【投稿】トランプ:米軍ガザ「占領」のドタバタ

<<ガザを「中東のリビエラ」に変える>>
2/4、トランプ米大統領は、イスラエル・ネタニヤフ首相との会談で、「米国がガザ地区を占領する」と宣言し、パレスチナ人はどこか別の「美しい」場所、同盟国エジプトとヨルダンが受け入れ、永久に移住させ、「ガザを平らにし、破壊された建物を撤去する」と約束。米国が戦争で荒廃したガザ地区を再建し、米国の領土にすると述べ、この開発により、ガザを高級リゾート「中東のリビエラ」に変える、「世界中の代表者」がガザ地区に住み、働くようになるかもしれない、私は、世界中の人々がそこに住むことを思い描いている」と述べ、世界の富裕層や権力者のための利益の出る海岸リゾート開発を宣言したのであった。
自称「不動産王」、実は不動産詐欺師の面目躍如たる、醜い姿が突如、飛び出したのであった。この発言は、翌日、トランプ大統領本人だけが、政権当局者たちの誰にも諮らず、公表したことが明らかになり、大慌てでドタバタ騒ぎの修正、撤回に動き出した。
タイムズ紙は、「米国政府内では、このような大規模な外交政策提案ならともかく、どんな真剣な外交政策提案でも通常行われるような国務省や国防総省との会議は行われていなかった。作業部会もなかった。国防総省は必要な

兵力数の見積もりや費用の見積もり、さらにはそれがどのように機能するかの概要さえも示していなかった。」と報じている。

しかし、タイムズ・オブ・イスラエルは、トランプの義理の息子であるクシュナーが、ネタニヤフ首相との記者会見で大統領が行った衝撃的な発言の準備を手伝ったと報じている。クシュナーは、以前からすでに、ガザの海辺の土地を「非常に価値がある」、再開発を可能にするためにパレスチナ人を移住させるべきだとして、「私は人々を移住させ、その後、それをきれいにするために最善を尽くすつもりだ」と語っていたのである。つまりは、トランプ氏の発言は、クシュナーの提言そのものなのであった。

<<ネタニヤフの「最も偉大な友人」>>
このトランプ氏の提案は、怨本的に国際法とパレスチナ人の権利を侵害しており、全世界から非難の声が沸き上がる事態を招いている。

トランプ大統領のガザ計画は共和党議員にも受け入れられず

移住先に指定されたエジプト外務省は、住民を立ち退かせることなくガザ地区を再建する必要性を強調し、ヨルダンのアブドラ2世国王は、土地を併合してパレスチナ人を立ち退かせるいかなる試みにも断固反対すると表明した。エジプト、ヨルダン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール、パレスチナ自治政府、アラブ連盟による共同声明は、「直接的な追放や強制移住」を拒否し、そのような行動は「地域の安定を脅かし、紛争を拡大するリスクがあり、人々の平和と共存の見通しを損なう」と警告している。
米国の重要な同盟国であるはずのイギリス、オーストラリア、ドイツなどもトランプ氏の発言を非難し、二国家解決の重要性と国際法の尊重の必要性を強調している。イギリスの外務大臣アンネリーゼ・ドッズ氏は、「英国はガザのパレスチナ人を彼らの意志に反して近隣諸国に追い出すいかなる試みにも反対する」と明言している。

トランプ氏の発言を大歓迎しているのは、もちろんイスラエルのみである。ネタニヤフ首相は、「これは歴史を変える可能性があると思う」、「従来の考え方を打ち破る意志、つまり何度も失敗してきた考え方、斬新なアイデアで既成概念にとらわれない考えを持つ意志は、私たちがこれらすべての目標を達成するのに役立つだろう」述べ、トランプ氏が「イスラエルがホワイトハウスでこれまでに持った中で最も偉大な友人」であると絶賛している。

しかし、イスラエルの指導者から熱烈な歓迎を受けたにもかかわらず、トランプ氏の提案は国際法の下で完全に違法である。これは、強制的な住民移送を禁止する複数の国際条約に違反している。ジュネーブ条約(1949年) – 第4回ジュネーブ条約とその追加議定書は、占領地からの民間人の強制移送、追放、または国外追放を禁止している。イスラエルと米国はともにこれらの協定に署名しており、こうした政策を承認することは国際法の直接的な違反である。民的および政治的権利に関する国際規約(ICCPR) – 米国とイスラエルが批准しており、人々が祖国に留まる権利を保証し、恣意的な移住を禁止している。ハーグ条約(1907年) – 大量追放を禁止し、民間人の保護を確保する占領国の責任を概説している。さらに、トランプが追放されたガザの人々を受け入れるよう圧力をかけている2カ国、エジプトとヨルダンもこれらの条約に署名している。

 そして厳然たる事実として、南部に追いやられていたパレスチナの人々が、民族浄化・抹殺計画に断固たる抵抗を示し、希望の大行進を組織、すでに1月27日には、100万人ものパレスチナ人がガザ南部から北部に帰還しているのである。

こうして、トランプ氏の発言で全世界的な孤立化においこまれ、与党共和党幹部からの批判も相次ぎ、修正と撤回に動かざるを得なくなり、ホワイトハウスは、ガザ地区に米軍を派遣する考えを弱め、恒久的な避難に関する発言も修正、報道のトーンを下げ始め、「大統領はガザに地上軍を派遣することを約束していない。また、米国はガザの再建に資金を拠出するつもりはない」と修正。

2/5、米民主党のアル・グリーン下院議員は、「民族浄化は冗談ではない。特にそれが世界で最も権力のある米国大統領から発せられ、彼が自分の発言を完璧に実行できる能力を持っている場合、ガザでの民族浄化は冗談ではない。」として、トランプ大統領の弾劾案を発議する意向を明らかにした。このトランプ氏弾劾案は、歴代大統領の就任後で最も早い弾劾案の登場である。。

2/6、ついに追い込まれたトランプ大統領自身が、米兵は関与しない、米軍を地上に派遣したくない、と、事実上の違法なガザ侵攻計画を撤回、方向転換である。まさに、トランプ劇場のドタバタ騒ぎである。

以上の経緯は、トランプ氏の計算された挑発か、それとも軽薄な信念の吐露か? いずれにしてもトランプ政権の政治的危機と脆弱さを全世界にさらけ出したものと、言えよう。
(生駒 敬)

付記:2/8の日米首脳会談、石破首相のトランプ詣では、トランプ氏が事実上の大失態で意気消沈していた最中であった。軍事オタクの石破首相にとっては、危うい綱渡りで、米軍ガザ「占領」への同意を求められることもなくやり過ごし、トランプ氏の「MAGA」(アメリカを再び偉大に)運動をことさらに称賛。共同声明で日米同盟の新たな「黄金時代」をうたい上げたのであった。しかし、その共同声明、中国を名指しして、「力または威圧によるあらゆる一方的な現状変更の試み」に反対すると明記したが、トランプ氏の米軍ガザ「占領」発言自身が「一方的な現状変更の試み」であっただけに、トランプ・石破、両氏とも自らをかえりみない、その底の浅さは噴飯ものであろう。

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