【投稿】マスコミが煽る「第三極論」の抬頭
<ふがいない民主・自民と、「第三極」の抬頭>
11月16日野田首相は、年末解散を断行し総選挙に突入した。しかし、民主党政権の存続の展望は限りなくゼロであろう。国民の大半が反対した消費税増税を、密室の三党合意で強行したが、増税とセットの「税と社会保障の一体改革」は、言葉は踊れども、姿は見えてこないし、国民も実感することすらできない。尖閣問題では国有化を強行し、民主党政権最初の首相である鳩山の「東アジア共同体」構想とは、全く逆の「混迷と対立」の東アジアにしてしまった。党内では、消費増税に反対した小沢グループが党を離れ、解散後も、維新や自民の傘の下を求めて、10名以上が離党し、衆議院での過半数は消えた。これらの輩の下心は批判されるべきだが、ここまで求心力を失えば、選挙結果は明らかであろう。政権はおろか、政党としての存続も危うい状況と言われている。野田は解散にあたって「比較第一党をめざす」と明言したが、それもまた実現不可能と言わねばなるまい。
一方、自民党もまた、世襲候補が跋扈し、総裁選挙に明らかなように、派閥力学が依然として党を支配している。民主の低迷の中、自民回帰の流れがあるので、後景に退いているとは言え、自民党が、政権交代から何も学んでいないことは明らかであろう。当然、過半数を制して、単独政権をめざすところだが、自公でも過半数になるかどうか、未だ不透明である。
11月19日の毎日新聞は、選挙を焦点にした世論調査結果を報道しているが、政党支持率では、自民17%、民主11%、維新13%で、支持政党なしが36%。また読売新聞は、石原・橋下合流後の調査で、維新への支持が合流前から3分の2に激減していると報道し、「政策の不一致を顧みず、合流を最優先した判断が批判を浴びている」と断じている。いずれにしても、政治への不信が、一層強まる中での総選挙になろうとしているのである。
<原発問題は「小異」だった>
そこで、民主・自民ネタでは面白味がないと、マスコミは「第三極」を追いかけ、非常に危険な動きをしていることを見逃すわけにはいかないだろう。
特に、突然の東京都知事辞任から「石原新党」結成、そしてその直後には、「小異を捨てて大同につく」として、橋下維新の会に吸収される過程では、何らの批判精神のかけらもないマスコミ報道が目立ち、「石原ー橋下」に媚びる姿勢が目だったのではないか。
「小異を捨てた」とする8項目の合意文書では、外交政策もなく、政党として基本的な政策は抜け落ち、TPP政問題も、「交渉には参加するが、国益に沿わなければ反対」と、曖昧な内容である。税制も消費税を11%、地方交付税制度の改革にのみ触れているだけで、これで「合意」なら、政党などいらない。話題の石原と橋下が組む、それがすべての「第三極」でないのか。さらに、東日本大震災についても、何も述べられていない。震災復興の課題など思いも及ばない輩なのであろう。
合意文書「強くてしたたかな日本をつくる」とは、以下のような内容である。
(1)中央集権体制の打破
地方交付税廃止=地財制度廃止、地方共有税制度(新たな財政調整制度)の創設、消費税の地方税化、消費税11%を目安(5%固定財源、6%地方共有税)
(2)道州制実現に向けて協議を始める
(3)中小・零細企業対策を中心に経済を活性化する
(4)社会保障財源は、地方交付税の廃止分+保険料の適正化と給付水準の見直し+所得税捕捉+資産課税で立て直し
(5)自由貿易圏に賛同しTPP交渉に参加するが、協議の結果国益に沿わなければ反対。なお農業の競争力強化策を実行する
(6)新しいエネルギー需給体制の構築
(7)外交 尖閣は、中国に国際司法裁判所への提訴を促す。提訴されれば応訴する
(8)政党も議員も企業・団体献金の禁止 個人献金制度を拡充
最大の問題は、原発政策であろう。維新は「脱原発依存」政策ではなかったのか。合意文書では、原発ゼロは見事に抜け落ち、安全基準のルール化のみが示されるのみ。まさに「原発問題」は「小異」だったのである。原発推進の「石原新党」と「脱原発的」維新が、小異を捨てた。これを野合と言うのである。
「石原新党」と名古屋市長河村が代表の「減税日本」の合流も、数日で破棄され、とにかく、橋下だのみで石原が屈服した、橋下も「政策の一致が必要」は単なるポーズであって、看板としての全国的な知名度から石原を利用する。「第三極」の実態とは、何なのか。徹底的に暴露することが必要であろう。
<「第三極」の本質は何か>
それでは、彼らの「大同」とは何かである。日米安保擁護の従属路線、新自由主義(自己責任論・格差容認)、憲法改正(9条だけに止まらない)、などの自民党よりも更に右派路線であろう。「核兵器も持ち込めばいい」「中国・韓国に侮られるな」という排外主義、そして軍事的拡大路線。芯の部分では、これらで一致していると考えられる。だから、「小異が捨てられる」のであろう。みんなの党、減税日本もこれら右派路線を共有している。これが「第三極」の本質であろう。
11月17日、維新は第一次公認を発表したが、47名であり目標の80名に届かなかった。19日には、「石原新党」組9名を第2次公認とし、公認候補は56名となった。大阪は12名公認だが、地方組織(県)はまだ3つしかない。300選挙区に候補者を立てるという方針も、241区に引き下げた。すでに公示まで2週間である。マスコミの異常な報道体制の中、「第三極」旋風は果たして起こるのか。こうした極右路線を徹底的に批判し、脱原発・消費税増税反対・TPP反対の勢力を擁護、支持していくことこそ求められている。(2012-11-19佐野)
【出典】 アサート No.420 2012年11月24日