【コラム】ひとりごと–イラク自衛隊派遣延長と支持率低下–
○小泉政権は、12月10日自衛隊のイラク派遣の1年間の延長を決めた。それは、国会審議を行わず、野党提案のイラク復興支援特別措置法廃止法案の審議採決すら拒否しての「強行」決定であった。与党内からの反旗を考慮したとも言われているが、無責任極まりないやり方である。○派遣延長を巡る世論調査では、6割を超える国民が派遣延長に反対・疑問を持っていることが明らかであり、民意を一切無視した「自信の無さ」を暴露したものに他ならない。10日を前に、防衛庁長官、公明党幹部が申し訳のようにイラク入りし、「サマワは安全」と言ったところで、イラクに「非戦闘地域」など実態的にも論理的にもありえない。イラク反占領勢力からすれば、彼らが武装闘争をしかけた場所が戦闘地域になるのであって、日本政府が決めるものでない。○そもそも、イラク派遣とはいっても、民間援助でもできる水道や学校の復興工事をわざわざ自衛隊という軍隊を送るという「国際平和協力活動」。現地でも防衛的配慮というらしいが、一年も経つというのにイラクでの自衛隊の活動について報道制限を設け、何をしにいっているのか、国民は具体的・映像的にも知らされていないのである。○派遣延長を受けて、イラクの反占領勢力は、日本も占領軍の一部と見なし選挙以後は攻撃対象とすると明言している。○アメリカの単独主義にいつまでも付き合うことは何ら国際社会の求めるものではないことは明らかである。○イラク派遣延長決定の日、閣議決定された新防衛大綱は、アメリカの軍事態勢と一体化することのみを主軸にした内容となった。MDシステム(ミサイル防衛システム)の導入を明記し、アメリカと共同歩調を取ることを明言しているものの、肝心のミサイルがどこから飛んでくるのか、全く不明である。○冷戦終結後の仮想的国はいったいどの国なのか。北朝鮮すらも海外に撃って出る力はない。唯一急速に政治的には冷たい関係になりつつある中国を仮想的国とする内容も含まれているが、これだけ強い経済的関係をもった両国の課題は軍事的問題ではない。○「我が国に対する本格的な侵略事態生起の可能性は低下する一方、我が国としては地域の安全保障上の問題に加え、新たな脅威や多様な事態に対応することが求められている」というフレーズが何度も登場する大綱だが、「新たな脅威と多様な事態」が極めて曖昧で、拡大解釈可能な叙述となっている。○皮肉にも、イラク派遣延長決定後の内閣支持率は、不支持が増え、支持と逆転した結果となった。(毎日新聞・TBS)これ以上、小泉政権の存続を許してはならないのである。(佐野秀夫)
【出典】 アサート No.325 2004年12月18日