【投稿】 都知事選をめぐって 統一戦線論(7)
▼ 10/30日告示、11/16日投開票の沖縄県知事選は、2月の都知事選とは対照的に、自公・与党陣営が分裂し、野党陣営が総結集し、元自民党沖縄県連幹事長の翁長雄志・那覇市長を統一候補とする統一戦線が着実に形成されつつある。
7/27、沖縄県内政財界や労働・市民団体の有志、有識者らでつくる「沖縄『建白書』を実現し未来を拓く島ぐるみ会議」の結成大会が、宜野湾市民会館であった。主催者発表で2千人余が参加、米軍普天間飛行場の県内移設断念などを求めて県内全市町村長と議会議長、県議らが署名し、昨年1月に安倍晋三首相に提出した建白書の理念実現に向け、全県民の再結集を訴える結成アピールを採択。普天間飛行場の名護市辺野古移設や米軍基地の過重負担に象徴される沖縄への「構造的差別」の解消を訴えた。大会は、辺野古移設に向けた政府の海底ボーリング調査準備が本格化していることを踏まえ、「辺野古強行をやめさせよう―沖縄の心をひとつに」をテーマに掲げ、登壇者らが辺野古移設阻止を口々に訴えた。(7/29付琉球新報)
「島ぐるみ会議 尊厳回復へ再結集を」と題する琉球新報・7/29付社説は、
世論調査では今も県内移設反対が74%もあり、その中には自民党支持者も多い。辺野古反対は保革を超えた民意だ。
県内移設断念を求めて県内41市町村の全首長、全議長、県議らが署名した昨年1月の「建白書」提出は、戦後史に特筆される。「銃剣とブルドーザー」と称される米軍の軍用地強制接収・一括買い上げに抵抗した「島ぐるみ闘争」以来の、県民を挙げた運動だった。 仲井真弘多知事らの容認でその枠組みは崩れたが、仲里利信元県議会議長が鋭く指摘したように「沖縄で保革がけんかをして喜ぶのは日本政府と米国」だ。移設強行を止めるという民意を実現するためにも、県民の再結集が必要だ。
何も絶望することはない。民主主義と人道に照らせば、理は沖縄にある。沖縄が一つになって意思表示すれば、世界最強の米軍でさえ土地の買い上げを撤回した。「島ぐるみ」の効果は歴史で実証済みなのだ。
差別を受けてもいいという人は世の中にいない。だから人としての尊厳ある扱いを求める沖縄の意思は不可逆的である。辺野古移設強行はそんな差別の象徴だ。理不尽な扱いの代償の重さを、日米両政府に思い知らせよう。
と述べている。この社説に、米軍基地の移設強行を止める島ぐるみの沖縄県民の思いとそのための再結集の道が示されている、と言えよう。
▼ そして、8/11、県政4野党・会派でつくる知事選挙候補者選考委員会が、「知事選挙は、ウチナー(沖縄)のアイデンティティー(主体性)を大切にし、『建白書』に示された理念を堅持するぶれない知事が求められている。・・・『辺野古新基地を造らせない』との姿勢を明らかにし、経済振興や福祉、教育、離島振興等にも期待が持てる翁長雄志さんが沖縄県知事に最もふさわしい」として翁長氏に出馬を要請、翁長氏はこれに応え、「これまで基地を挟んで保革が対立し、その中で基地問題が解決しないことに疑問を持っていた。歴史的な転換の下で、基地問題では、アイデンティティーで力を合わせていきたい」と表明。記者会見では、保守、革新の一致点について、「一つでまとまる要素は『建白書』だ」と述べ、「力を合わせて頑張っていきたい」と知事選立候補に応じる姿勢を明瞭に示したのである。翁長氏は、9月2日開会予定の定例市議会で立候補を正式表明するとみられる。
2010年の前回知事選で普天間基地の『県外移設』を公約に掲げて当選しながら、昨年12月に移設の前提となる辺野古沿岸の埋め立て申請を承認した、仲井真現知事の「変節」と安倍政権への忠誠に県民の怒りは深い。かねてからの目論見であったとはいえ、その変節は保守支持層にも重大な地殻変動を起こさせ、保守陣営の分裂が表面化し、噴出しだしたのである。前回選挙で仲井真氏の選対本部長を務めていたのが翁長氏である。
翁長氏に知事選出馬を要請した那覇市議会自民党会派17人中の12人に対し、自民党県連が下した処分が8/8日付で確定し、翁長氏への出馬要請で中心的な役割を担った安慶田光男市議会議長、金城徹会派長、仲松寛氏の3人をはじめ11人が除名処分、1人が離党届を出す事態にまで至っている。
さらにこうした事態にきりもみ状態にあるのが公明党である。同党は、1998年以降、本土の自公連立に先駆けて自民党と組んできたが、基地問題については、党沖縄県本部は辺野古移設反対方針を明示しており、翁長氏支援の姿勢も崩しておらず、「今回の知事選もそのスタンスで対応を協議する」としている。支援の判断を9月7日の沖縄統一地方選まで先送りする方針であるが、中央の公明党本部は辺野古沖合埋め立てを承認した仲井真知事を推薦する構えであり、「頭が痛いけれど、足並みを揃えないわけにはいかない。沖縄県本部には丁寧に説明して理解してもらわないと」としている。しかしこれがすんなり理解されるはずもなく、強行すれば、7月13日の滋賀県知事選同様、公明支持層には仲井真支援はネグレクトされるであろう。
▼ この公明党本部の姿勢は、8/2放送のJNN報道特集「緊迫の辺野古 沖縄知事選で”地殻変動”」で明らかにされたものであるが、同じ放送の中で共産党沖縄県委員長・衆院議員の赤嶺政賢氏は「これは沖縄の歴史の中でも今までになかった天王山の闘いですから、我々が保守を押すことにためらいはあるのかということ自身で言えば、ためらいはない。基地をつくらせないためだったら全力を挙げる」と明言している。
8/12付しんぶん赤旗「沖縄県知事選 翁長氏で新基地断念を 県政野党が出馬要請 一致点は『建白書』」の中でも、赤嶺氏は「(保守・革新の)立場の違いを超え、私たちを結び付けているのは、普天間基地の閉鎖・撤去、県内移設断念を求めて昨年1月に政府に提出した『建白書』です。これを一貫して掲げる翁長市長に敬意を表するとともに、私たちも辺野古新基地断念を実現するまで一緒にたたかう」と述べている。
折しも、安倍政権はなんとしてでも辺野古の海に、軍港を備えた新しい米軍基地を造るために物量、人員を無制限に動員して辺野古崎周辺の埋め立て作業を既成事実として突貫作業で強行し、さらには海上自衛隊の掃海艇「ぶんご」まで、国内初の治安維持活動として投入されている。
琉球新報8/8付社説は「海自艦出動 武力で県民恫喝する野蛮」と題して「中世の専制君主国と見まがうありようだ。何という野蛮な政府か。移設反対派の市民を武力で恫喝する狙いであるのは明らかだ。政府は沖縄を、軍が市民を威嚇してよい地域と見なすということだ。そんなことを実行してしまえば政府と沖縄が抜き差しならぬ対決局面に入ることを、安倍政権は知るべきだ。それに対し、移設反対の住民は暴動どころか破壊活動一つ行っていない。武器一つ持たず、非暴力に徹している人々だ。その“丸腰”の市民に軍艦を差し向けるという。市民を、交戦中の敵国の軍のように見なすということだ。」と厳しく弾劾している。
統一戦線を、これまでの共産党のように、政党政派のセクト主義的利害を優先させるような選挙闘争オンリーに収斂させてはならない。直面する最重要課題において、その達成のためにあらゆる市民運動・大衆運動・現地闘争を統一して闘い、セクト主義を排した一貫した姿勢こそが要請されている、と言えよう。
(生駒 敬)
【出典】 アサート No.441 2014年8月23日