【投稿】奇妙な内閣の誕生

【投稿】奇妙な内閣の誕生

 自民党総裁選挙で何とか小泉が再選された。予想どおりとは言え、圧倒的とはならず、むしろ印象的には苦戦とも見える。国会議員票でも200票に届かなかった。亀井以外の他の2候補の政策は曖昧で、構造改革は支持するとか、小泉路線は継承するという中途半端な主張ばかりであった。総裁選挙が告示された時点で、マスコミを取り込んで「小泉再選確実」と報道を行わせ、勝ち馬に乗り遅れるなキャンペーンでやっと乗り切れたという雰囲気である。おそらく党員の選択ポイントは、政策の是非ではなく、総選挙に勝てる顔なのか、どうかという一点である。そして、奇妙な内閣改造・自民党内人事が行われる。
 総選挙が10月解散・11月に行われることは、確実視されていた。総選挙が実施されれば当然国会議員も入れ替わる、選挙の結果次第だが。単なるイメージを変えるための人事なのである。醜聞の絶えない山崎に換えて、拉致問題で強硬な発言をして「国民的人気」があるという安倍を幹事長に据えただけの事である。新しさなど1ヶ月もすれば色あせる。
 「挙党体制」のための内閣改造、即ち自民党のための内閣改造でしかない。このあたりが、なぜか奇妙な内閣である所以であろう。小泉政権がその存続のために政府を私物化しているのだ。
 マスコミの姿勢について、政治評論家の森田実も自らのホームページで厳しい指摘をしている。総裁選の最中に小泉に批判的な見解を述べないようあるマスコミから要請があり、そうした前提つきの出演を拒否したという。総裁選中のフジテレビの朝番組の政治評論は他の評論家に挿げ替えられていた。
 確かに一政党の党首選挙にすぎないのに、総裁選挙中のテレビ・マスコミは、4候補を軒並み登場させた。小泉以外の候補には厳しい質問をして、小泉のいい加減な回答への突っ込みは控えるような姿勢を感じた。小泉を持ち上げるような姿勢であり、小泉自民党ならば、何がやってくれそうな雰囲気つくりに加担しているとしか思えなかったのは、私だけだろうか。森田実のホームページ「言わねばならぬ」は是非チェックしていただきたい。
 マスコミは、若い新幹事長の誕生で「自民党は劣勢を盛り返した」などと、小泉自民党に媚を売っているが、幹事長の仕事は党内調整であり、乱立する候補者の調整から政治資金の配分まで、裏仕事にすぎない。イメージは新らしくとも実務は未知数であろう。
 小泉構造改革の成果・中身で言えば、選挙は敗北必至なのである。そもそも何の改革も進んではいない。郵政改革しかりで何の具体案も提示されてはいないではないか。
 国民年金保険料の未払い者が4割に近づき、現在のみならず将来への不安が広がっている。国家予算は4割が国債という借金によって賄われ、すでに破綻状態である。株価が10000円に回復したと言っても、アメリカ・G7の「日本円・人民元」叩きから、円高が急速に進んで、つかの間の円安・株高にも陰りが見え始めている。小泉の政策に国民は何か期待できるものがあるのか。
 さらに、小泉の盟友ブッシュは、イラク占領下のゲリラの横行でアメリカ国内に戦争遂行に嫌気が蔓延したために、このままでは大統領再選が危うい状況となっている。単独主義で戦争を始めて、今更国連に援助を懇願するというのもおかしな話であろう。来月のブッシュ来日は、復興資金の要請が目的だが、アメリカの言いなりになって日米同盟の強化という方向が果たして国民の支持を受けることができるかどうか。
 ともかく、総裁選挙・内閣改造が終わり、10月10日解散、28日総選挙告示、11月9日投票というスケジュールは確実となった。自民党単独での過半数割れから政権の交替めざして野党の奮起を期待したい。(佐野秀夫)

 【出典】 アサート No.310 2003年9月27日

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