【コラム】ひとりごと —三菱自動車の凋落について—
○トラックの故障隠し・リコール問題の影響から三菱ふそう・三菱自動車の経営が困難になってきている。製造物責任法(PL法)を紐解くまでもなく、この企業の隠蔽体質は深刻で、法的にも国民ユーザーの立場からも厳しい罰則が加えられなければならない。死亡事故が続発しても、隠蔽し続けていたという事実から、経営の存続問題にまで波及することは確実で、三菱ブランドの乗用車が市場から消えていく日もそう遠くはないかもしれない。○しかし、ひとり三菱だけの責任か、と言えばそうではなかろう。そもそも日本の交通行政は製造者擁護の構造を持っている。一例を交通事故に取れば、欧米では自動車事故について情報公開が進んでいる。どのメーカーのどの車がどんな事故を起こしているのか。その原因は何か、などが情報集中され、市民は誰でも見ることができる。○当然にも事故の多い車は、国民から支持されなくなる。企業の安全への姿勢も積極的であると言える。○確かに日本の車は良くなっており、技術的にも欧米車と肩を並べるところまで向上してきているのは事実であろう。しかし、自動車の製造者責任を監視する機関は果たしてあるのだろうか。テレビ番組の「新車情報」でも、本来「JAF」が利用者の立場からこうした役割を担うべきなのに何もしていないと批判していたが。○交通事故死亡者が1万人を割り込み、飲酒規制も強化されたが、交通事故の犠牲者の多くは、歩行者であり、老人や子供、同乗者である。走る兇器は自動車なのである。○マスコミはひとり三菱の問題であるかのような印象を与えている。しかし、こうした自動車行政・交通行政の情報公開こそ求めるべきであろう。(佐野)
【出典】 アサート No.319 2004年6月26日