<<大差で敗北の典型>>
3月21日投開票の千葉県知事選挙で、熊谷俊人・前千葉市長が約140万票を獲得し、千葉県知事選史上最多得票で、2位の自民党推薦候補に100万票以上の差をつけて圧勝した。
1.熊谷俊人 43無所属 新 1,409,496票 70.47%
2.関政幸 41 無所属 新 384,723票 19.24% 自由民主党推薦
3.金光理恵 57 無所属 新 122,931票 6.15% 日本共産党推薦
菅政権にとっては、ダブルスコア、トリプルスコアどころか、ほぼ4倍近い大差での予想もできなかった手痛い敗北である。自民党のふがいなさ、菅氏自身の神通力のなさに驚いたことであろう。自民、公明を与党とする菅政権のコロナ・パンデミック対策・オリンピック強行政策に象徴される、度し難い無策・後手後手政策、「自助」を最優先する無能力政権、忖度・癒着・腐敗政権への手厳しい審判であった、と言えよう。つまりは、菅氏自身が招き寄せた敗北であった。
菅政権にとっては、支持率が3割台(34%=朝日新聞・2月調査)に落ち込み、3月に入ってやや持ち直したかに見え、4月訪米・衆議院解散・総選挙まで視野に入れていたはずが、「早期解散論なんて吹き飛ぶ衝撃度」(参院・自民党幹部)で決定的ともいえるダメージをこうむってしまったのである。
当選した熊谷氏は、「オール千葉県の総力を結集して、コロナ対策に取り組む」、「現場主義、対話主義、開かれた県政」の県民党を掲げ、政党本部レベルでの推薦は辞退する一方、県組織や団体の支援は受ける意向を示し、立憲民主党県議団、千葉維新の会とそれぞれ政策協定を締結、立憲民主党、国民民主党、社民党、日本維新の会の各県組織に加え、自民、公明両党の一部国会議員の支持も受けていた。一方、関氏の与党陣営の足並みは乱れ、公明党は自主投票であった。
3/21・NHKの出口調査の結果は、
「無所属で新人の熊谷さんは、
▼自民党の支持層の60%あまり、
▼立憲民主党の支持層の80%あまり、
▼公明党の支持層の70%台半ば、
▼共産党の支持層の40%あまり、
▼特に支持する政党がない、いわゆる無党派層の80%あまりから支持を得ました。」と報じている。
ここに至る千葉県独自の要因があるとはいえ、与党陣営が大差で敗北する姿の典型がここに示されている。与党陣営は雪崩を打って崩れているのである。
野党共闘や統一戦線は、単に通り一遍の政策や合意ではなく、与党陣営の矛盾や問題点、分岐を拡大させ、足並みを乱れさせ、無党派層の圧倒的多数を獲得する政策と戦略・戦術が決定的に必要不可欠なことを示している。
<<自己正当化のみの共産党>>
ここで情けないのは、こうした野党共闘・統一戦線で重要な役割を果たさなければならなかったはずの共産党の態度である。共産党の独自候補が敗北してしまったものは、いまさら取り返しようがないが、問題は、そこに至る経過と敗北の弁である。
投票日前日の3/20付しんぶん赤旗は、「知事選あす投票」と題して、「憲法がいきる明るい千葉県をつくる会」の、かなみつ理恵候補が「猛追する」と書き、3/19、応援に駆け付けた共産党書記局長の小池氏は、かなみつ氏について、行動力抜群の候補、原発ゼロを掲げる唯一の候補と、その魅力を紹介。あとの有力2候補は自民前県議と、自民・公明などの国会議員や維新が応援する前千葉市長であることを示し、「自民党県政推進派と、かなみつ氏の対決だ」と強調しました、と書いている。
ここでの共産党の選挙に臨む認識は、第一に自民党候補、第二に熊谷候補、そして第一の自民党候補と対決し、「猛追する」かなみつ候補、という図式である。ところが結果は、第二の熊谷氏が圧勝し、第一の自民候補が大差で敗退、「猛追」していたはずの共産党独自候補は、「猛追」どころか、以下の通り、前回、前々回よりも、得票数、得票率ともに連続して大きく後退してしまっているのである。
前回・2017/3/26
森田健作 67 無所属 現 1,094,291票 68.14% 支援:自民党、公明党
松崎秀樹 67 無所属 新 347,194票 21.62%
角谷信一 62 無所属 新 132,532票 8.25% 支援:共産党、自由党
前々回・2013/3/17
森田健作 63 無所属 現 1,230,137票 78.5% 支援:自民党、公明党、みんなの党、日本維新の会
三輪定宣 75 無所属 新 288,762票 18.4% 推薦:日本共産党
問題は、こうした厳しい結果について、しんぶん赤旗は一切報じていないことである。誤った認識、都合の悪いことには一切触れないという態度である。「猛追」などではなかったことをまずもって反省すべきであろう。
ところが、3/21付けで、日本共産党千葉県常任委員会が「千葉知事選の結果について」という文書を発表し、配布もしている。そこには、かなみつ理恵候補に寄せられた熱い期待に応え、選挙で掲げた公約実現に全力をあげます、と題し、「今回の千葉県知事選挙は、自民党の前県議と、自民・公明・維新などの支援を受けた前千葉市長という、自民党系の2候補にたいして、県民が主人公をつらぬく『明るい会』のかなみつ理恵候補(日本共産党推薦)が対決する構図で行われました。残念ながら当選には至りませんでした。また、同日投票でたたかわれた千葉市長選では『あたらしい千葉・みんなの会』の大野たかし候補(日本共産党推薦)が、千葉市議補欠選挙では日本共産党・江田ちよ候補が、健闘しましたが当選には至りませんでした。」と述べている。また、「明るい会」自身も、かなみつ候補は、健闘しましたが当選に至りませんでした、と述べている。
「健闘」どころか、「共産党の支持層の40%あまり」もが熊谷候補に流れた事実、得票数も得票率も「後退」した事実には一切触れない、発表もしない。また、熊谷候補が、共産党として野党共闘の最大の対象である立憲民主党や社民党の支援を受けていたことにも一切触れない、意図的にパスしている。ことの良し悪し以前に、自己正当化のみに汲々とし、現実を見ようとしない、評価もできない、事実関係そのものを隠す陰湿さである。こんな党に本当の信頼が寄せられるであろうか。共産党指導部は根底的に出直さない限り、野党共闘や統一戦線の前進など望みえないであろう。
(生駒 敬)