【投稿】トランプ・ゼレンスキー会談の決裂

【投稿】トランプ・ゼレンスキー会談の決裂

                             福井 杉本達也

1 トランプ・ゼレンスキー会談の決裂

トランプ米大統領は2月28日、米ワシントンのホワイトハウスでウクライナのゼレンスキー大統領と会談した。ゼレンスキー氏は会談の途中で何度もウクライナの「security」(安全保障)を口にした。「security」を強調することは、ロシアとの停戦の考えがないことを示す。ゼレンスキーは、EUの同盟国が軍事的支援をしてくれると述べ、戦争を継続するため米国の支援が欲しいとほのめかした。これに対し、トランプ氏は戦争ではなく経済だと反論した。記者団を入れた49分の会談の終盤でロシアのウクライナ侵略を巡って激しい口論になり、同国の資源権益に関する協定への署名を急きょ見送った。ゼレンスキー氏がバンス副大統領に「あなたが話す外交とは何なのか」と質問し、バンス氏が「あなたの国の破嬢を終わらせる外交について話している」と答えたあたりから雰囲気がおかしくなった。トランプ氏は「あなたにはカードがないが、我々にはある」とし、「あなたは何百万人もの命をギャンブルにしている。第3次世界大戦をギャンブルにしている。米国に対して非常に失礼だ」と激高した。さらに、バンス氏は、かつてゼレンスキー氏が「激戦州ペンシルバニア州で民主党とともに選挙運動をしていたことを覚えているだろうか?私は覚えている。トランプ大統領も、たとえそれを見逃すつもりだったとしても、間違いなく覚えている。恩知らずの外国人が選挙に干渉した。」とハリス氏への応援を行ったと非難した。

 

2 公開の場でのゼレンスキー氏の追放

そもそも、ゼレンスキー氏は会談に戦闘服で登場した。全く停戦する気はないとのアピールである。米側の会談のドレスコードはスーツであった。会談の途中でFOXの記者がなぜスーツを着てこないと詰問されると、戦争が終わったら着ると誤魔化した。トランプ政権は、今回の会談を米国民へのゼレンスキー氏追放のショーとすることを決めていた。49分間の記者会見の間、ホワイトハウスの暖炉の部屋には少なくとも30台のテレビカメラがあった。。トランプは、公の場であるテレビで全米・全世界に放映することで、「横柄なゼレンスキー」を缶詰にし、アメリカのヨーロッパ安全保障からの撤退を宣言した。米国は、ロシアとの経済交渉を模索する。横柄な喜劇役者は米国民への不遜な態度を理由に、ホワイトハウスから追放された。会談の失敗後、強力なゼレンスキー支持者だった共和党のリンゼイ・グラハム上院議員も旗を降ろした。もう誰も公にトランプ氏の停戦案を止めるられる者はいない。ゼレンスキー氏は、米国の支援を受けたNATO軍が参入することを望んでいた。それでは、米国がロシアとの大規模な戦争に引き込まれることになるが、それをトランプ氏が拒否したのである。

3 ゼレンスキー氏をあきらめない英・仏

ウクライナはドル、ユーロ、円を見境なく吸収し続けるブラックホールとなっている。EUは、ウクライナへの肩入れ以外なんの代替案を持たなかった。真実と平和を恐れている。彼らは、ロシアと米国の関係が正常化し、さらに中国との関係も正常化されるのではないかと恐れている。

EU経済はロシアからの低廉な価格のエネルギーに依存していた。ところが、EUは「金のガチョウ」を殺した。EU の経済はロシアからのノルドストリームパイプラインの破壊によって、非常に高いエネルギー料金となり、ほぼ破綻した。彼らの唯一の希望は、米国を安全保障ビジネスに参入させる計画を練ることだった。だが、会談の失敗によって企みは終わった。

会談失敗後の3月1日、ゼレンスキー氏はその足でロンドンを訪問、スターマー英首相と会談した。リーブス英財務相は、ウクライナ支援に向けて22.6億ポンド(約4270億円)の融資を承認する合意に署名した。融資は、欧州で凍結されたロシア資産を活用するとのことである。しかしこれはロシア財産の窃盗である。ゼレンスキー氏は、テレグラムに投稿し、「これは我々の防衛力を強化するための融資であり、凍結されたロシア資産から返済される。この資金はウクライナでの兵器生産に充てられる」と書いた。

ミュンヘン安全保障会議でヘグセス米国防長官は①ウクライナのNATO加盟反対、②2014年以前の国境線への復帰反対、③「第5条」平和維持軍の後方支援反対、そして④ウクライナへの米軍駐留反対の4つの「ノー」を突きつけた。さらに、在欧米軍は「永遠」ではないと付け加えた。『櫻井ジャーナル』は「ゼレンスキーはイギリスの情報機関に操られている可能性が高く、今回の出来事の背景にはMI6が存在しているかもしれない。」と書く(2025.3.3)。英仏がどんなに工作しても、EUは産業革命以前のユーラシアの周辺国の地位に落ちぶれるであろう。

4 ネオコンに操られ、偏向する日本のメディア

読売3月2⽇社説は「ロシアの侵略を受けるウクライナの⼤統領を激しく責め⽴て、⽶国との取引に応じなければ(戦争から)⼿を引くと脅しをかける」とし「⽶国のトランプ⼤統領の異様な振る舞いが、メディアを通じて全世界に伝えられたことに、驚きと懸念を禁じ得ない。これがトランプ⽒が⾔う『偉⼤な⽶国』の姿と⾔えるのか」と批判した。日本のマスコミの報道は、すべて、トランプ大統領を「変人」としか報じていない。日本ではトランプ氏を侮る間違った印象が出来上がっている。しかし、それは、見当違いである。米国の民主党=ネオコンに強く情報操作された物語である。東京は、その反ロシア政策で最後まで取り残される。このままでは、最大の損失を被るのではないか。トランプ氏はウクライナは日本など世界有数の資産国が債務保証しているのだから動じる必要はないという。日本はウクライナの連帯保証人である。我々日本人は、頭が悪いのか、鈍感なのか。2024年末にウクライナは⽇本から復興⽀援⾦として88億円を受け取った。ウクライナのシュミハリ⾸相は、我々の政府間の合意案が承認されたと発表した。これは⽇本のJICA(⽇本国際協⼒機構)からの資⾦だ。今回の拠出までに⽇本が⽀払ったウクライナ⽀援は121億ドル(1兆8300億ドル)にものぼる(Sputnik日本:2025.2.11)。石破首相は予算委員会の答弁で「財源がない」というが、これは我々日本人の税金である。エネルギー安全保障の要であるサハリン1・2の先行きも危ない。

カテゴリー: ウクライナ侵攻, 平和, 政治, 杉本執筆 パーマリンク

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