青年の旗 1984年3月1日 第85号
【主張】 84春闘と労働運動再建の任務
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二月二〇日私鉄総連は、民鉄協に、同時に加盟各単産はそれぞれの企業へと、一万八千五百円(八・九%)の要求を提出し、今年も私鉄大手に於る集団交渉を含む闘いのスタートを切った。すでにJCの低額決着の前に決戦をいどむとしてすすめられてきた総評主力単産の要求提出の中でマスコミは「84春闘本格スタート」を述べている。
今年も、下部大衆討議を経ずして、独占利潤の確保・拡大を前提とした「経済整合性」論の枠組の内で各ナショナルセンター・単産の幹部レベル要求が設定され、6%を前後する低水準で横並びし、下部に押しつけられている。一方では、総評が「攻めの春闘」、同盟が「ストライキ体制を背景に」と語り、また官民統一の闘いが一早く示されるなど、労働者生活の悪化、政府独占資本の攻勢の前で労働側の闘う決意が述べられている。あらためて労働運動再建を展望しての今春闘の任務を明らかにしなくてはならない。
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第一に賃金要求について。独占の労務対策部日経連は、「低成長下ではペアは不要、定昇のみ」と語り、ベースアップはもちろん定昇すら切りくずしていこうとする独占の思惑を端的に述べている。これは、一層査定の強化等を通じての分断支配と、「年功序列賃金体系」下の「高齢化」進行の中での「コスト増」を見こしての事だ。
資本の側の賃金=労務コスト、というコスト論の土俵に乗った運動が、今本格的に転換されなくてはならない。今春闘の論議の中でも、独占の「定昇のみ=ペアゼロ」攻撃の中で「定昇分は賃上げではない」と反論する中で結果として年功序列賃金を容認し、コスト論の土俵にひきすり込まれた論議が横行している。それがたとえ、当面する実質賃金切り下げ攻撃に対決するものであっても、ベースアップ闘争(総労働の平均賃金の一律アップ闘争=それは容易にコスト論におちいる)に埋没した春闘を克服していくものではない。
具体的な労働の質と量にもとづく、横断的賃率・賃金の社会的規制に向けた闘いを一歩でも二歩でも前進させる事である。資本の側からの本格的攻撃にさらされている産別最賃・地域包括最賃の引きあげ、人勧バネをとりもどす闘いを全労働者的に展開するなど、賃金の最低規制の闘い、当面する個別賃金要求を「要求・闘い・妥結」に至るまで、下部労働者の実体的要求として闘いとる作業、等が引き続き強化されなくてはならない。その中でこそ「経済整合性論」に象徴される賃金思想後退克服が可能であろう。しかも労働条件の横断的・社会的規制が、労働者階級を企業意識の克服から産別に統一し、企業内組合から産別組合に脱皮する物的基礎を形成する、という事を忘れてはならない。全民労協内での左翼活動家の任務はこの点においてこそ強化されなくてはならない。
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第二に、制度政策闘争について。実質可処分所得の伸びなやみと、行革がらみの社会保障の切りすての進行の中で、84春闘に於いても制度政策の闘いに於ける労働者階級の期待は大きい。しかし、この闘いが、賃金闘争の困難性からの逃げであったり、弱干のカンパニア集会でお茶をにごしたりでは前進は計れない。むしろ本格的に独占利潤掘りくずしめざして、賃金闘争との結合の中で統一的に闘われなくてはならない。臨調行革路線強行の中で、政府独占資本は、行財政の中で独占の利潤拡大につながるものはつかみとり、社会保障切りすて等勤労人民に徹底して犠牲を負わそうとしている事を下部労働運動の中で浸透させ、84春闘をかわきりに、統一した反撃の態勢を構築しなくてはならない。①一兆四千億減税、見返り増税阻止②健保改悪の撤回③人勧・仲裁完全実施の事前確約をかかげ、野党四党、労働五団体、統一予算修正要求が二月二七日に出され、また四月一目には同様のスローガンで「国民のくらしを守る84総決起集会」が労働四団体・全民労協によって10万人規模で予定されている。この間いを下部労働者の一致した要求として闘いとり、共同行動前進、四月上旬官民統一闘争へと前進しなくてはならない。一致した要求でストも含む大衆闘争を堀りおこしていく事こそが運動活性化につながる。
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また、運動前進の前提として幹部請負闘争と、その表裏一体にある反幹部闘争の克服である。経営・地域の労働現場の中に、運動の核となる活動家を配置・育成しながら、自ら大衆運動の先頭になって、下部大衆の決起を組織する事である。運動の傍観者に大衆を放置する事は、いかに左翼的言辞で幹部の弱点、誤りをつきあけても、幹部請負の誤りを拡大する。84春闘は政府独占の本格的労働者生活破壊・春闘破壊攻撃にさらされているが、一方で反撃の好機である。青年労働者は闘いの先頭にたとう!