【投稿】現行の「教育基本法」を活かそう!
「教育基本法改定」の採決が来週末までには行なわれそう、という大変な事態を迎えている。安倍政権の最重要法案として、この臨時国会で何としても成立させようとしている。
「何としても」という至上命令に、内閣府や文科省は、政府主催の教育改革タウンミーティング(TM)で「やらせ質問」を仕掛けた。「教育基本法改正のため『やらせ質問』をやらせたことが事実なら、教育基本法改正案は直ちに取り下げるべきである。
『やらせ質問』まで行って教育基本法改正を実現しようとする、いやしい勢力に教育を語る資格はない。国会は『やらせ質問の疑惑』が晴れるまでは教育基本法改正の議論をやめるべきだ。事は重大だ。この事件に内閣府が関与していたとすれば、内閣府の責任者である安倍晋三首相と塩崎恭久内閣官房長官は責任を免れることはできない。
この問題をうやむやにして教育基本法改正案を採決することは許されない。安倍首相と塩崎官房長官は他人事のような対応をしているが、こんなことが許されていいはずはない。」 <2006.11.6 『森田実の言わねばならぬ』[468]> 全く森田さんの言う通り!
「いじめ自殺」の連続と「高校単位未履修問題」は底辺を広げており、野党側は一致して文部科学委員会の開催を要求しているが、与党は応じる気配はない。安倍首相をはじめとする「教基法改悪→憲法改悪」を目論む勢力は、「改正ありき」で事を急いている。
現在生起しているこうした諸問題に誠実に向き合うことなくして解決はあり得ないし、「自死」の道を選ばざるを得なかった生徒たちの遺志を生かすことはできない。
安倍首相は「教育再生会議」を立ち上げ、そのメンバーとして各界の著名人を並べたが、教育労働者の声を代弁し得る人は皆無である。「やらせ質問」に象徴される全体主義的傾向が進むと、「いじめ」はなくなるどころかますます陰湿化する可能性が高い。現行の教育基本法が謳う「個人の尊厳」を学校現場で徹底させ、人権教育を「再生」強化していくことこそが求められている。
「男女共学の趣旨が広く浸透し、性別による制度的な教育機会の差異もなくなっている」という表向きの理由で、「改正案」から「男女共学」が削除されている。
しかしながら、現行法の第5条を削除して、新たに第10条として「家庭教育」の条項を設けたことに、今回の「改正」の意図が透けて見え、より男女の性別役割を強調する内容となっている。これは、「男女平等」「男女共同参画」「男女共生」へと進んできた歩みを、大きく逆戻りさせることになり、世界の流れにも逆行している。
「家庭教育」にまで踏み込むところに、「改正案」の国家主義が見え隠れするが、「我が国と郷土を愛する心」強要に至っては、大変問題だ。戦前、国家主義教育の下「お国のために」と強要され死地に赴いて行った多くの若者たち。同じ過ちを繰り返してはならない。
問題だらけの「改正案」の成立を阻み、現行の「教育基本法」を現場で活かしていきたいものだ。 (教育労働者 KAWACHI)
【出典】 アサート No.348 2006年11月18日