黒田府政の総括もまともに出来ない共産党の府政批判は多くの府民に受け入れられなかったのである。
同時に投票された府会議員選挙で社会党は、全国的な惨敗のなかでも大阪では1議席を増やし、「平時」の社会党の党勢がどのくらいのものであるかをあらためて明かとなった。
この中で特筆すべきは従来の労働組合出身でない若々しい候補者が立候補し、善戦したことは大阪の社会党と民主勢力に大きな力となったことである。
この選挙で明らかになったのは、全国的な自民党大勝の中でも、重大な選挙で地方色を鮮明にしたものが勝利をし、その前にもはや「革新」対「保守」、更には政党間対決と言う構図は埋没してしまったということである。
逆に言えば、社会党候補者でなくとも、大衆運動があれば福祉制度の充実などは推進できると言うことであり、労働組合を含めた有権者の選択は、シビアになっているということだ。
もちろん将来の選挙で、社会党はある程度議席を回復するだろう。しかし、それはただそれだけのことであり、有権者が選ぶ対象が現在では権力構造の変換まで結び付かず、同じことの繰り返しとなるだろう。
こうした流れを変えていくために、新しい政治勢力の結成を真剣に進めなければならない時期に来ているのである。
その意味で、現在進められている社民勢力の結集構想に注目していかねばならない。(大阪 O)

【出典】 青年の旗 No.163 1991年5月15日

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