【コラム】 ひとりごと–梅原猛氏の「神殺しの日本」について–

【コラム】 ひとりごと–梅原猛氏の「神殺しの日本」について–

〇安倍政権は、構造改革重視の小泉路線とは違い、経済重視よりも政治路線を強化しており、その中心が憲法改正であり、教育基本法改正である。〇マスコミ全般も右寄り路線と評価はしているが、的確な批判はない。最近出版された梅原猛氏の「神殺しの日本」では、小泉の靖国参拝への批判がしっかりと展開されている。〇梅原氏は、憲法改正も、教育基本法改正も、その中で重視されている愛国心が意味するものは、あくまでも明治以降の国家主義、国家神道を懐かしむ方向でしかないと指摘されている。〇1984年中曽根政権下において、藤並官房長官の私的諮問機関として「靖国懇」が設置され、梅原氏も参加している。○「靖国懇」の中で梅原氏は首相の靖国参拝に反対を表明するとともに、「記紀に示される伝統的神道は、味方よりも味方に滅ぼされた敵を手厚く祀るが、靖国神道は自国の犠牲者のみを祀り、敵を祀ろうとしない。欧米の国家主義に影響され、伝統を逸脱した新しい国家神道である」と意見表明をされた。○アサート338号において、吉村励先生が、廃仏毀釈によって天皇教が成立したと指摘され、廃仏毀釈をもっと研究すべきだと言われたことも大いに関係しているようだ。○廃仏毀釈は、八百万の神を殺し、神社を壊し、仏も排除し、「天皇神」のみを唯一の神として国家の中心とするために明治政府が富国強兵の旗の下に強行したものである。○侵略国家日本の精神的支柱を意図的に作り出したものである。明治国家神道が基礎となり、日清・日露戦争から中国侵略、太平洋戦争と続く侵略国家日本が出来上がったのである。○安倍政権が、憲法改正でも教育基本法改正でも目指しているのは、明治の国家神道であり、国を守り(他国を攻め)、伝統(侵略の)守り、他国に対抗できる国民的統一を目指しているのである。誤れる基盤の下では、再び誤れる道が開かれる。○占領憲法反対とか、個人主義よりも愛国心などの主張は、何も新しいものではなく、明治以降の国家主義的社会への回帰でしかない。○「神殺しの日本」を読んでから、再び梅原本を読み返している私だが、その宗教論においても、人間中心主義のキリスト教より、人間を含む自然中心の仏教を再評価する必要があるのかなと思う毎日である。○まず、教育基本法に対する攻撃に対して、反撃していこう。(佐野秀夫)

【出典】 アサート No.349 2006年12月16日

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