青年の旗 1977年6月15日 改題4号
【主張】 セクト主義を拒否し、原水禁・協の広範な統一を
五月十九日、分裂以来十四年ぶりに森滝原水禁代表委員と草野原水協理事長の会談がもたれ、八月に統一世界大会を実現する等の五項目合意が確認された。二五日には、原水禁が緊急全国委員会を開き、原水禁・原水協が同一のテーブルについたこと、合意が原水禁統一テーゼの路線に基づいていることで手続き上の批判を抑えて、合意支持を明らかにした。
こうして国民の念願であった統一への列車はいよいよ動き始めた。
<日共のセクト主義の破産>
今回の合意成立の過程でもっとも注目すべき成果は日共(代々木)のセクト主義が統一を望む世論の前に封じ込めらたことである。分裂以来彼らは、原水禁を分裂団体としてその存在すら認めない態度を取りつづけた。原水禁の「共同行動を」という統一提案に、「組織統一」を対置して拒んで来たのも、原水禁を解体吸収したいという、セクト的目算からのことであった。NGOシンポジウムについても、原水協関係者で中央事務局を占めておいて団体加盟は認めず、個人加盟方式をとったのも、その理由であった。
それが今回は、原水禁代表としての森滝氏との会談を認めざるを得なかったのである。これは明らかに日共(代々木)のセクト主義の敗北であり、統一を望む各界の世論の勝利である。
統一への気運は、近年になく盛り上がっていた。NGO主催の「被爆国際シンポジウム」が日本で開かれ、七八年には国連軍縮特別総会がある。国内では保革伯仲下で、被爆者援護法制定がいよいよ現実的日程に上りつつある。今ほど日本原水禁運動の姿勢が広く国際的にも国内的にも問われていることはない。誰の目にも統一の必要がうつっていたし、又今回を逃がせば再び遠のくことも知れる。
だから、十四年前分裂の結果離れていった「日青協」(一五〇万)「地婦連」(六五〇方)が統一要請の声明を発表し、運動へ復帰する方向を打ち出し、中野好夫・吉野源三郎ら五知識人のアピールに、千百七十六名の文化人が支持したのである。この盛り上がる統一の気運が、何よりも大きな力であった。
<五・一九合意を歪曲する日共>
しかし、統一への道は平担ではない。日共(代々木)は、再びセクト主義で統一への作業を遅らせ、破壊しょうとしている。彼らは、合意書を勝手に解釈して、その統一指針を歪めようとしている。彼らは、合意事項の中で、「年内をめどに、国民的大統一の組織を実現する」点にのみ力点を置き、この新組織が『禁』『協』のわくをこえた(実は組織を解体して)広範な階層を結集する新しい組織」(六月八日『赤旗』)だと強調している。もちろん組織が統一されれば、両組織の解散は当然だが、問題はそんな事明のことにあるのではなく、統一する過程でのイニシアティブがどこに存するかにある。それは合意書に「禁・協が随時協議する」とあるように、明らかに禁と協に存するのである。彼らは、「『禁』・『協』がまず協議をかさね、そのうえで統一実行委員会をつくるなどということといわれているむきもありますが、これも合意書の立場と違います。」と厚顔無礼にも公然と言ってのけている。つまり破らは、禁・協の協議の代わりに、世話人を対置し、そこを通して日共(代々木)ペースの統一を実現しようとしているのである。
そのため、二八日から予定されていた 禁・協双方五名づつの実務者による会議も難行しているし、地方レベルでも、原水禁の話し合い申し入れに応じようとしていない。所によっては「分裂団体」として特定団体の排除さえ広言している。
このように、一切の禁・協の話し合いを拒み、自分の主張だけを押し通そうとするセクト主義こそ、統一への最大の障害であり、平和を望む者の敵である。今こそ、日共(代々木)のセクト主義への批判と、統一作業の監視を強めなければならない。
<全国各地で統一への攻勢を>
このような情勢の中で、今求められていることは再び胎頭し始めた日共(代々木)のセクト主義をいかにして封じ込め、統一の気運を生かし盛り上げて統一大会を成功させるか、そして、その統一される原水禁運動をいかなる方向に進めて行くかにある。
ただ、原水禁内部には、手続き論議による森滝氏批判や、理念だけの原則対置や、日共(代々木)のセクト主義・「反党分子」の排斥で必ずつぶされると考える敗北主義によって、若干統一に対する消極論・不信論が見られるようである。
しかし、それではセクト主義で統一を拒んできた原水協・日共(代々木)に統一の旗を渡しかねないし、実りある統一は進められない。セクト主義を増長させるだけだ。むしろ我々が統一を望む強い大衆の要求を力とする限り、今回の会談のようにセクト主義も後退せぎるを得ない。今こそ統一の気運を最大限生かして、統一への攻勢をかける時である。
それでは、統一への攻勢の鍵は何か。その第一はNGOシンポジウム成功をめざし、被爆者の実態を訴える大キャンペーン運動を起こし併せて被爆者援護法制定要求の国民運動を展開することである。全国津々浦々で、原水協はじめあらゆる団体・個人に統一を訴え、統一のための大衆的基盤を作ることである。そうすることによって始めて、地方組織の統一準備も円滑に進められるであろう。第二は、その運動を背景に、八月統一世界大会の実行委員会が、これまで原水禁運動に携わってきた諸団体・個人はもちろん、統一を望むすべての人々開放されるよう地方から、要求していくことである。
<今こそ国際平和運動へ復帰を>
最後に日本原水禁運動を、世評などの国際平和運動のもとに復帰させることである。その契機は、「五項目合意」に確認されている国連軍縮総会への統一代表団派遣にある。総会は、四億人署名を達成した新ストックホルム・アピール運動をはじめ一連の軍縮への世界的闘いの前進を背景にしている。従って統一代表団は、日本の被爆実相を明らかにして核軍縮を訴えると共に、それら運動が提起してきた諸課題への積極的支持を与え、国際平和運動と合流するものでなければならない。国内から国際的統一へ!