【投稿】再生エネルギー賦課金は官製詐欺商法
福井 杉本達也
1 再生エネルギーが環境破壊?
政治資金改正法が通過した通常国家閉会直前の6月21日、唐突にも6月に廃止したばかりの電気・ガス料金への補助金を8・9・10月と3か月間復活するという“猫の目”の政策変更が行われた。原油・ガス高、円安も加わり税金モドキの電気・ガス料金は空前の価格となる。鈍感岸田もさすがにこれでは政権は持たないと感じたのであろう。もう一つ、電気料金が高騰している要因に「再生エネルギー賦課金」がある。最近では電気料金の1割近くを占めるようになっている。
当方が代表を務めるNPO法人の総会で、会員から質問を受けた。会員は遺跡発掘の作業をてつだっていたのだが、作業場所は山頂付近の風力発電所の建設予定地である。周囲の森林を広範囲に伐採して施設を建設するが、たまたま遺跡があるとされる場所であったため発掘調査がなされている。会員の質問は、再生エネルギーは環境を守るという触れ込みで、各地で建設されているが、大規模な施設はむしろ環境を破壊しているのではないかという素朴な疑問である。
2 再生エネルギー賦課金とは
「再エネルギー賦課金」は2012年に制定された「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」により、日本で電気を使用しているすべての世帯から徴収されている。再生エネルギーによる電気は、電力会社によって一定価格で買い取られている。再生エネルギーの普及を目的とした制度である。
買取対象は「太陽光」「風力」「水力」「地熱」「バイオマス」いずれかの再生可能エネルギーを使用して発電される電力で、固定価格買取制度によって電気を買い取った電力会社は、買取費用の一部分をすべての電気利用者から「賦課金」という名目で集金している。月に300kWh使用した場合の支払額は、導入当初の2012年度は年額792円/月額66円で無視できるほどの金額であったが、年々上昇し、年額12,564円/月額1,047円となっている。単価が上昇していた背景には、再生エネルギーの電気の買取量が増加してきたことがある。電力多消費事業者には減免制度が設けられているが、個人は対象とはならない。
3 能登半島地震で壊滅した風力発電所
3月11日の東京新聞は「石川県能登地方で稼働している73基の風力発電施設全てが、能登半島地震で運転を停止した。本紙の調べで分かった。風車のブレード(羽根)が折れて落下したほか、施設を動かす電源が使えなくなるなどした。半数超で運転再開の見通しが立っておらず、能登で進む風力発電の大規模な新設計画への影響は避けられない。」と報道した。
防災推進機構理事長・鈴木猛康氏の現地調査報告によると(『長州新聞』:2024.5.28)「風車は、大きな加速度を受けたり外部電源が不安定になると制御できなくなるので、ストッパーがかかって回転を止め、固定するようになっている。」が、調査した酒見風力発電所の風車は「ブレードそのものは木材とカーボンファイバーによる軽薄な構造で、風には抵抗するが振動には絶えられない。落下したブレードの残骸を見ると、縦に2枚にはがされ、グニャーっと曲がっていた。それほど構造的に弱い。」とし、「今回のブレードの壊れ方を見る限り、風力発電施設で正当な耐震設計はおこなわれていないのではないかと懸念する。ブレードの性能まで含めた耐震設計がおこなわれていないのであれば、今一度わが国の自然条件に適合した高度な耐震設計を適用し、人の命にかかわるような崩壊をくいとめるべきだ。」と述べている。しかし、一般紙ではこのような報道はほとんど皆無に近い。
4 メガソーラーの悲惨
熊本県山都町:阿蘇外輪山の南側に、福岡ドーム17個分の約119ヘクタールの土地に、太陽光パネル約20万枚(出力約8万キロワット)のメガソーラーが突如あらわれ平地や斜面を覆い尽くしている。「JRE山都高森太陽光発電所」であり、2022年年9月から稼働し始めた。元々は牧草地であったが、ウクライナ戦争と円安の影響で輸入飼料が高騰し、廃業する畜産農家や、高齢化で、牧草地は荒れ放題になり、土地を売ることになった。農業委員会としては、130ヘクタールのうち1割程度を農地とし、あとは非農地としてしまったところにメガソーラーができてしまった(『長州新聞』2023.913)。
一方、長崎県の五島列島北端にある宇久島では、国内最大規模のメガソーラー事業が持ち込まれ、島の4分の1の土地を電力会社が抑えたうえで伐採・開発し、150万枚の太陽光パネルで覆うという前例のない計画が本格着工を迎えようとしている(『長州新聞』2024.6.7)。
こうした中、福島市では2023年に「ノーモアメガソーラ宣言」を出し、宮城県も2024年4月に森林開発事業者向けの新税を作った(再生可能エネルギー地域共生促進税は、0.5ヘクタールを超える森林を開発し、再生可能エネルギー(太陽光、風力、バイオマス)発電設備を設置した場合、その発電出力に応じて、設備の所有者に課税する)(日経:2024.2.27)。
5 「再生エネルギー」は「詐欺商法」
太陽光・風力発電所の国内保有量を調べると、1位の豊田通商は太陽光で68万キロワット問、風力で86万キロワット、2位ののパシフィコ・エナジー(東京・港)は太陽光だけで約90万キロワットを持つ。3位のヴィーナ・エナジー・ジャパンは米外資である。4位のENEOSは太陽光を中心に64万キロワットを動かしている。当初は国が設定した20年間の買い取り単価が高く、開発投資に対する十分なリターンが見込めたため、資金力にものを言わせて大規模開発を行った。「太陽光発電は政府の固定価格買い取り制度(FIT )の下で成長してきた官製市場」である(日経:2023.12.4)。当初の制度設計から太陽光パネルの負担をできる金持層ちが、家屋の改修もできない貧困層の電気料金からの所得を移転するもので再配分の原則反するとの指摘があったが、そこに巨大企業が「高利回りが期待できる『投員商品』」として大量参入したことで(日経:上記)、制度としては崩壊してしまった。当初は環境に関心のある善人ばかりという制度設計であったが、実際は、儲けのネタにする巨大金融資本という悪人ばかりであった。再生エネルギーとは「金融商品」であり、環境に名を借りた“詐欺商法”となった。というか、元々社会的共通資本であり、本来は売買の対象ではない環境を「商品化」して儲けの道具にしてきたEU諸国の環境規制や排出権取引自体が詐欺であり、「環境」と名の付くもののほとんどは詐欺と考えた方は良い。