【コラム】ひとりごと—企業等の不正事件に見る退廃—
○今、失速しつつあると言われるアメリカ経済だが、そのきっかけとなったのが、電力大企業エンロン、通信社ワールドコムなどの不正経理事件だった。○グローバルスタンダードこそ、情報公開と説明責任、株主責任を果たすことだ、などと、日本の不良債権処理をめぐる企業の姿勢を追及してきた人々の「期待」を大きく裏切ることとなったのは皮肉というべきか。米政府は、アメリカの大企業941社に、不正経理はしていないとの宣誓書を8月14日までに提出するように指導するなど、「不正経理」蔓延のイメージ払拭にやっきとなっている。○バブルの影に、悪が潜んでいたということか。一昔まえなら、「資本主義の腐朽性」の表れだ、とか、全般的危機は一層進化しているなどと捉えているところだが、ここではそういう結論を導こうと言うことではもちろんない。○同様の事態、すなわち、企業経営や倫理に関連する事件が日本でも頻発している。雪印食品、日本ハムの牛肉偽装事件、そして東京女子医大での医療ミス組織的隠蔽である。○いずれも共通していることは、組織や企業の中のみで通用した論理、発想が、一度国民・市民に公開された時点で、いかに陳腐で自己保身的で、世論に「絶えられない」ものであり、刑事罰の対象にもなる、ということを、なぜ当初から理解、認識できないのか、と言う点だろう。○一昨年の雪印乳業の偽装事件でも同じ事があった。さらに遡る一連の警察不祥事でも同様であろう。○自らを顧みても、公務員という職場は、分権・情報公開の時代と言っても、古い体質が依然根強く残っている。私などは「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」という意識なのだから、「告発主義」にはならないとしても、許せぬものは許せぬと、物申す気概を持ち続けたいものだ。○そういう意味でさわやかなのは、雪印食品の偽装を告発した保冷倉庫の経営者の毅然とした態度であろうか。○さらに、牛肉偽装問題で言えば、国内産業保護という大義で、チェックの甘い買取補助金制度を運用してきた農水省の失政こそ本質的な問題であり、腐敗と退廃の温床であることを忘れてはならないだろう。(佐野秀夫)
【出典】 アサート No.297 2002年8月24日