【投稿】大阪府「日の丸・君が代条例」と「橋下主義(ハシズム)」
橋下徹大阪府知事と大阪維新の会は、6月、学校での「日の丸」の常時掲揚と「君が代」斉唱時の教職員の起立と斉唱を義務化する条例を強行に成立させた。さらに、9月府議会には、複数回の「不起立」を行った教職員を免職にする「ルール」を条例化すると公言している。
なぜ今、「君が代・愛国心」を強制する「条例」成立を強行しようとするのか。橋下知事は、政治と教育を一体に語り「国際社会は食うか食われるか、競争は絶対に必要だ」「子どもにはしっかり競争してもらう」と主張するなど、教育に政治的なねらいを露骨に持ち込もうとしている。学力テスト競争、エリート育成のための進学指導特色校の推進など、競争と選別の教育を推進している。さらに、教育委員会つぶしと教育の「民営化」を推進し、公教育への責任を放棄している。
しかし、教育にいっそうの競争と自己責任を持ち込む、新自由主義「改革」は、知事の思惑通りには進んでいない。学力テスト競争のおしつけには多くの教育関係者から反対の声が出され、テスト結果の開示には小中学校校長の9割以上が批判、超エリート校の設置に対しても府立高校校長の7割が反対した。この間橋下知事が強硬にすすめてきた「大阪の教育破壊」に対し、教育現場では校長や教育委員会も含めて、批判と反対の声が広がっている。
橋下知事はこうした状況を一気に打開するため、教職員と教育委員会を服従させようとしている。「政治に必要なのは独裁」と語る知事。
「君が代起立斉唱条例に関して、毎日新聞が記者の目と言う記事で『教育現場に強制はなじまない』との主張をしていました。・・敢えて言います。教育とは2万%、強制です」(6月12日橋下ツイッター)
戦前の教育は、「陛下の御為、皇国の為に死するを名誉」と教え、国民を戦争へとかりたて、「国家有用の皇国民の錬成」を目的に、内心の自由を侵害し愛国心を強制した。「国家のための教育」へ、学問の自由は否定され国策に役立つものだけが真理とされ、人間を国家のための手段とし戦争の道具とした。戦後は、この過ちを二度と繰り返さないため、個人の尊厳を大切にし、教育の目的を「人格の完成」「真理と平和を希求する人間の育成」と定めて、命令・強制の関係を排除した。
中東での民衆革命は、独裁者を倒し独裁政治を終焉させた。そうした世界の流れに全く逆行しているのが、「橋下主義(ハシズム)」。まさにファシズムである。「選挙によって支持を得た=民意」として、「選ばれた首長」に絶対服従するのが公務員の責務だと強弁する橋下徹。民主主義の理念を「自己流」に解釈し、独裁政治を正当化しようとする橋下徹が、わたしには、第一次大戦後のドイツ国内の混乱に乗じて、「社会民族主義」を標榜しつつ独裁体制を築き国民を破滅の道に引きずりこんで行ったヒットラーに重なって見える。
今秋、大阪の教育現場はこれまで以上の厳しさが予想されるが、わたしは、独裁者に奉仕する教職員の道を拒否し、これまでと同様、格差社会の下で懸命に生きている子どもたちに寄り添い、地域・保護者の願いに応えられる教職員として生きていく決意である。
(大阪府教職員 田中雅恵)
【出典】 アサート No.406 2011年9月24日