【投稿】自治労の再生なるか–臨時大会に参加して

【投稿】自治労の再生なるか–臨時大会に参加して
 
1)72回臨時大会で中央本部五役総辞職
 昨年9月30日の新聞報道以降、次々と明らかになった自治労の不正・不法行為によって、自治労は組合員・単組と社会から信頼を失い、辛うじて組織と団結を維持してきた。この間の検察と税務当局の捜査により、自治労と後藤元委員長および開発元事業本部事務局長が法人税法違反事件により起訴されることとなり、国税・地方税あわせて3億2千万円にのぼる修正申告・納税を行なった。またubc(自治労関連コンピュータ-会社)は、「長谷川陽光ほかに対する業務上横領事件」に関わって7名が起訴されている。
 自治労第72回臨時大会は、①真相の究明と二度と不正の起こらない組織・財政システムの構築、②不正・不法行為をした者に対する厳正な対処と執行部の組織的責任の明確化の上に立ち、この間明らかとなった39億円の借財返済計画の策定、③失った信用を回復するための自治労再生方針を確立することにあった。
 臨時大会では、大原委員長が冒頭あらためて組合員に対し謝罪を行い、自治労再生への道筋がついたため大原委員長、福山書記長をはじめ5名の五役と関係団体2名の役員が責任をとって辞任することが表明された。

2)臨時大会の争点と本来の課題

 自治労再生にかかわって、「自治労再生プログラム(案)」、「自治労再生プログラムにもとづく第一次再生実施(案)」等が提案された。
 とりわけ争点となったのは、再生プログラムの一環として、①県本部を強化するために自治労基金を取り崩し各県に50億円を交付する(5月中央委員会までに結論)②社会に対しての信頼を回復するため社会貢献基金をつくるため一定額(20億円)を基金から取り崩す(8月大会までに検討)2点の提案内容であった。
 この提案に対し、代議員からは「自治労本部の認識が組合員・単組と大きくかけ離れている」、「真相究明はなお不十分」、「50億円の県本部への交付や社会貢献基金は金で問題を解決するもの」、「200億を自治労基金として残すことやその位置づけ、基金発動の基準が不明確」など、厳しい発言が続いた。
 しかし、基金の発動そのものが継続討議事項となっていたため、修正案の提出は無く採択では、「自治労再生プログラム(案)」等に対する採決が行われ、執行部提案が賛成多数(出席代議員数969人、賛成864人)で承認された。
 議論としては上記のように、責任追及と基金の発動問題に集中したが、本来どうあるべきだっただろうか。アサート前号の投稿でも指摘されているように組織の「マネジメント」感覚の麻痺と役職員政策の欠如が指摘されている。今回の再生プログラムでは、例えば会計システムの改革については一定の方向が示されたが、役職員政策については明確でない。市ケ谷界隈では「自治労官僚」という言葉をよく耳にする。地方勤務経験の皆無な本部書記が県本部を指導したり、本部の指示系統が役員と書記別々になっていたりと、様々に指摘されている。役員と書記の責任と権限の明確化、書記の広域人事交流、給与体系の見直し、役員選出過程の公開、女性参画の推進など具体的な改革が求められている。そのため進行状況を検証・管理する新たな組織を立ち上げていくことは大きな課題だ。また「社会貢献基金」の創設について、一部の主流派県本部を除き否定的であった。唐突な提案ではあったが、労働組合の社会的な意味・役割を考えた場合、具体的ビジョンをもとに議論を進めることも大切だったのではないだろうか。

3)自治労の団結は強化されたか?
 臨時大会では、辞任した大原委員長をはじめとする5名の五役の選出選挙が行われ、以下の新五役が新任された。

役  職 氏名 信  任 不信任 白票他
中央執行委員長 北岡勝征(三重県本部 798 157 22
副執行委員長 竹花恭二(岩手県本部) 523 440 14
書記長 君島一宇(長野県本部) 699 262 16
書記次長 宮原一夫(千葉県本部) 783 173 21
財政局長 大西繁治(香川県本部) 671 285 21
 投票結果から明らかなように、岩手の竹花氏に大量の不信任票が投じられた。不祥事のあおりを受け北海道、東京、大阪が立候補を見送る中で、非主流派(社民グループ)は、5ポスト中3ポストを要求したと言う。結果として、この間の個人的言動もあいまって竹花氏(社民党東北6県グループ)に批判票が集中、あわや落選といった結果となった。総団結とは程遠く暫定政権スタートといったところだろうか。
 また、大会全体も自治労最大の危機と言われながらヤジは飛ぶが、誰も演壇に詰め寄らない(自治労各級役員の老化現象の表れか?)元気も半分と言った大会であった。

4)終わりに――求められる新生自治労――
 大会は終わった。しかし自治労再生はまさにこれからである。闘争・闘争でがんばった60年代70年代、自治労連との組織抗争が主軸となった80年代、そしてある意味では「安定」の90年代。どこで歯車が狂ったのかを総括し、自治労の再生を果たさなければならない。月並みではあるが職場から地域からの地道な取り組みで信頼を回復するしかない。「社会の風をしっかり受け止め、社会と響きあう」新生自治労を創るため地域から奮闘する決意である。              (S.I) 

 【出典】 アサート No.291 2002年2月16日

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