青年の旗 1985年10月1日 第104号
PDF版は、こちらへ
【主張】 ソ米軍縮交渉成功目指し国連軍縮週間を闘おう!
<一%枠のなし崩し的突破反対>
八月二十七日、国防会議は防衛庁が提出した来年度軍事予算概算三兆三五六七億円(七%増)を了承した。また、同日の閣僚会議は、五九中業(防衛庁内部の昭和六十一年~六十五年度の五年間の主要装備調達計画)を政府計画に格上げし、「GNP比一%枠」にかわり、五年間にかかる閣議で決めておくという「総額明示方式」による新しい歯止めとする考えで一致した。
これを受けて、九月十八日、政府は六十一年~六十五年度を対象とする新しい防衛力整備計画(中期防衛力整備計画)を正式決定した。計画によると六十年度ベースで総額十八兆四千億円で、この額は向こう五年間のGNP見通しの一・〇三八%に当たり、一方で政府が撤廃を見送ったGNP一%枠の閣議決定と矛盾し、一%枠はなし崩し的に突破されることになったのである。また、大蔵省の試算によると、計画実現のためには毎年度の予算を七・九%増(名目ベース)で組まなければならない計算となり、ここ数年以上の防衛費の突出を認めることになるとともに計画期間外の六十六年以降に支払いを回す後年度負担は、正面装備費だけでも二兆五千五百億円にも及ぶと見積もられている。新しい歯止めといわれる「総額明示方式」も五九中業が正面、後方支援装備費などはあくまで六十年度価格ベースであり、三年で見直しをすると言明されていることからしても、到底歯止めとなる代物でないことは明らかである。
<とげられる「自衛隊」の質的飛躍>
五六中業完成時には、すでに第六位の軍隊であった自衛隊は、五九中業によってF15、P3Cの保有数はアメリカに次いで世界第二位となり、新計画完成時ニハ十九年)には、五十一年に決定された「新防衛計画大綱」水準を達成するといわれている。このことは、日本の「防衛力」がアメリカの世界戦略を分担できる軍事力となり、米軍の補完部隊として質的飛躍をとげることを意味している。
五九中業の内容は、五六中業当時の鈴木首相が「洋上防空は考えていない」としたのに対し、中曽根が五九中業に洋上防空を検討項目として加えることを約束し、今年八月に開かれた日米防衛首脳協議での「洋上防空構想」を受けて、海上交通路防衛の一環として、シーレーンの安全確保や洋上・水際撃破能力の向上、継戦能力強化などを重点項目とした「洋上防空」能力の向上を図るのに主眼がおかれている。
具体的には、①超長距離監視レーダー(OTHレーダ一、四千キロ先まで、相手基地奥深く探知)②早期警戒機E2C迎撃戦闘機③監対空ミサイルシステム艦(AEG-S、エイジス同時多目標対空処理システムの導入とともに④空中給油機の保有が検討項目としてあがり、以上、洋上防空体制の抜本的強化のために、⑤地対艦誘弾(SSMl)部隊の新編成⑥新地対空誘導弾パトリオットの整備⑦P3C対潜哨戒機百機体制の実現等が計画されている。
<内外に強まる批判の声>
被爆・敗戦四十周年の、その節目の年に、GNP一%枠という歯止めをはずし、軍事力増強への道に大きく踏み込んだ中曽根内閣に内外から大きな批判が起こっている。毎日新聞社が九月六日から三日間にわたって行った全国世論調査によると、内閣支持率は中曽根内閣成立以来の最高値だった前回網要今年四月実施)の四六%からいっきょに十一ポイントもさがり三五%となった。政策面では、安保・防衛政策がよいとの評価が低下、逆に同政策が悪いという評価が増加し、国民の六五%が「一%枠を守る」考えを示し、政府・自民党で検討された「一%枠」に代わる新基準の設定への支持率は一五%にとどまっている。また、政党支持率でも自民党は四八%から四三%に落ちているのである。右の数字は、少なくとも国民が中曽根内閣の軍事力増強政策に対して懸念を持ち、先行に不安を感じているということを如実に示している。
<10・27行動の成功を>
こうした中曽根内閣の一%枠突破に象徴される軍事力増強政策に対して強まる内外の批判を背景に十四日に召集が予定されている臨時国会を前にして、社会党を中心とした野党は「一%枠問題」で結束を同め、臨時国会で中曽根退陣を迫っていく意気込みをみせている。また、総評は、反戦・反核・平和・軍縮の国民世論を大きく盛り上げるとともに、教育臨調や国鉄問題ともからめて、「反核・平和・軍縮の政府樹立」「中曽根首相の退陣」を共通のスローガンとして、各界・各層の人々が主体的、積極的に参加し、連携を深める場として中央二〇万人集合をはじめとした一〇・二七全国一〇〇万人行動を提起している。すでに、東京では九日二十四日、九三団体が参加し、実行委員会結成会議を開催し、実行委員会を発足させている。
国際的にも十一日の米ソ首脳会談を前にして、ソ連のシユワルナゼ外相とレーガン大統領の会談の実現、そして十日二日からはゴルバチョフ書記長の訪仏が予定されるなどソ連の平和攻勢が続いており、こうした過程で核兵器の四〇~五〇%の削減案をはじめとした新軍縮案が公表される可能性もあり、米ソの軍縮交渉の前進に世界中の難い視線が向けられている。
<中曽根首相の退陣を>
こうした情勢を受けて、今秋期平和闘争の任務は、一〇・二七行動のたたかいの目標にも示されているように、防衛費の増加と「GNP比一%枠」の撤廃反対を最重要課題としながら、法曹界やマスコミ関係の人々との連携を中心とした国民総スパイ法の制定阻止の闘い、横須賀・佐世保へのアメリカ核積載艦の相次ぐ入港やF16の三沢配備などに反対し、非核三原則厳守を求める闘い、被爆者援護法を求める闘い等を結集させ中曾根内閣の軍拡路線に歯止めをかけ、米ソ首脳会談を前にして、交渉の前進を妨害しているレーガン政権の協力的な支持者となっている中曾根の政治姿勢を許さない闘いをもって核軍縮の闘いへ合流していくことである。一〇・二七行動を頂点に、各地域・職域から多様な取組みを開始し、国連軍縮週間の成功から、中曽根の退陣を迫り、反核・平和・革縮の政府実現に向けて前進しよう。