【投稿】「橋下・維新」の野望を打ち砕こう!
今年4月の統一地方選挙、大阪府内は橋下知事率いる「大阪維新の会」が、圧倒的な強さを見せて席捲した。府議会で過半数を獲得、大阪市会でも議席を倍増した。
そして、この秋、任期満了に伴う大阪市長選挙が11月27日に予定されており、橋下知事は、自ら知事を辞任して(知事任期は、来年2月)、大阪市長選挙立候補に意欲を見せており、「大阪秋の陣」の幕は切って落とされている。
<君が代条例を可決>
過半数の力を持って、大阪維新の会議員団は、何をしたのか。6月には、他会派(自民・公明・民主・共産)の反対を押し切って、「君が代条例」を強行採決した。公共・教育施設での日の丸掲揚と公立校の教職員に君が代の起立斉唱を義務づけるという内容であり、全国初であるらしい。これが教育現場にとって、今もっとも必要な施策であると考える維新の会の面々の「教育観」を疑うしかないわけだが、起立斉唱(職務命令)に従わない教員には処分を行うという、次の「条例案」につながっていく。
<免職含む罰則規定盛り込む服務規律条例の制定>
次の府議会・市議会に維新の会が議員提案しようとしているのが、「職員基本条例案」と「教育基本条例案」である。
橋下は、「公務員が身分保障されていることに、市民の反発は強い」として、職務命令に3回違反した職員は免職などの内容が含まれ、市民の理解は得られると発言している。
教育基本条例案の主な内容は、大阪府立、大阪、堺両市立校の校長を全員公募し、予算権や採用権を与える。正副校長を条例制定後5年以内に任期付き採用に切り替える。知事らが、教育委員会と協議のうえ「目標」を設定、教育委員が実現の責務を果たさない場合、議会の同意で罷免(ひめん)できる。入学者数が3年連続で定員を下回った府立高は、改善の見込みがなければ統廃合する。同じ職務命令に3回違反した職員は免職とする、などの内容になると報道されている。自治体職員への「職員基本条例案」も、同様の内容になるわけだが、8月22日には正式発表される予定である。
<多数を頼りの思想なき迎合>
橋下は、「普通に仕事をしている職員にはほとんど影響はない。本当にだめな、ごく少数職員に適応されるだけ」と説明・弁解しているが、二つの面で批判する必要がある。
まず、教員を対象とした条例だが、筆者の立場は、日の丸・君が代反対の立場だから、我が子の入学式でも起立も斉唱もしなかった。その上での話だが、ここまで教育に介入する必要があるのか、という点である。今求められる教員の質や力は何か、という点がすっぽり抜け落ち、君が代問題だけを焦点化している。職場に規律が必要だという論点から、その点だけで、教員を排除することを可能にすることになる。職務命令に3回従わなかったら免職、というのも、わかりやすいように映るが、そんな簡単なことか。
民間のように余剰人員を解雇できる、それを公務員にも適用するんだ、とこれも聞こえがいいが、どこの自治体も退職者の完全補充をしている話は聞いたことがない。非正規労働者が職場に溢れているのが現実である。
<宙に浮いた「大阪都構想」>
統一地方選挙の際の維新の会のメインテーマは、「大阪都構想」だった。具体案もプログラムも何もない代物だった。今になっても、選挙の時以上の内容は明らかにされていない。おそらくできないのだろう。吹田や守口で市長選挙にも手をだした維新の会だが、当選した維新派市長は、大阪都構想について消極的である。基礎自治体が、どうして大阪府(都)に、拠出しなければならないのか。関空はじめ大阪府のプロジェクトはほとんどが失敗ではなかったのか。大阪市を批判できる立場ではない。
こうして宙に浮いたままの大阪都構想だけでは、失速しかねない「維新の風」を、またもや「公務員批判」で乗り切ろうとしている、過半数にあぐらをかいた「思いつき政策」ではないかと思う。
<現在、神経戦の大阪市長選挙>
大阪市長・大阪府知事の「ダブル選挙」は、3ヵ月後に迫ってきた。現職の平松大阪市長と橋下知事は選挙を意識して、事ある毎に対抗的に対応し、前哨戦の様相である。関西電力の筆頭株主である大阪市が、節電の必要を呼びかければ、橋下は節電の必要はない(後に節電に修正)、平松市長が区毎の区政集会を開催すれば、橋下・維新陣営も同様の区民会議を開催するといった具合である。
旧WTCを大阪府が買い取り、「大阪都」庁舎・大阪府庁舎にすると橋下は考えていたが、先の東日本大震災で見事に被災し、修復費用が多額に上った他、大阪府庁舎を旧WTCに移転する案も、防災の専門家会議で否定されるなど、橋下知事の「思いつき施策」は、中々日の目を見ていない。大阪市が役人天国で赤字を垂れ流しているとの批判も、大阪府の方が一向に赤字が減らず、将来負担比率では大阪市の方が改善が見られる事実など、具体論では、橋下の大阪都構想には、疑問符が付く内容であることは、先に述べた通りである。
また、本当に大阪市長に転進するのか、転進すれば、誰が知事候補になるのか。また、知事を辞任した場合、反大阪都構想陣営が誰を知事候補に立てるのか、いずれも現時点では明らかになっておらず、神経戦の様相である。
統一地方選挙後も、橋下・維新の会の勢いは、まだまだ強いのは事実である。残り3ヶ月を如何に闘うか。橋下・維新の会の「野望」を挫くための努力が求められている。(2011-08-22佐野)
【出典】 アサート No.405 2011年8月27日