【投稿】まかり通る隠蔽工作・・原子力行政の破綻

【投稿】まかり通る隠蔽工作・・原子力行政の破綻
                                 
 雪印食品、日本ハムと相次いだ偽装事件は、食肉業界と農水省が「癒着」していたことが大きな原因であり、国民から大きな非難を浴びた事は記憶に新しい。我々が日々の生活に必要な食料品であり、また日々スーパーなどで購入していたことから、逆に我々は、購入ボイコットとでも言える手段で、その企業に対する制裁を加えることが可能であった。また、スーパーなど食料品店も、その企業の製品を陳列棚から排除することで、犯罪企業に加担しないという姿勢を見せた。その結果、雪印食品は企業存続を断念することとなった。
 こうして、企業倫理の不信が強くなる中、8月末に東京電力による原発トラブルの隠蔽工作が明らかになった。果たして、食肉偽装企業に対して行われた対応は、どこまで追求できるのだろうか。さらに、東京電力の隠蔽工作に行政機関が関与していなかったのか、が大きく問われることになるだろう。
 
<安全神話はすでにない>
 8月27日、東京電力は、新潟県柏崎市・刈羽村の柏崎刈羽原発3号機で定期検査中にシュラウド(炉心隔壁)のひび割れが広範囲に点在していることを発表している。9月中に実施予定のプルサーマル計画は困難な状況との報道である。
 さらに、29日には経済産業省原子力安全・保安院は、東京電力の福島第一、第二、新潟柏崎刈羽の3原子力発電所で、「80年代後半から90年代にかけて実施された自主点検データに虚偽記載が見つかり、トラブル隠しの疑いがある、と発表」。ひび割れに関する記録など29件あり、修理が必要であるにも関わらず、それら原発8基が修理もされず稼働中であるという。
 まったくふざけた話である。「安全神話」もあったものではない。
 私は原子力問題に詳しいわけではないが、この事件に関する「不信」は次のようなものである。
 第一にまず、原子力安全・保安院という聞き慣れない名称だが、省庁再編によって科学技術庁で行われてきた原子力エネルギー政策部門と通産省の産業保安部門が一組織として経済産業省に移管された組織である。そのホームページに報告書が掲載されているが、「・・これらの事案は、直接原子炉の安全性に重大な影響を及ぼすものではないため、定期検査において国が直接立ち会って確認を行う対象には含まれず事業者が自主点検をおこなうものです。しかし・・原子力安全行政にとっては・・・」と、隠蔽されたトラブルが安全上は問題がないと強調していること。本当にそうなのか。
 第二に、電力総連(東京電力労組が加入している産別)のHPでは、保安院の安全には問題がないが、原子力安全行政上遺憾な事態であり、組合としてもチェック機能を果たしたいとしている。ほんとうか??と言いたくなる。原子力不信は深まるばかりだ。
 
<2年間も公開しなかったのは何故か>
 安全上問題ないのなら、なぜ2年間も調査に時間がかかったのか。これも馬鹿にした話だ。不正報告が行われた18箇所はすでに修理ずみで、残りの11箇所はそのままで稼動しているらしい。保安院は2年間、隠していたわけだ。癒着と言わずにおれない。
 保安員の言い訳はこうだ。2000年7月に情報提供(内部告発)があり、東京電力の現職、退職社員から事情を聞いても、調査は進展せず、自主点検は保安院の権限ではなかったため、調査は進展しなかった。こうして棚晒しされていたものが、ようやく、昨年の11月にGEII(点検を行ったGEの関連会社)が内部調査をはじめ、その結果を基に今年5月にやっと東京電力に「社内調査委員会」が出来て、今回の報道となったらしい。
 やる気のない調査、癒着した調査とはこういうものだ。また、74年当時の東京電力社員が、福島第一1号機にトラブルがあったが、報告書に書くなら責任はもてないと当時の通産省の調査員に隠蔽を「指示」されたという証言も出てきた。さらに、シュラウド損傷の可能性のある原発について、東京電力は保安院に最近の点検報告で「異常なし」の報告をしていたことも分かってきている。
 
<プルサーマル計画早期実施を断念>
 柏崎でもプルサーマル計画は、住民投票で反対の意思が示されたにも関わらず、国・東京電力とも推進の姿勢を崩していなかった。しかし、相次ぐトラブル隠蔽報道の前に、早期実施を断念することとなった。住民の反対の声を無視してきたツケは、墓穴を掘ることで帰ってきた。
 さらに政府・保安院の姿勢にも批判は強まっている。
 保安院は、9月2日から3つの原発と東電本社に立ち入り調査を行った。原子炉等規制法と電気事業法はいずれも、電力会社に国への安全点検などに関する報告を義務づけており、違反性の有無が焦点であった。しかし、保安院は13日、「6件に法令違反の疑いがある」などと調査の中間まとめを報告したが、記者会見では行政処分や刑事告発は考えていないと表明し、早々と幕引きを行おうとしている。まだ最終報告書もでない段階で。果たして、福島県や新潟県などの原発立地の市町村からは、批判の声が相次いでいる。
 
<東京電力 隠蔽が常態化>
 東京電力の社内調査結果が報告されたが、そこには隠蔽工作が常態化していたことが報告されている。自主点検の報告書は、問題の29件の内15件について、「社会常識、企業倫理に照らして許されない改ざん」であったことを認め、「異常なし」と報告した福島第一1号機のケースなどは、不正に不正を重ねたケースだったとされている。また、点検結果の改ざんが繰り返されたのは、修理のための原子炉ストップによる企業収益を低下を避けるためだったという。9月17日には公開される予定と言うが、さらに批判を浴びるのは必死だ。
 
<安全性に問題がないのなら>
 安全性の確保こそが点検の目的であり、監督庁たる保安院の職務もそれだ。今回隠蔽されてきた自主点検によって明らかになっていたシュラウドの損傷にしても、そもそも安全性に問題がないのなら、なぜ隠したか、ということだ。隠蔽が明らかになった今になって、「安全性には問題がないが、原子力行政上の信頼にとって問題」とするのは二重の意味で欺瞞である。
 高まる批判の中、東京電力は、日経連(新)の副会長職も辞任せざるを得なくなった。確か連合の笹森会長は東京電力出身のはずだが、連合のHPにはこの事件の見解も掲載されていない。保安院は今になって関西電力など、他の原子炉も調査に入ると言い出した。
 日本ハムのように不買運動というわけにもいかない。なにしろ電力は独占企業なのだから。安全への信頼は、隠蔽によっては生まれない。第三者委員、住民、反対派も参加し監視システムを作って徹底した調査とその公表、社会的制裁が求められている。(佐野秀夫)  
 【出典】 アサート No.298 2002年9月21日

カテゴリー: 原発 パーマリンク