【コラム】ひとりごと–消費増税、社会保障に回らず–

【コラム】ひとりごと–消費増税、社会保障に回らず–

〇安倍政権は、来年4月から消費税を3%引き上げ、8%とすることを表明した。すでに、民主党政権時代、3党合意によって消費税の引き上げは法律化されていたが、引き上げの判断は、経済情勢等を勘案し、時期については時の政権が決定することとなっていた。〇来年4月から3%引き上げとする場合、準備期間を半年として、現政権は10月にその判断を行うとの意思表明を行ってきた。〇9月に発表された4-6月期の実質国内総生産(GDP)は前期比年率換算で3.8%増に上方修正され、消費税増税によるGDPのマイナスを吸収できると判断したと伝えられている。〇確かに、経済指標は経済の好転を示してはいるが、それは賃金や社会保障の拡充等による、国民の安心感とは繋がっていない。財政再建のための消費税増税に理解を示す世論がある一方で、増税による生活不安を心配する声も少なくない。〇円安や株価の上昇で、富裕層には余裕が出てきているかもしれないが、非正規労働者が全体の4割に届こうとしている就労環境では、不安が先に立つのは当然であろう。〇さらに、増税による景気後退リスクに対して、5兆円の経済対策を行うと安倍首相は表明した。それも、復興特別法人税の前倒し廃止や、設備投資への減税など、企業向けが4兆円というから、国民生活に目が向いていない内容であろう。〇住民税非課税世帯に一人1万円の給付金も含まれているというが、バランスが悪い。〇綱渡りのアベノミクスだが、2年間で2%の物価上昇をめざせば、2年後には物価で2%、消費税で3%、さらに2016年10月から5%の増税ということになれば、国民の負担は増えるばかりである。加えて、経済が下降を始めれば、これで安倍政権の命運も尽きるかもしれないが。〇国民負担ということでは、2015年4月から介護保険負担がさらに増える。〇一定の所得がある高齢者には、現行の1割負担を2割するという案が出ている。さらに、生活保護基準が8月から見直され、3年かけて引下げの予定である。〇年金も、この秋から年金スライド修正ということで、順次額が引下げられることが決まっている。〇国民健康保険も、現在の市町村から都道府県が保険者となる制度改革が準備されており、これまで自治体が繰り入れてきた部分がなくなり、全体的に保険料は値上がりすると言われている。〇このように、消費税増税によっても、その税源が社会保障に廻るのかどうか、はなはだ疑問という状況である。〇与党で衆参過半数を背景に、やりたい放題が始まっているのである。〇ここでは、詳しく展開できないが、「経済特区」の中に、解雇し放題の特区を画策したり、派遣労働の3年期限の撤廃を持ち出すなど、不安定労働、非正規労働を拡大しようとしている。〇安倍政権になってもうすぐ1年になるが、一層批判を強める必要があろう。(2013-10-20佐野)

【出典】 アサート No.431 2013年10月26日

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