【投稿】参院選・野党共闘をめぐって 統一戦線論(21)
<<「もうダメかと思った」>>
2/20に開かれた社民党大会で、来賓挨拶に立ったシールズの本間信和さん(筑波大)は、「正直なところ、もうダメかと思った。野党共闘、本当にうまくいかないと思っていた中で、昨日のニュース(野党5党の党首会談で共闘を確認したこと)を聞いて胸をなで下ろしていたところだ。今年の夏、政党間の利害関係や立場や世代の違いを超えて、今の強権的な安倍政治に対し「ノー」と声を上げないといけない。若者だけではなくあらゆる世代の人たちが声を上げたのが昨年の夏だ。こうした声を受けて今、野党の人たちが自分たちの責任をかけて共闘している。日本政治史では今までなかったことだ。ただ、これで状況が楽観できるものになったとは思っていない。困難な戦いになるということは百も承知。それでも私たちには小さな違いを超えて、一緒に安倍晋三政権を倒すという戦いを戦い抜く準備と覚悟はできている。支持政党がない人が40%いるこの国で、どう政治参加させるか。政治にかかわる全ての人が考えなければいけない。政党も市民もすべてがともに戦い、この参院選、勝ちを狙いにいきましょう。」と語った。ここにこれまでの失望と今後への熱い期待の両方がこめられている。
シールズ(「SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)」)をはじめ、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」「安全保障関連法に反対する学者の会」「立憲デモクラシーの会」「安保法制に反対するママの会」、これらをさらにまとめ上げた「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」、それらを支え、それぞれに結集する多くの団体や個人の熱意こそが野党共闘の流れを作り出し、押し上げてきた原動力であった。
あまりにも遅くイライラさせられてきた野党共闘ではあるが、ようやくのことでここまで来たというところであろう。
2/19、民主党の岡田代表、共産党の志位委員長、維新の党の松野代表、社民党の吉田党首、生活の党の小沢代表の野党5党首が国会内で会談し、以下の4項目で合意した。
(1)安保法制の廃止と集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回を共通の目標とする。
(2)安倍政権の打倒を目指す。
(3)国政選挙で現与党およびその補完勢力を少数に追い込む。
(4)国会における対応や国政選挙などあらゆる場面でできる限りの協力を行う。
5野党党首が、直面する参院選を前にしてこのような選挙協力で合意し、誠実で真剣な協議に入ることを確認したこと、その意義は大きい。これが早急に具体化されることが望まれる。
<<「自民党に天罰を、公明党に仏罰を!」>>
その正否を左右する当面の焦点は、この4月に行われる北海道と京都の衆院補欠選での野党共闘が実現するかどうかであるが、北海道5区は候補者の一本化が実現。京都でも野党候補の一本化ができるかどうか、先の合意が試されている。
北海道5区補選(4/24投開票)は、2/19、共産党北海道委員会と民主党北海道が候補者一本化に合意し、共産党が独自候補を取り下げ、維新、社民も推薦、新人の池田真紀氏(43)が統一候補となった。その「統一候補」勝利のための共闘協定は、
1、立候補予定者は安保法制(戦争法)の廃止をめざす
2、立候補予定者は立憲主義と民主主義の回復をめざす(集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回を含む)
3、立候補予定者は国会活動において、上記1、2の項目に従って行動し、所属会派の状況にかかわらず、その姿勢を最後まで貫くことを誓約する。
としている。
問題は、この道5区補選は、自民党町村信孝議員の死去に伴うもので、町村氏の娘婿の和田義明氏(44)が立候補を表明しているが、公明に加えて、新党大地・鈴木宗男代表が共産党が入った野党統一候補の擁立に反対、安倍首相と取り引き、手のひら返しで自民候補推薦に廻ってしまったことである。さらには鈴木氏の長女・民主党の鈴木貴子衆院議員(比例北海道)を自民に引き抜き、次の衆院選で候補として擁立する取り引きをし、鈴木氏が「貴子を民主から離党させる用意はできている」と伝えたのに対し、安倍首相は「自民で育てたい」「北海道では大地が影響力を持っている。鈴木氏はキーマンだ」と応じたという。鈴木氏はこれを「ありがたく思っている」と堂々と公言している。
前述の社民党大会で、『週刊金曜日』編集委員の佐高信さんは挨拶の中で、「やはり私たちが戦う敵は公明党を含めた自公政権だ。さっき志位委員長や小沢さんとかがいろいろ話をしていたが、北海道の鈴木宗男の大転換にみられるように、共産党と結ばないということは公明党、創価学会と結ぶということだ。それを私たちは強調していきたい。公明党なんて「平和の党」なんかじゃない。そんなことは全く頭にない。そして創価学会と公明党と使い分けをしてきた。そういうことにメディアも乗ってはならない。自民党に天罰を、公明党に仏罰を!」と強調した。まさにしかり、と言えよう。
<<「思い切った対応を行いたい」>>
この2/20の社民党大会には民主、共産、維新、生活の野党4党の党首や幹事長が出席し、それぞれの野党共闘にかける思いを語っている。
社民党・吉田党首:「私は党首に就任して、一貫して社会民主主義的なリベラル勢力結集を目指したいと訴えてきた。そのタイミングは近づきつつあるように思う。決断すべき時には大胆に決断し、皆さんとともに前進していく決意だ。昨日、野党5党共同で戦争法、安全保障関連法の廃止法案を国会に提出した。大きな一歩だ。統一署名運動、違憲訴訟団との連携、総掛かりの大衆行動など、これまでの私たちの歩みに自信と確信を持ち、戦争法廃止と活動阻止に向けて新たな運動を展開しようではないか。本日お見えの各政党の皆さんとともに、野党統一候補擁立に全力をあげていく。」
民主党・枝野幹事長:「5党はそれぞれ政策には違いがある。違いはあるが、いまこの国が直面している3つの大きな危機を食い止めなければならない。この点については一致している。一つは何と言っても立憲主義の危機。権力が憲法に拘束されなければ何に拘束されるんだ。勝手に憲法の解釈を変えて社会が成り立つはずがない。この危機はどんな理念、政策が違っていても政治を行う上での共通の土俵でなければならないはずだ。二つ目に国民生活の危機だ。経済財政政策では違いがあるかもしれない。しかし、今の日本の現状は、中間層はどんどんどんどん崩れていって、貧困層がますます苦しくなって、国民生活の危機を迎えている。これを何とか食い止めなければならない。この点ではそれぞれ色々な違いがあっても共通しているのではないかと思う。そして民主主義の危機だ。この夏の参院選。もちろん民主党の幹事長として私は民主党の議席を一つでも多くしたいと思っているが、それ以上に大事なことは自公とその補完勢力をいかに最小化させるか、そちらの方こそが最優先だ。そんな立場で戦っていく。」
共産党・志位委員長:「日本共産党が社民党の大会に招待いただき、ごあいさつをするのは、日本社会党時代も含めて今日が歴史上初めてだ。大変うれしく、光栄に思う。これからますます久しくお付き合いをさせていただきたい。昨日の合意、これは野党共闘を求める国民の声に応えた画期的な合意だと考えている。誠実かつ真剣に協議に臨み、速やかな合意を得るために全力を挙げたい。特に参院の32の1人区の戦いは非常に重要だ。この1人区の候補者の調整にあたっては、戦争法を廃止するという大義の実現のために、わが党としては思い切った対応を行いたいと考えている。」
維新の党・今井幹事長:「私は今一番怖いのは安倍政治の本当に強引な政権運営のやり方だ。こういう人格を持っている人をこの国のリーダーにしておくことは本当に危険だ。今度の参院選、あるいは同時に行われるかもしれない衆院選、これは私たちの国に民主主義を取り戻す選挙だと思う。われわれは社民党の皆様と、そして今日いらっしゃる他の党の皆様と、とにかく民主主義を取り戻すこの1点で一緒に戦って参りたい。」
生活の党と山本太郎となかまたち・小沢一郎代表:「要は、お招きいただいた4党と社民党、この5党が本当に口先だけではなくて、お互いに信じ合い、協力して、選挙に臨んで、安倍政権を打倒し政権交代をはかる。それがわれわれの使命であり、責任であると思う。そのために本当に格差のない平和な社会をつくる政権、われわれから言わせれば「国民の生活が第一」を目指す政権を樹立するために皆さんと一緒に全力で頑張る。」
それぞれに決意を語り、温度差はあれども野党共闘前進への意気込みが感じられる。しかし、言や良し、現実が伴わなければいかんともしがたい。それぞれの政党エゴ、セクト主義が跋扈する苦い、情けない事態がこれまで続いてきた。そのようなことを許さず、野党共闘を前進させ、追い込む力、原動力は、さらに広範な人々を結集した多様な闘いと運動であることがあらためて再確認されよう。
(生駒 敬)
【出典】 アサート No.459 2016年2月27日