【投稿】新型転換炉「ふげん」—補助建屋の強度不足が明らかにする非破壊検査の曖昧さ—     

【投稿】新型転換炉「ふげん」—補助建屋の強度不足が明らかにする非破壊検査の曖昧さ—
                               福井 杉本達也

1 「ふげん」補助建屋が倒壊のおそれ
 2月10日付け毎日新聞の1面トップは「ふげん原子炉補助建屋コンクリ強度不足・掘削調査6カ所中5カ所」との見出しが踊った。最も強度が低いところでは、1mm2あたり、22.06N(ニュートン=0.10kgf)の設計基準値に対し10.6Nと50%以下であることが明らかとなった。コンクリート工学の専門家・小林一輔氏著の『マンション』によると、1995年の阪神淡路大震災では1階部分がつぶれた6階建てマンションの天井大梁の設計強度は180kgf/cm2・小梁の設計強度は210kgf/cm2に対し、実際は124kgf/cm2(12.4N/mm2)しかなかった。今回のふげんの測定結果は、こうした過去の地震で倒壊した建物の実測値をさらに大幅に下回るものであり、ゆゆしき事態である。
 ふげんは元々、旧動燃が新型転換炉の原型炉として1970年から敦賀市において建設を進め、78年に初臨界に達した炉である。出力は16万5千キロワットで、天然ウランだけではなくプルトニュウムの混合酸化物のMOX燃料も使えるなど、軽水炉と高速増殖炉の中間的な位置づけの炉であったが、位置づけがあいまいであったため、福井県の「15基体制の維持」という名目の下、日本原電敦賀3・4号機の増設了承と引き替えに廃炉が決定し、2003年より運転が停止している。

2 コンクリートの非破壊検査はあてにならない
 日本原子力研究開発機構では試料の圧縮による破壊検査の直前にハンマーによる非破壊検査を行っている。原子力機構によると非破壊検査では全ての地点で設計基準を満たしていたとし、破壊検査と非破壊検査は相関関係にあるのが常識で「本当に劣化しているのか信じがたい。データの信頼性について検査方法や試料の抜き方を確認している」(2007.2.11:福井)という。ここで、原子力機構の設計強度への無理解が馬脚を現している。『図解 コンクリート辞典』(小林一輔他)によると、ハンマーによる「反発硬度法は試験方法が簡便であり、コンクリートの強度推定法として最も一般的に使用されている。ただし、測定するのはコンクリートの表面硬度であり、コンクリート強度との関連性は原理的にはない」のである。これは、コンクリート構造物を扱う土木・建築の技術者なら、“常識中の常識”である。完成した構造物に一応はシュミットハンマーをあてて現場試験は行うが、それはあくまでも目安である。そんなところで強度が無かったら、それこそ、その構造物は全部作り直せということになる。だからこそ、わざわざ現場で、受け入れた生コンをサンプリングして材齢7日強度と28日強度のコア(供試体)の破壊検査を行っているのである。
 
3 技術の堕落を地で行く保安院
 保安院原子力発電検査課の「国内で運転開始30年を超えた原発12基については、すべてコンクリートを採取して強度を測り、問題ないことを確かめている。測定結果は非破壊検査の結果ともほぼ一致し、ふげんの測定結果が一般の原発に影響をすることは考えていない」(2.10:毎日)というコメントに至っては、これが技術者の言葉かと思うと情けなくて涙が出る。コンクリートの場合、表面や表面から数十cmのところでは強度があっても中は『ブラックボックス』である。生コンの投入の仕方も異なるので、同じ建物でも場所によっては強度が異なるのが普通である。保安院は稼働している厚さ1mを超すような原子炉建屋のコンクリート構造物に何カ所も穴を空けてコアを採取したのか。そのような話は聞いたことがない。中電浜岡1~3号機原子炉建屋で、号機ごとにわずか各コア1体づつを(04.12.10「浜岡原子力発電所の建物・構築物のアルカリ骨材反応に対する健全性の評価について」、東京電力福島第一・福島第二発電所で原子炉建屋からも、各コア1体づつの破壊検査やっているだけではないのか(しかも、福島第一2号炉原子炉建屋では破壊検査をしていない。05.2.15「アルカリ骨材反応に対する健全性の評価について」)。佐野文之氏によると、建物の健全性を判断する場合、規模の小さな建物でも最低3カ所はコアを採取すべきとしている(「耐震診断のフローと補強事例」『建築知識』1995)。原子炉建屋のような巨大な建築物で、たった1体のコア採取で何がわかるというのか。うそをつくのも甚だしい。そもそも、「測定結果は非破壊検査の結果ともほぼ一致」すること自体がおかしいのである。東京都建築材料検査所や建築学会による反発強度法による強度の推定値と実際のコアの強度の比較では「相当にずれている」(上記:辞典)のが常識なのである。
 
4 建設を急ぐあまりシャブコンを大量投入?
 では、今回の強度不足の原因は何か。コンクリートはセメントと水と骨材(砂・砂利・砕石)によってつくられる。「水を多く入れれば入れるほど、セメントとの化学反応によって生成される結晶が粗大で疎な状態になるとともに、空隙の多い脆弱な組織のコンクリートになる」(『コンクリートが危ない』小林一輔著)のである。学説では水セメント比が0.5から0.7になった場合、圧縮強度は2/3に低下してしまう。今回のふげんのデータはこうした学説に合致する。ようするに、「シャブコン」といわれる、水を基準以上に含んだ生コンを打ち込んだのではないかという疑問である。生コン車で運ばれた生コンは、現場でコンクリート圧送車により、鉄筋が組み込まれた型枠に流し込まれる。この時、不法に水が余計に加えられると生コンがやわらかくて作業がやりやすいのである。コンクリートの流動性を高めることが型枠内での作業効率を高めるのである(上記:『コンクリートが危ない』)。むろん、その直前にコアは採取されるが、その後に水を加えるのであるから、コアをいくら28日後に破壊試験しても実際の強度が異なるのは当たり前であるし、これが、日常的に行われているからこそ、コンクリートの現場打ちの時刻(朝の8時半とか午後1時とか)には必ず発注者側の責任者が立ち会うというのが、これまた“常識中の常識”なのである。
 
5 オイルショックの時期にあわてて建設
 小林氏は東京オリンピックを境目に1964年以前のコンクリート構造物は信頼性が置けるが、それ以降の構造物は信頼性が置けないとしている。高度成長期に、ともかく大量に安く早く完成させようとした構造物にその傾向が強いと指摘している。ふげんは大手ゼネコンの鹿島が建屋工事のほとんどを請け負い、1972年から1974年にかけて主要な建物が建設されている。その時期はオイルショックの時期と重なる。当時は物価が高騰する時期であり、土木の資材単価も短期間に2倍、3倍と高騰していた時期である。ゼネコンとしては1日も早く工事を完成させたかったに違いない。
 
6 原子炉建屋の健全性評価は破綻
 今回のサンプリング調査で、地下2階①地点・壁厚400ミリの内壁調査では、サンプル数9本の破壊検査では強度16.9~19.4N/mm2、地下1階③地点・壁厚400ミリでは、サンプル数10本の破壊検査で、強度10.6~14.0N/mm2、地上3階⑤地点・壁厚300ミリで、サンプル数4本の破壊検査で、強度13.3~16.5N/mm2と全て設計基準値以下であったが、事前の非破壊検査では全て基準値以上のそれぞれ、34.1~36.6N/mm2、27.7~37.0N/mm2、26.5~29.0N/mm2となっていた。いかに非破壊検査が当てにならないかということを、今回の破壊検査の結果は如実に証明している。にもかかわらず、保安院の担当者は13日の福井県における高経年化調査研究会の場で「非破壊検査は誤差がつきものだが、原発の強度確認には同検査が極めて有効と考える」と強弁している(2.14:福井)。建物に穴を空けるということで通常はなかなか取りにくい手法であるが、破壊検査の結果こそが全てである。でなければ、なぜ、全国全ての工事現場で、生コンの投入直前に7日強度のコアと28日強度のコアをわざわざ採取して、生コン協同組合などが設立した試験センターで地道に破壊検査をする必要があるのか。試験員は毎日、供試体の破壊検査を何十本、何百本とやっているのである。それを全て無駄とでも言うのか。保安院は全国の土木・建築の学者や技術者に笑われるだけである。黒を白といいくるめようとすることはいいかげんにやめるべきである。
 
7 補助建屋の早急な補強と原子炉建屋の対策を
 運転は停止しているというものの、MOX燃料は今も発熱しており、原子炉冷却系・補助系等の設備を収納する補助建屋が倒壊すれば原子炉本体の安全性に重大な影響を及ぼすことは明らかである(2012年度までに使用済み燃料を搬出する計画となっている)。低強度コンクリートについては、耐震診断基準ではコンクリート強度が13.5N/mm2以下では適用できないとされており、地下1階③地点の10.6N/mm2という強度は、このような強度の低いコンクリート建築物を耐震診断した場合,保有水平耐力が小さいことから,耐震補強を施しても耐力の向上があまり期待が持てないため,耐震診断の結果は『解体』という結論しかない状態なのである。しかし、補助系統とはいえいきなり解体することはできない。もう1点は、今回は廃炉の準備作業の一環として、放射線管理区域外の建屋のコンクリート強度を破壊検査により実測したものであり、原子炉建屋についてはどのような状態にあるかはわからないということである。もしも、同一ゼネコンによって、オイルショックの同時期に建てられた原子炉建屋が同様の強度不足にあるとするならば、膨大な放射性物質を抱えた建物の倒壊が予想される。早急に対策を講じなければならない。

 【出典】 アサート No.351 2007年2月24日

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