【投稿】自然を無視した原発に場所はない―志賀原発の地震被害の公開

【投稿】自然を無視した原発に場所はない―志賀原発の地震被害の公開

                             福井 杉本達也

1 地震後2か月以上も経過して、ようやく志賀原発を公開

北陸電力は能登半島地震から2か月以上も経過した3月7日、志賀原発の敷地内を、初めてマスコミに公開した。東京新聞は「激しい揺れで変圧器の配管が壊れて油漏れを起こし、外部電源の一部から電気を受けられない状況が続いている。完全復旧の見通しは立っていない。」と報道した(東京:2024.3.7)。「公開までに地震発生から2カ月以上かかったことについて、中田睦洋・原子力部長は『余震リスクがあり、町内のインフラ復旧が滞っていたため、安全面に配慮した』」と屁理屈を述べたが(同上)、「能登半島地震直後の情報発信を巡っては、一度発表した情報を訂正するケースが何度かあった。7日の公開後に報道陣の質問に答えた中田部長は『会社を挙げて問題点を洗い出している』」と答えたが(日経北陸版:2024.3.8)、当然ながら、「問題点」が多すぎて、とてもマスコミには公開できない「現場」を抱えているからである。新聞の行間からは、地震後何カ月も放置しておくこともできず、きわめて苦しいマスコミ対応をせざるを得なかったことが読み取れる。

2 外部電源の喪失

同上の3月8日付けの日経新聞は「主変圧器は外部電源の受電のほか、発電した電力を外部に送るために必要な装置。主変圧器が使えなくなっていることから、3系統ある外部電源のうち1系統の受電ができない状態にある。」と書いている。また、福井新聞は北陸電力の話として、「復旧の見通しは立っていない。…『最大の課題。何か手はないか一生懸命検討している』と述べた。」と書いている(福井:2024.3.8)。現状はお手上げの状態であることを暴露した。万が一、志賀原発が稼働状態で外部電源が喪失していたならば、たとえ制御棒が挿入されていようが、原子炉の冷却ができず、福島第一原発のように核燃料の崩壊熱で爆発していたことは明らかであり、能登半島のみならず、日本壊滅の恐れがあった。そもそも、震度7で制御棒がまともに挿入されるかどうかも疑問である。それは圧力容器内の広島型原爆1000発分の放射能が大気中にばらまかれるということであり、世界の終わりである。

 

3 変圧器に焦げ

同じく、日経新聞は「2月29日に実施した内部点検では、変圧器内部にカーボンが付着していることが発覚した。変圧器の内部は絶縁状態を維持する必要があるが、カーボンの影響で本来の機能が損なわれている。現在、修復の方法を検討しているという。」との記述がある。カーボンが付着しているということは、変圧器のどこかで発火した可能性が高い。

地震直後の1月2日、鳩山由紀夫氏はX(旧Twitter)に「気になるのは志賀原発で、爆発音がして変圧器の配管が破損して3500ℓの油が漏れて火災が起きた。それでも大きな異常なしと言えるのか。被害を過小に言うのは原発を再稼働させたいからだろう。」とツイートした。これに対し、「志賀原発で火災が起きていたというのは誤報です」、「大規模災害直後には様々な誤報が出やすくなります。第一報だけでなく、継続的な事実確認が必要です。」「何故、素直に誤報を拡散した事を認められない・謝れないのですか?」と、原発推進派がすさまじい攻撃をかけた。国民民主党の玉木雄一郎代表もすかさず反応。「最初に変圧器から油が大量に漏れたのでそれを『焦げ臭い』と作業員が認識し、…その後、北陸電力が詳しく調べたら、油漏れだけで発火の事実はなかったことが確認」されたと攻撃した(東スポ:2024.1.5)。その後も、鳩山氏への攻撃は続き、小倉健一氏は、「鳩山元首相を含め、原発については『事実をよく確認せず、適当に不安をあおったままほったらかす』ということが許されてしまっているようだ。鳩山元首相に至っては、北陸電力の訂正後に『火災が起きた』とX(旧Twitter)に投稿。長男である国民民主党の鳩山紀一郎氏から撤回を求められるも『

火災がないに越したことはないが、作業員が何を火災と間違えたのか。では火もないのに消火済みとは?怪しさは消えず』という投稿を重ねたことで批判が集まっている。」と書く(『ダイヤモンド・オンライン』:2024.1.129)。原発推進側にとって、変圧器の火災はよほどぐわいが悪いのであろう。今回の変圧器のカーボンは「火災」の一部を明らかにするものである。

4 原発地盤面の変動は?

同上の東京新聞は「1号機原子炉建屋脇の地面に数センチの段差が生じていた。」と書いているが、建屋が変形したかどうかは明らかではない。能登半島では、今回の地震で能登半島北西部で最大4mの地盤面の隆起が起こっており、志賀原発では地盤面の変動はなかったのか、あるいは大きな変形が起こっているのか、マスコミへの公開では明らかになっていない。今回の地震では変動がなかったとしても、そのような変動のある地域に原発があること自体大問題である。原発は一瞬にして破壊される。核がひとたび暴走をはじめれば人間によるコントロールを回復することはできない。日本には原発を立地できるような安定した地盤はどこにもない。自然への畏怖の念を回復し、早急に全ての原発を廃炉にすべきである。

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