【投稿】ピースラリー・パレードに参加して
立花 豊(埼玉)
ブッシュ・アメリカによるイラク戦争が開始される前から全世界で取り組まれている反対デモが連日開催される中日本でも毎週取り組まれてきたが、4月5日東京でも取り組まれ、強雨が吹き荒れ、冷たい雨の降るなかを私も参加した。主催はWORLD PEACE NOW(ワールド・ピース・ナウ)実行委員会。アジア太平洋資料センターやアムネスティ・インターナショナル日本、ふぇみん婦人民主クラブ、日本消費者連盟など数多くの市民運動団体やにわか作りのグループが参加しているが、連合や全労連、全労協などナショナルセンターレベルの労働組合や政党の直接的な参加はない(傘下の産業別組織・地域組織や単位組合などは個別に参加している)。
その前の週の3月29日には天気にも恵まれ、参加者は4万人を越えたと発表されていたが、この日は大きく下回ったものの、しかし1万8千人(主催者発表)もの老若男女が手に手にプラカードを持ち、洋服や雨傘に『NO WAR,YES PEACE』『子どもたちを殺すな』などと書き込んだゼッケンなどを貼り付けて、代々木公園から渋谷駅前へ、そして青山通りへとおよそ5キロの道を歩いた。やや遅れて集合場所に着いたときは、パレードの先頭の列はほぼ三分の一くらいがコースを進んでいた。私はまったくの個人で参加したのだが、たまたま目の前にいた「たまの会」の中に混ざりこんで歩き始めた。この「たまの会」はおよそ20人ほどがこの日は参加。どういう「たまの会」なのか聞かなかったが、女性と年配者が多い。私が割り込むように入ってもなんにも言わなかった。私の前後のひとたちは時折「戦争・ヤメロ」「戦争・ハンタイ」などのシュプレヒコールを口にしつつ歩いたが、それもかつての学生運動や労働運動を思わせるような「指示の行き届いた」それではなく、かなり散発的だ。しかもリーダーらしき人も決まってはいないようで、ときどき掛け声を始める人も次々と代わる。おそらくこのパレードに初参加の人も多いのだろう。主催者側のユニフォームだと思われる真っ赤なジャンパーを着た人がいても、とくに指示らしきことはしない。むしろ異常に大量動員された交通警官の「歩道側へ寄って」などの大音量の指示の方がやかましく、邪魔するようにシュプレヒコールと重なる。個人でパレードに参加したらしい外国人が、警官たちに向かって「ケイサツハウルサイデスヨ」「ジャマヲシナイデクダサイ」と自分で用意した簡易型の拡声器で怒鳴る。私はおおいに気分をよくした。
渋谷駅前のビル街に入ると、通行人も俄然増え、不動産会社が自社の窓から「NO MORE WAR」と書かれた大きな布を下げている。私たちの声も自然と大きくなる。しかし、雨風は時折突風のようになってデモ隊を襲い、雨傘は役立たず、渋谷駅を過ぎたあたりでは下半身がずぶぬれの始末だ。
この日はデモの後同じワールド・ピース・ナウの主催で緊急シンポジウムが渋谷公会堂で行われた(定員約2300名のところ、満席だったらしい。私は参加できなかった)。講師はコーラ・ワイズ氏(ハーグ世界平和会議議長)、リカルド・ナバロ氏(地球の友インターナショナル代表)、高橋和夫氏(放送大学教授)他が予定されていた。パレードは、実行委員会があまりにも多くの団体によって構成・運営されているためか、かつてみた団体ごとの意思表明などはとくになく、予定されたパレードや集会だけが淡々と行われる。この日はパレード最後尾に平和委員会のデモ隊がおよそ50名で続いていた。思ったより少ないが、他の市民グループからも連帯の声がかかっていた。
こうした市民レベルの行動に促されるように、連合は戦争が開始されてからかなりたってイラクへの武力行動に批判声明を出した(3月24日)。以降、日比谷野外音楽堂や社会文化会館でも集会やデモが行われたが、決められた動員での行動だったにもかかわらず、官公労を中心に盛り上がった。共産党系列では、全労連が官公労や全建総連などを中心に連合系とは場所をかえて集会とデモを繰り返しているが、組合の旗がやたらに目立ち、市民レベルでの参加は少なかった。
当然だが、アメリカによるイラクへの戦争は、これまでになく世界中の批判を浴びている。アメリカ国内でも大きな反戦行動や自治体の反戦決議が随時報道されている。おそらくその第一の理由は、国連による化学・生物兵器の査察が中途であり、それもいまだ発見されないままに開戦を決定したことにあるようだ。しかもイラク・フセインは他国を攻めてはいない。イラク・フセイン大統領の政治がいかに非民主的であろうが、「悪の枢軸」とブッシュが決め付けても、まさに問答無用の戦争開始は国際的には犯罪だ。アメリカに敵対的な行動をとろうとする国には今後よほどの決意が必要とされるとだろう。だからこそ、国際的に反戦行動が大きくなっているのだ。
今後、日本でも北朝鮮問題をめぐって動揺が予想される。ブッシュ支持の理由として小泉首相はアメリカの行動に賛成しなければ日本を守ってくれないと語っている。しかし、北朝鮮は交渉をいくらかでも有利にさせるためにミサイルの発射実験をしても、他国を本当に攻めるようなことになるのだろうか。今のところアメリカが攻め入る可能性の方がよほど高いといえるだろう。日本は韓国や中国、ロシアなど国際世論をバックに今こそ北朝鮮と国交開始交渉を急ぎ、新たな火種を作らない方向でアメリカに毅然とした態度を打ち出すべきだろう。
現在のところ、イラクにおいて国連主導による和平がどこまで可能か不明だが、すでに戦況はイラクの既成権力は崩壊しつつあるようだ。しかし、戦争反対の国際的な潮流がさらに強まれば、「戦後処理」における民主的な再建の可能性も一段と大きくなると思いたい。(了)
【出典】 アサート No.305 2003年4月19日