青年の旗 1977年12月15日 第10号
【主張】 七八春闘の基本課題
七八春闘は準備体制に入っている。総評・中立労連一部純中立組合は、七八国民春闘共闘会議を発足させた。また、12月5日には同盟・JCも七八春闘の賃上げ要求の討議を開始した。
国内市場の拡大政策の転換にとって、賃金引上げは決定的な位置を占める。政府独占資本も口先では経済政策の転換を言っているが、その転換の内容は依然として独占くれてやり政策-ビッグプロジェクトに対する公共投資の拡大である。政府と財界は、賃金抑制・国民収奪の強化によってこの危機をのり切ろうとしている。ここに、反独占闘争の政策的対決点が存在する。
この意味で、七八春闘は総資本対総労働の深刻な闘いとなる。ここで重要なことは、総評・社会党・共産党が反インフレの名の下に、総需要抑制政策に実質的に支持を与えてきたことを深刻に反省することである。
春闘三連敗による打撃と雇用不安の深化する下で労働者階級の統一を強化し反撃に転ずるのは容易でない。
<実質賃金改善の要求決定を>
これは、賃金要求の決定段階においてまず重大な意見の分岐が生じていることのなかにはっきりと読みとることができる。
総評の富塚事務局長は、先の共闘会議の第一回総会において次のようにのべてこの問題の深刻さを示唆している。「マクロ的には賃上げは個人消費拡大につながるが、ミクロ的には雇用拡大のために自粛すべきだという提起がある。だから雇用を守りながら賃上げを実現するにはどうすべきか慎重に検討してほしい。」これは明らかに、賃金自粛論に一定の肯定的評価を与えたものである。こうした情勢のもとで、12月12日の第二回総会において果たして賃金要求が決定できるかどうかも危ぶまれている。
また、造船重機は11月18日に代表者会議を開き、賃金要求に関する予備討議を行ったが、本部側の定昇別10%という原案に対し、日立・川重などを中心に高すぎるという批判が出されている。
七七春闘において総評は社会的妥当性の確保、同盟、JCとの統一要求をつくり出すことを理由に、定昇プラス消費者物価上昇率という方向への転換を行った。
これは、統一闘争を強化するという面において一定の積極面を持ちつつも、政府の詐術的統計に依拠し、実質賃金を正しくとらえていないという面で、賃金自粛論・社会契約説への妥協をも意味していた。現在の要求づくりの段階で、まずこの点を整理し、実質賃金とはなにかを明らかにしておかなければならない。
<CPIの公正な算出を>
実質賃金はあくまでも、消費者物価指数を公正な機関によって把握し、それにもとづいて算定されなければならない。すでに常識化しているように、政府統計はその品目構成とウェイト付けが実体と遊離していること、調査日における作為的な安売り等によって、三~五ポイント低く算定されている。こうして見ると、七八春闘における賃金要求は、実質賃金を維持するために最低、定昇込み15%は必要となる。この意味で、私鉄総連の16%は注目すべきである。
フランスにおけるバールプランとの闘争、イタリアにおける物価スライド制擁護の闘争に見られるように今日の経済恐慌のもとで、各国の労働者階級は実質賃金の防衛に全力を上げている。ひるがえって、わが国においては実質賃金が低下している。これを打破することが七八春闘の第一義的課題である。
<産別最賃闘争と春闘の結合を>
七八春闘における「賃上げ要求の考え方」の一つとして、共闘会議は最低引上げ額の設定とともに、産別最賃・地域最賃の協定化と改定、さらには、年令別最低保障・標準労働者賃金などのポイント貨金設定を特に強調している。
これは七七春闘準備段階から問題とされていた産別最低賃金・横断賃金をめざす闘いの前進にとって重要な意義をもっている。大阪等を中心に展開された地域包括最貨をめぐる闘い、また地域最貨と全国的な基準(目安)をいかに結合するかの論議の高まりのなかで最賃問題への関心がようやく深まってきたことのあらわれでもある。
<真の産別自決体制を>
七七春闘において「産別自決」をめざしながら、結果として大産業別共闘を破壊し、春闘方式そのものの否定を招いた根本的な原因が、産別闘争の発展にとって不可欠の、賃金政策の産業別の統一が不在であったことを考えると、共闘会議のこの方針は、それが運動の実体にかみあった現実的な政策に具体化されるならば、大きな前進になるであろう。
現在、四団体共闘の維持が危ぶまれている。制度要求に限定された四団体の一種の政治共闘はその統一の基礎を欠いていることをはからずも露呈したものである。
七八春闘における闘う統一をかちとるためには、こうした政治共闘から経済闘争における統一へといまいちど原点を見返すことが決定的な意味をもつ。そのためには、共闘会議の提起した産業別最低賃金標準労働者のポイント賃金などを中心にナショナルセンターの枠を越えた広範な大衆討議を巻き起すことが急務である。