【投稿】トランプ関税:株価暴落を加速--経済危機論(157)

<<3・10「ブラックマンデー」>>
3月10日月曜日、トランプ大統領が就任して50日目。株式市場は急落を続け、ダウ平均株価は過去1か月で約2,500ポイント下落。3/10は1,100ポイント以上下落した後、約900ポイントの下落で引けた。

米国株式市場、トランプ関税で、4兆ドルの価値を失う

報道の見出しは
* 「景気後退の警告が鳴り響き、株価暴落が加速」(ブルームバーグ)
* 「米国株式市場、トランプ関税で、4兆ドルの価値を失う」(ロイター)
* 「トランプ大統領が景気後退の可能性を否定しないと発言したことで、ダウ平均株価は1,100ポイント下落」(CNN)
* 「関税と景気後退への懸念が高まる中、株価は再び下落」(NPR)
* 「関税への懸念が市場を支配し、ウォール街は下落」(ガーディアン)

CNNやガーディアンが指摘しているように、「トランプ米大統領が週末のフォックスとのインタビューで景気後退の可能性を否定できなかったため、市場がトランプ氏のより不安定な行動を抑制することができるという期待は崩れつつある」ことが、引き金となっている。
そして直接的なきっかけとして、「中国が米国による中国からの輸入品への 10% の関税に対抗して、農産物を標的とした米国からの輸入品に報復関税を課したことを受けて」、まさに「関税への懸念」が市場を支配し、下落が一気に広がったのである。

ダウの下落と同時進行で、ナスダック100だけでも1日で5%近くも急落、パニックが発生。S&P 500は11月以来初めて200日移動平均を下回り、ナスダックは2022年以来最悪の日となり、4%下落して17,468.32で取引終了し、ハイテク株には大打撃となったのであった。ナスダック総合指数は直近の高値から14%近くも下落している。アップル(AAPL.O)、NVIDIAが両方とも約5%下落し、テスラは15%下落、約1,250億ドルの価値を喪失している。かつて急騰していたNvidiaの株価が今や崩壊し、1月のピーク時には、Nvidiaの時価総額は3兆6,600億ドルだったものが、3/7には、なんと1兆ドルも失い、2兆6,600億ドルにまで落ち込んでいる。

<<「絶対にない。アメリカに不況は起こらない」>>
ところが、トランプ政権は、景気悪化の責任をすべてバイデン前大統領に押し付けている。トランプ大統領による関税の脅し、実施、撤回、延期、再開の繰り返し、そして連邦政府の労働力削減、緊縮策として数十万人に上る可能性のある政府職員の大量解雇にもかかわらず、国家経済会議のケビン・ハセット委員長は、経済の悪いニュースはすべてバイデン前政権の責任であると広言し、関税は、「貿易戦争ではなく、麻薬戦争だ」と言い逃れる始末である。
3/9、株価暴落の前日、ラトニック米商務長官は、NBCの「ミート・ザ・プレス」で、大手投資銀行が今後12カ月以内に景気後退が起きる可能性があると予測していることについて問われ、「絶対にない。 …アメリカに不況は起こらないだろう」と答えている。あきれた認識、無責任な放言であろう。

家計の不安が高まり株価が急落する中、ホワイトハウスは景気後退論に反発(March 11, 2025 reuters)

そしてトランプ氏自身が、「米国が不況に直面する可能性があるかどうか」を問われて、そんな予測は「嫌い」であると答え、予測そのものを拒否している。しかしそれでも、週末のフォックスとのインタビューで景気後退の可能性を否定できなかったのである。追い詰められているのは確かであろう。

いまやウォール街は、トランプ氏がソフトランディングを破壊し、ハードランディングに突き進んでしまうことを恐れだしている(WSJ March 10, 2025)。

まさに「史上最も愚かな貿易戦争」の警告が、具体的で危険なサインを出したのだ、と言えよう。しかし、これは始まったばかりである。トランプ政権が政策の大転換をしない限り、長引き、より大きく悪化する可能性が大なのである。
(生駒 敬)

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