【投稿】高知県知事選をめぐって・補論--統一戦線論(67)

<<大差敗北でも「大健闘」>>
11/28に高知県知事選をめぐって投稿したが、11/30付・しんぶん赤旗の1面記事を見て驚いた。見出しが、高知県知事選で大健闘 松本氏 各野党にあいさつ 「共闘進んだ」「次につながる財産」とある。
記事は、「高知県知事選で市民と野党の統一候補として大健闘した松本顕治氏が29日、国会を訪れ、応援をうけた野党各党・会派代表らにあいさつをしました。日本共産党の志位和夫委員長、穀田恵二国対委員長が同行しました。」として、「立憲民主党の枝野幸男代表、国民民主党の玉木雄一郎代表や小沢一郎衆院議員、社会保障を立て直す国民会議の野田佳彦代表、社民党の福島瑞穂副党首、無所属の会の岡田克也代表、元建設相の中村喜四郎衆院議員らが応対しました。」と、その際の写真付きである。
 同記事は、志位氏は、「党首のみなさんはじめ55人の国会議員に応援に入っていただき、本当に心のこもった演説をしていただいた。気持ちのいいたたかいができ、共闘が一歩進んだ。次につながる財産ができました」と感謝を述べました、と続き、最後に、どの部屋でも「大健闘だった」「素晴らしい候補だね」と歓迎され、志位氏らは「国会でもがんばりましょう」と語り、握手を交わしました、と結んでいる。
そこには知事選候補者であった松本顕治氏が、今年7月の参院選徳島・高知選挙区で野党統一候補として出馬し、高知では1万9000票差で落選したのであったが、今回の知事選では、差を縮め、肉薄するどころか、逆に6万2000票以上もの大差に広げてしまったことについては、一言も触れてはいないのである。言い訳も反省の弁すらない。あきれたものである。
安倍政権が、森友問題や「桜を見る会」をめぐって明白・厳然たる事実を無視して、批判と責任を問う声を一切無視して政権にしがみつき、事態が鎮静化するのを待とうとする態度と、この共産党指導部の姿勢は同一だと言うのは、言い過ぎであろうか。

<<当たり障りのない政策>>
問題は、「大健闘」どころか、「大後退」であった厳然たる事実にはまったく触れようともしない、共産党指導部の誠実さも、問題に対処する真剣さも感じられない、その政治姿勢である。そもそも、しんぶん赤旗ではこうした事実、得票数、大差となった数字等が一切報道もされていない。私的な場はいざ知らず、公的な場では、志位委員長をはじめ共産党指導部は誰一人、触れようともしていない。
厳しい現実をしっかりと見つめなおし、問題点を克服し、打開するための議論、追求されるべき統一戦線の道筋こそが要請されているのに、「素晴らしい候補」「共闘進んだ」「次につながる財産」といった、党派的な仲間内にだけ通用する、内実を伴わない、空文句と空虚なすり抜け論法によって、すべてをうやむやにしようとしているかのようである。
「気持ちのいいたたかいができ、共闘が一歩進んだ」にもかかわらず、なぜ得票が激減したのか、それこそが問われるべきであろう。
知事選に際し、松本顕治候補と「戦争させない、戦争に行かない高知憲法アクション」が10/17に合意した7項目の確認書の7項目は以下の通りである。
(1)誰も取り残さない、一人ひとりの尊厳を大切にする県政
(2)暮らしに確かな土台を―「『産業振興計画』プラス」の施策を
(3)本気の子育て応援を
(4)子どもを中心にした教育改革を
(5)どこでも誰でも暮らせる医療、福祉、社会保障を
(6)命を守る防災の備えの加速化
(7)憲法を生かした平和行政
1番目からして、きわめて抽象的、当たり障りのないものである。その具体的な中身は「誰もが取り残されない安心県政、ジェンダー平等の推進、パートナーシップ条例の制定など、県民一人ひとりが尊厳をもって暮らし続けられる県政を築きます。」とある。政策の具体性に欠けるだけではなく、これが与野党対決の第一番目に来るものであろうか。これらの確認書の中身には、県民の暮らしに深くかかわる消費税や、農業切り捨てや弱肉強食の規制緩和を一層推し進めるTPP以上の実害をもたらすであろう日米FTA批准問題などは一切入っていない。だからこそ、消費税を不問にし、FTAを容認する姿勢を示している、会派との野党共闘が進み、その共闘から「れいわ新選組」の山本太郎代表が外されたのであろうか。共産党の志位委員長をはじめ幹部が、「立憲民主党の枝野幸男代表、国民民主党の玉木雄一郎代表や小沢一郎衆院議員、社会保障を立て直す国民会議の野田佳彦代表」から「歓迎され、握手を交わしました」というのもうなずけよう。
こうした野党共闘の実態こそが、有権者の厳しい判定を受け、大敗を決定づけたものと言えよう。政策協定をできるだけ抽象化させ、対決点をうやむやにし、むしろ候補者調整を優先させる、野党共闘の実態が問い直されているのである。こうした政治姿勢を根本的に見直し、乗り越えていかない限り、野党共闘の前進も、統一戦線の発展もあり得ないと言えよう。
(生駒 敬)

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