【投稿】問われる、課題の共有化—自治労第130回中央委員会を振り返って—
自治労第130回中央委員会が、1月27日~28日、東京にて開催された。
今回の中央委員会は、春闘方針とともに、地公3単産(全水道、都市交、自治労)との組織統合討議案、全国一般との組織統合討議案、島根県本部不祥事問題に端を発した島根県本部再生に向けた支援などが課題であった。
今中央委員会は、この間の長期不況と小泉政権の規制緩和路線を背景とした、社会全体の公務員バッシングとどうたたかうのか、といった危機意識を共有すべきであったが、一言で言ってしまえば、そのことの共有化といった観点からは、問題を残した中央委員会であった。
今自治体労働者をめぐっては、賃金抑制や民間委託化などはもとより、最近は、社会保険庁解体や、大阪市役所高額福利厚生費、カラ超勤問題での報道など、非常に扇動的な様相を示している。
連合白書によれば、構造的変化として低所得層の拡大、階層の分化と固定化が指摘されている。(平均年収450万円以下の世帯は92年と2002年では4.8%増大しており、また1世帯あたり貯蓄額は、ゼロの世帯が、94年の8.8%から2004年22.1%と上昇)
政府・自民党は、このような構造上の変化と、それにともなう国民感情の変化を巧みに利用し、公務員バッシングを助長している。それらが、端的に現れたのが、社会保険庁バッシングなどに良く使われた「税金ドロボー」の罵声である。無論個々の事例について、批判されるべき事例はあるにせよ、この間の事業や業務の検証など冷静な判断を抜きに、批判と罵声を浴びせる昨今の風潮は、いかがなものであろうか…。
このような、動きの中で自治労は、今中央委員会の中で毅然とし、また一方で柔軟性のある方針の確立が問われていた。しかしながら、大会発言を聞く限り、本来議論されるべきことが議論されずに、右から左に議案が可決されていった。そんな思いがしてならない。
会議2日目に方針部分に対する議論が行われたが、冒頭に発言したのは、次期定期大会開催県本部の発言であった。その内容は「夏の定期大会にたくさんの人が、ご当地へ来てください」という招致の発言であった。ここにすべてが現れていると思う。
自治労は、2001年秋に発覚した多額の使途不明金などの不祥事問題の反省を踏まえ、2002年1月に「自治労再生プログラム」を決定、履行してきた。例えば、定期大会についても、以前の大会は巡業のように地方都市で開催し、1日当り約5000人、事前会議も含め合計2万人を超える組合員が参加するイベントであり、参加者すべてとは言えないまでも「物見遊山」的な色彩もあり、見直しの声も強かった。その反省と財政事情から、当面東京大会としてみたものの、地方開催の声に押され、今夏から隔年で地方大会、東京大会の開催となったものである。
そこまでは、まだ理解したとしても、今期中央委員会「冒頭発言」が、たたかいの課題の共有化ではなく、前述のとおり定期大会のご案内とは、いったい何なのか?そのことに対し、違和感をどれだけの役員が感じたのだろうか?
また島根における不祥事問題、すなわち、島根県本部で4億8千万円の債務超過(簡単に言えば、使途不明金)が生じた問題で、地検が調査に入っているとの理由はあるにせよ、当該県本部も含め詳細が語られず、それに対し他の県本部からも徹底究明の声が上がらないのは、どういうことなのか?
さらには、大阪市役所高額福利厚生費、カラ超勤問題での発言が、当該も含めほとんど無いのはどういうことなのか?この問題で言えば、右肩上がりの時代では、大阪的に理解されてきた中身も、現在の情勢の中で外部から見れば、正直、違和感を覚えるというのが、オール自治労の役員感覚のように思われる。
今必要なのは公務員バッシングが強まる中で、この間の経過や交渉過程については、ある意味オープンにし、正当性を確認しながらも、柔軟性をしっかり持ち、方針を打ち出すことではないだろうか?
自治労は今後、団塊の世代の退職や市町村合併、民間委託化などの中で組合員が減少し、2015年には、現在より20%減、約78万人組合員体制になるというシュミレーションが出されている。全国一般との統合についての議論はまだまだ必要だが、公共民間の組織化を本気でやりきることには、誰も異論が無いであろう。公共サービスユニオンとして生き残るために、自治労再生プログラムの原点に帰り、私たちの運動や活動スタイルを今一度見直す、そのことが問われている。(S)
【出典】 アサート No.327 2005年2月19日