【投稿】在日外国人との共生にむけて

【投稿】在日外国人との共生にむけて
 
 10月下旬フランスで発生した移民系青少年による街頭実力行動は、仏政府の強権発動で押さえ込まれたが、依然として予断を許さない状況にある。フランスは19世紀から積極的に移民を受け入れてきたが、第2次世界大戦後は、モロッコ、チュニジアなど北アフリカを中心とした旧植民地出身者を移民労働者として多数受け入れている。フランスで生まれたその子孫はほぼ自動的に仏国籍を付与され、「社会のクズ」発言のサルコジ内相に代表される欧州系、さらにインドシナ諸国を中心とするアジア系を含めて、仏国民の4人に1人は外国人を祖先に持っている。
 しかし、アフリカ系、アラブ系の多くは制度的、表面的には仏国民となったものの、実際は肌の色、宗教などで「よそ者」扱いされているのが実状である。そして不十分な教育と就職差別で失業率はフランス全体の10%の2~3倍にものぼり、これが今回の闘争の直接的な背景となっている。「フランスは出身、人種または宗教の区別なしにすべての市民の平等を保障する」とした仏憲法の理念が根底から揺らぐ事態となっているのである。
 
<その場しのぎの外国人政策>
 このフランスでさえ様々な問題をかかえているのに、同様に旧植民地出身者が存在し、近年外国人労働者も急増している日本の外国人政策はどうだろうか。旧植民地出身者に対する処遇については、韓国・朝鮮、台湾出身者とその子孫に対して「特別永住」という安定した在留資格を1991年ようやく新設したものの、参政権は依然として確立されていない。こうしたなか、日本国籍を取得する在日韓国・朝鮮人は、年々増加しており、特別永住者は1996年末の54,9万人から2003年末の47,2万人へと大幅に減っている。この背景には在日自身の依拠するアイデンテティの変化と、帰化申請が認可されやすくなったことがあるが、日本政府としては特別永住者を「自然消滅」へ誘導していきたいのである。
外国人労働者については、原則として受け入れないとしているが、政府・法務省は安価な労働力を求める資本の要求で、「留学」「就学」など本来就労が出来ない在留資格を、「弾力的」に運用してきた経過がある。さらにブラジル、ペルーなど日本人を祖先に持つ日系人は、1990年の入管法改正により、日本での求職、就労、転職が自由となる「定住者」資格が付与され、自動車産業を中心として雇用が急増するようになった。
 しかし、こうした彌縫策とも言える措置は、オーバースティや身分を偽っての入国を激増させる結果となり、新たな社会問題を惹起している。日本に居住する外国人約210万人強のうちオーバースティは約1割強とみられており、不安定な条件下での就労と強制送還の恐怖によって、雇用主からの不当な処遇に対しても、抗議の声を上げにくい状況に置かれている。
 また政府は急激に進む高齢化と介護福祉業界からの要請により、フィリピンとの間でFTAを締結、フィリピンから看護師・介護士を受け入れることになった。一方で同国からの「興業ビザ」によるエンタティナーの受け入れは、一部は人身売買ではないかとの国際的批判を受け、今年大幅に制限された。さらに来年からは日本国内での雇用関係につても、暴力団の介在を排除するのどの措置がとられる予定である。

<「他文化強制」から「多文化共生」へ>
 このように外国人労働者は日本社会の都合で、安易に雇用されるうえ、社会から厳しい差別を受けている。先月広島市で発生した小学生殺害事件により、外国人に対する犯罪者視や入居差別は一層露骨なものとなるだろう。すでに以前から全国各地で外国人に対する入店拒否が相次いでいる。また入店を拒むことはなくても、店内で警備員が露骨に付きまとうなどの嫌がらせが発生している。また先頃大阪では在日韓国人弁護士が国籍を理由に入居差別を受けている。
 このように日本社会が、自らのニーズで外国人を労働させながら、共生を拒否し続ければどのような事態を招くかは、フランスが教えてくれている。フランスの移民政策の基本はこれまで「同化政策」であったが、それはフランスで産まれた者には義務も権利も平等に与え仏国民としていくという「同化」であり、日本政府の旧植民地出身者に対する「同化政策」とは全く違う。ましてや日本では、ニューカマーといわれる外国人労働者とその子ども達は、事実上放置状態である。
共生への動きは、問題意識を持った自治体、学校やNPOの取り組みに委ねられているのが実状であったが、こうした動きを受け、ようやく総務省や文部科学省といった政府レベルでも、多文化、国際理解という視点からの施策の検討が始まった。今後、少子高齢化と人口減により、外国人労働者はさらに増加する。日本経団連や連合は、特別な技能を持った労働者は受け入れるとするものの、単純労働者受け入れには慎重である。これは現場のニーズとは明らかなミスマッチであり、早晩見直しを求められるであろう。
 こうしたことから、早急に国レベルの外国人労働者受け入れのための、公正なルールを策定することが必要である。そして地域でも就労、教育、生活支援を軸とした取り組みを進め、在住外国人と共に生きる社会をめざさなければならない。
(大阪O)

 【出典】 アサート No.337 2005年12月17日

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