【投稿】05’都議選 民主35、前回比13増をどう評価するか

【投稿】05’都議選 民主35、前回比13増をどう評価するか
–自民5減の48、共産また後退–

2005年7月3日行われた都議会議員選挙は、投票者数4、435、435人、投票率は43.69%であった。都の人口は12、020、000(昼間人口14、695、300)有権者総数10、082、864人。首都東京の今後4年間の行方を争点に闘われ、自民48、民主35、公明23、共産13、生活・女性ネット3、社民0 その他5で、定数127の議席が確定した。
任期は4年、都内全体で42選挙区(多摩地区の一部と島部は複数の市町村をまとめて1つの選挙区として合区と呼んでいる)がある。その内訳は、23区、12市、合区7(島1を含む)となっている。

☆ 女性議員22人(定数127)ようやく17、3% まだまだもっと躍進を!
超高齢化社会を迎える中、介護や育児を主に担う女性にとって、厳しい時代になっている。パートタイム雇用など非正規職員が正規職員比率に逆転して増加するなど、労働市場での女性の労働条件は劣悪になっている。若年労働者、特に若い女性にとっては、その諸権利の劣悪さが出生率の低下となって現れる等、政治的な局面で解決すべき課題も多く、首都東京での女性議員の増加が期待された。
今回の女性当選議員は22人、前回19人、前々回13人と較べ過去最高で、17.3%と増加している。そのうち、民主は6人(前回3人)、生活・女性ネット3人(前回6人)と民主党と生活・女性ネットで支持者を食い合う結果となり実質増にならなかった。民主党が、生活・女性ネットまたは社民党から推薦を受けた17名は13名が当選しているのに比して、民主が生活・女性ネットを推薦した7人中当選は2人で、世田谷、杉並で新旧交代が果たせず議席を失い、結果として半減した事は、共闘の方法・戦略の再検討が必要であろう。
しかし選挙後、生活・女性ネットの大河原代表は「『働く、育てる 市民力』のスローガンで10名の候補者を立てたが2大政党化の流れの中で自民・民主の構図が注目され東京の未来を選択する選挙にならなかった、今後は議会で民主と協力して行く」と表明している。

☆ 35議席獲得の民主党は、第2党の座に躍進
石原都政の企業優先政策、福祉・医療分野での「弱者切り捨て政策」に見られる公的責任の放棄を憂い、その転換を望む人々が、自民党や石原支持の公明ではなく、民主党に一票を投じたと思われる。
前回都議選以降の東京での選挙得票率をみると、民主党は自民党を上回っていたにもかかわらず、議席増につながっていなかったが、今回は35議席と第2党を獲得している(表1)。
自民党と民主党の直接対決になった選挙区で、民主の得票率が自民をうわまったのは、今回14選挙区(前回1)で、武蔵野市の女性新人の45.2%が得票率が最も高く、小平市の新人42.9%と続いている。
また、民主党が複数の候補者を立てた選挙区でも、世田谷、江東、杉並区は2人ともに当選、1人当選は中野、北区であったが、「4人以上の複数選挙区では複数候補者を立てて闘った」(川端幹事長談)との攻めの戦略が効をそうしたと言える。
自民は、公明と競合しない選挙区で17人の推薦を受け、16人が当選している。これまでにもまして公明への政策的配慮が必要になるのではないか。
共産党は、国政の退潮傾向に対して得票率、議席数とも踏みとどまった感がある。また定数2の文京区、日野市で元職が返り咲いたことは特筆すべき事かもしれない。ただし新人は0、また大物現職引退の品川、太田、豊島、葛飾で議席を失っている。全選挙区に候補を立てているのは相変わらずだが、市議選・区議選に落選した人まで立てているのでは、選挙民は、本当に東京の政治をよくし、都民の事を考えているのか疑問に感じるのではないだろうか。前衛政党と呼ばれた頃はすでに幻の中か。5選挙区で共産党現有議席を民主党が奪っている。
社民党は、今回候補者を1人に絞っての立候補であったが、「2大政党」「低投票率」にのまれ、「市民派、9条の絆」を訴えた候補者は、自公への批判票を獲得出来ず、議席を獲得出来なかった。

(表1)党別得票率、議席数の推移

自民 民主 公明 共産 市民 社民
01都議選(前回) 36% 13.5% 15.0% 15.6% 2.8% 3.7%
03/11参議院比例 (53議席)33% (22議席)40% (23議席) (15議席)9.3% (6) (0)
04/7参議院比例 27% 39% 9.4%
05/7都議選(今回) 30.6%(48/3) 24.5%(35/6) 18.0%(23/2) 15.5%(13/6) 4.1%(3/3) 3.6%(0/0

* (48/3) の表記は、48議席中女性議員3人を表す。
* 社民の01年都議選3.7%は、05年と同じ世田谷選挙区の得票率で比較した
01年都議選では6選挙区に候補者を立てて、得票率は1.4%、議席数0であった。

☆ 投票率の長期低落傾向は
投票率43.9%と前回を6.0%下回り、前々回40.8%に次ぐ過去2番目の低さであった。しかし投票に行かないのは選挙民の怠惰だけが原因ではない。小選挙区制、並列制、非拘束名簿方式、惜敗率など、分かりにくく結果をみると政権党が有利となる工夫ばかりでは選挙民は呆れて選挙に行かなくなる。そして「何も変わらないから棄権する」また「政治への無関心」を標榜する層の増加は広く世界的に見られる。議員内閣制や選挙制度は、18世紀半のイギリスに産声を上げたもの。日本では1900年代に作られた選挙制度が、激動の時代をへて、現在の社会の構成員が納得でき、意見反映できるシステムとして有効なのか、根本から問い直す必要があるのではないだろうか。

☆ 昼間人口266万(H12年国勢調査)の意見を都政に反映する方法はないのか
東京は巨大な都市で、昼間仕事をする為に東京に通勤する勤労者や通学する学生がたくさんいる。このいわゆる昼間人口は、埼玉県、神奈川県から約100万人づつ、千葉県からも約80万人が流入していて、266万人にのぼるといわれている。この人たちは、東京の行政のあり方に深くかかわり、利益も不利益もうけ大いに関心があるにもかかわらず、今の選挙制度では都政にその意見、意思を反映することが出来ない。こんなところにも投票率が上がらない原因があると思われる。
東京都昼間人口 14,695,300
夜間人口 12,016,271
昼間人口の比率   122.3

☆ 都民に分かりやすい手法を
自民・公明の合計議席数は過半数を大きく上回っており勢力地図に大きな変化はない。都政運営はあまり変化しないと見るむきもある。しかし、石原知事の非民主的な議会運営に対する批判は、都議会「百条調査委員会」で発揮され、知事の懐刀といわれた浜渦副知事や出納長を更迭(7/22)させるまでに追い込んでいる。さらに都議会はこれで4年間の切符を手にした訳で、後2年しかない石原知事より優位に立つ。
これまでの強権的な都政運営への批判が民主党への期待として動いたわけで、民主党が「政権交代」を言うからには、既得権重視の自民党や石原流政治手法に対抗し、選挙戦を闘ったマニュフェストにそって、都民に分かりやすく、問題のある予算や条例についてはその修正や対案を提示するなど、その行方を都民に見せる事が大切である。
4日未明、川端幹事長は民主党に寄せられた声として「税金を無駄遣いしない都政」「都民が納得できる身じかな政治」「都民の目線で判断する勢力として育って欲しい」そんな都民の期待を感じたと述べている。裏切る事のないよう、今後の頑張りに期待したい。        (E.T東京都在住)

【出典】 アサート No.332 2005年7月23日

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