【投稿】原発震災から学ぶもの 「自治体再建」(今井照著 ちくま新書)を読んで 

【投稿】原発震災から学ぶもの 「自治体再建」(今井照著 ちくま新書)を読んで 

 3年目の「3・11」を迎えて、改めて大災害とどう向き合うか、国民それぞれが思いを新たにしたことだろう。大地震と津波が生み出した破壊と多数の死者、住み慣れた家や町・地域を失うという悲劇、そして原発災害による複雑で困難な状況。既に3年が経過したとは言え、問題解決や明るい展望を持つことができない現実から目を背けることは、誰もできない。
 今回手にした「自治体再建」は、原発避難で生じた、これまで住んできた町と、避難地の町(「仮の町」「バーチャル自治体」と筆者は呼ぶ)、二つの自治体に関わる避難住民の状況に、二重の住民登録という新たな課題が生じていることが明らかにされている。
 また、被災直後、国・県と連絡も取れない中で、独自の災害対策を実施した現場自治体首長や職員の対応を明らかにして、小さな自治体だからこそできた災害対応についても、具体的に触れている。
 
<住めない町と住んでいる町>
 東北3県では、仮設住宅を含め、避難生活を余儀なくされている方々は26万人であり、特に福島県では13万人が、今尚避難生活をされていると言う。
 福島県では原発事故によって「強制的」に住んでいた地域に立ち入ることもできない状況が続いている。震災直後、原発が危機的状況に陥る中、3月12日から15日、各自治体は、全町民・全村民の避難を決定・実施した。
 これらの決断は、国の決定以前に行われた場合もあった。国や県からの情報が、震災による通信網の遮断という中で途絶えたている中、テレビや地元警察などからの情報に基づき、住民の安全を守るための独自の判断だったという。
 現在、法律では、災害対応は地方自治体の業務である。その費用は、災害対策基本法の規定により、補てんされるのである。これら原発周辺自治体の集団的避難は、いずれも福島県が主導したものではない。通信の遮断によって情報は県からはほとんど届かない。各自治体は、原発から離れた自治体に個別に連絡を取り一時避難所を確保した。
 
<合併しなかった町ができたこと>
 福島の被災地自治体が震災時に、どう行動したのか、その点も本書は丁寧に明らかにしている。平成の大合併にも同調しなかった自治体が、情報の確保・避難指示の徹底、そして町の一体感を維持して避難ができた実例が記される。大きくなった自治体では、支所があるに止まり、情報の伝達すら困難な中での避難となった事と比べると効率論だけで誘導された合併は、問題が多いと言わざるを得ない。
 
<復興の道は遠いが>
 震災3年の報道には、津波に被災した地域の復興が進まず、帰還を断念する方が増えているというものが多かった。2年前に私も南三陸町を訪ねたが、一面に広がる旧住宅区域は、ようやく瓦礫が取り除かれただけだったが、その後住民は帰還できているのだろうか。また、14mを越える防潮堤の建設も、予算は付いたものの、住民からは景観や町を変貌させる施策に反対の声も出てきているという。人が戻ってこその復興だろう。そして人が生きるには雇用の創出も欠かせない。25兆円が本当に復興に役に立っているのか、その検証も求められている。(2014-03-17佐野) 

 【出典】 アサート No.436 2014年3月22日

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