【投稿】安倍の大暴走と感染研の闇―新型コロナウイルスと731部隊OB-
福井 杉本達也
1 新型コロナウイルス対策の大暴走
安倍内閣の新型コロナウイルス対策が場当たり的に大暴走している。2月27日、安倍首相はあまりに唐突に全国の小中高、臨時休校を要請した。前日:26日の大規模イベント中止要請に次ぐものである。しかも、学校の一斉休校の要請は「法的拘束力はない」と安倍首相自らが答弁。25日に専門家会議が開催されたが、大規模イベントの中止や、まして全小中高の休校措置などは議論にもなっていなかった。29日午後6時からの安倍の記者会見では「あと1・2週間が勝負だ」というものの、「1・2週間」に何の根拠もなく、わずか2日間での判断変更のエビデンスについての具体的な数字も示されなかった。テレワークなど現実離れした言葉だけが妙に浮いており、一斉休校やイベント中止などの経済的影響には雇用調整助成金を使うというが、既存の雇用保険制度の一環であり、目新しさは何もない。
一方、現場の大混乱のなか、休校の時期、期間は「それぞれの地域の実情に合わせて柔軟に」と無茶苦茶、文科大臣も蚊帳の外であり、教育現場は大混乱に陥った。「小・中学校に通う子どもを持ち、出勤できなくなる看護師が全体の2割強に当たる170人に達する」(「帯広厚生病院が一部の診療制限へ」:十勝毎日:2020.2.27)。巷では、マスクどころかトイレットペーパーやカップ麺もスーパーの棚から消えてしまった。まさに1973年のオイルショック以上の社会的大混乱である。与党からも「社会全体にとって突然のことで、唐突感は否めない」との大批判が出ている。立憲党の安住氏によると、内閣府特命担当大臣の西村氏からは「首相が判断し、下におろした」と説明があったことを明らかにし、「万端の準備をしていないままに、首相が決断した可能性が高い」と指摘した。いったい、この2日間で何があったのか。対策が後手後手に回って支持率が大幅に下落したための大博打なのか、IOC委員による東京オリンピック中止発言か、はたまた、クルーズ船の検疫大失策による海外からの批判か、実は水面下では既に感染が大規模に拡大しているのか。
2 クルーズ船の大失策で感染症病床は満杯―海外からも「犯罪行為」と大批判
安倍は29日の会見で感染症病床を5000床にするというが、感染症病床は約1800床しかなく、既にクルーズ船の感染者で約1000床が埋まってしまっている。これに、新型インフルエンザ対応病床を加えても3400床である(日経:2020.2.26)。感染症病床は入口やエレベーターも別途にし、病室内も陰圧にするなど、極力、院内感染を避けるための構造となっている。費用がかかるため、各県とも20~50床程度を確保するのみである。クルーズ船の下船者が陽性となったり、市中感染者が極端に増加した場合にはパンクせざるを得ない。
クルーズ船の対応について、ロシアのトビエンコ上院議長は21日、 「健康な乗客を避難させず、半数が病気になるまで留め置いた」と日本の検疫態勢を激しく批判、「これは犯罪行為以外の何物でもない」とも述べている(テレ朝:2020.2.22)。また仏「レクスプレス」誌は神戸大学の岩田健太郎教授の報告を引用する形で、「隔離措置は問題視されている。船上での強制的な検疫によって、船は新型コロナウイルスの培養器となったと見る人々もいる」と論じている。
3 なぜ厚労省はPCR検査を制限するのか
27日の衆院予算員会では立憲の枝野党首が、加藤厚労相に新型コロナウイルスの感染を判定する検査件数ただしたところ、2月18~24日までの1週間でわずか6,300件、1日平均にするとわずか900件という答えが返ってきた。韓国の12,888件と比較すると2桁も低い。検査希望者がたらい回しにされたり、断られるケースが相次いでいる。厚生労働省は、28日、PCR検査を、来週半ばにも保険適用するとし、料金については1万8千円にすると公表した。自己負担3割なら5,400円の計算だが当面は公費で全額補助するという。帰国者・接触者外来などを受診し、医師が必要と認めれば受けられるという(朝日:2020.2.29)。しかし、27日の厚労省の事務連絡では渡航歴・濃厚接触条件は緩和されたものの、「発熱37.5度以上」で「呼吸器症状」があり、「かつ入院を要する肺炎が疑われるもの」であり、なおハードルは高い。高齢者の場合は発熱がなかなか出ない場合も多く、仮に、高熱が何日も出た場合には体力が損耗し、即重篤になる。
何が適切な施策なのか、例えば休校する場合、実際にどれくらい感染が広がっていて、これから何が予測されるか、データがなければ話にならない。検査能力をできるかぎり拡充してデータを集める必要がある。どういう仮定のもとに何を想定して、ある施策によって何の数字がどれだけ改善すると期待するのか、定量的に示すべきである。「専門家会議」の「見解」が何ら具体的な数値に基づいていないのが混乱の大きな要因である。WHOレポートの第2項 では、「能動的かつ徹底的な患者の発見、即時の検査と隔離、念入りな接触者の追跡と、濃厚接触者の厳密な検疫」(Report of the WHO-China Joint Mission on Coronavirus Disease 2019 (COVID-19))が必要とされている。しかし、厚労省の27日の通知は「外来では当面、感染の疑いのある人を診察する専門の『帰国者・接触者外来』を通じた検査」であり、「やったふり」でしかない。
4 羽鳥モーニングショーでの岡田晴恵白鴎大学教授の「感染研OB」の影という内部告発
なぜ、ここまで厚労省側が執拗に検査を制限しようとするのか。感染件数が増えるとオリンピック開催に影響すると考えているのか。はたまた、他国との国際的対抗上弱みを見せたくないのか。その答えを、2月28日の羽鳥モーニングショーにおいて岡田晴恵白鴎大学教授(元国立感染症研究所研究員)が突然「私が、『オリンピック開催のために感染者数を抑えようとしてるのだと思ってました』 そう言ったら、ハハハハーと笑って、『そんな肝の座った人は今の官僚にはいないよ、これはテリトリー争いだよ』PCR検査を民間検査機関にさせない理由はテリトリー争い。このデータは貴重。衛生研からあがったデータを全部感染研が掌握し、このデータを感染研だけが持っていたいとする感染研OBがいる。論文や業績より人命を尊重すべき」と内部告発したのである。あまりの仰天発言に、羽鳥を始め、玉川徹らは唖然として言葉が繋げなかった(参照:Jcastテレビウオッチなど)。
また、3月1日のサンデーモーニングにおいても、上昌弘氏が、感染研の旧日本軍との関係を取り上げている。また、上氏は米国のCDC(アメリカ疾病管理予防センター Centers for Disease Control and Prevention)の米陸軍との関係(生物化学兵器の研究開発で中心的な役割を果たしてきたのは陸軍感染症医学研究所)も取り上げている。その感染研の関係者が「専門家会議」の構成メンバーの3人も占めており、意見が会議で通りやすいとしている。
5 「感染研OB」は第二次大戦中の「731部隊」等から連綿とつながっている
国立感染症研究所の前身は国立予防衛生研究所である。ルーツは戦時中の伝染病研究所(北里柴三郎)にあり、旧日本軍と繋がっていた。戦時中、いわゆる731部隊(関東軍防疫給水部本部)は、満州(中国東北部)において、感染症予防や、そのための衛生的な給水体制の研究を名目としたが、実際には細菌戦に使用する生物兵器の研究・開発機関であった。そのために人体実験や、生物兵器の実戦的使用を行っていた。「731部隊」または「1644部隊」に属し、人体実験などに関与した小林六造や小島三郎、北岡正見ら多くの大学教授や伝染病研究所研究者などが、戦後、予防衛生研究所の所長や部長として奉職している(青山貞一・池田こみち:「731部隊 関連資料 総集編」)また、元731部隊コレラ班にいた軍医少佐・ 長友浪男は、戦後は厚生省公衆衛生局精神衛生課長として公衆衛生行政に君臨し、北海道副知事になっている(加藤哲郎「ネチズン・カレッジ」)。
6 「公衆衛生」とは細菌戦-現代版「マルタ」:犠牲にされたクルーズ船の乗客ら
「公衆衛生」とは「地域社会の組織的努力によって、人々の健康の保持・増進を目指す科学及び技術」であり、医療とは異なり「集団に対してのアプローチ」であると定義されている。しかし、疾病の原因や治療法はっきりしなかった戦前においては、感染者にはもっぱら隔離政策が多用された。その最たるものがハンセン病隔離政策であり、結核などの療養所である。社会の労働力や兵力とならないものを人権を無視して地域から隔離するということである。その流れは今も厚労省の一部に連綿と続いている。その一方で、戦争における細菌戦での利用が計画され、関東軍の731部隊のように実戦使用も行われた。731部隊のデータは戦後、石井四郎中将ら幹部の戦争犯罪を免除することと引き換えに、米軍に全てが渡された。そのデータを利用しているのが米CDCである。
田中宇や櫻井ジャーナルは武漢からの新型コロナウイルスの発症を研究中の細菌兵器が漏れ出たとしている。しかし、上昌弘氏は細菌戦にしては致死率があまりにも低く「効率的ではない」と否定的である。真偽は不明であるが、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセスの感染事例は感染研にとっては絶好の「防疫」事例となったことは間違いない。
それは、クルーズ船の乗客で2月20日に死亡した84歳の東京都の女性の発表に見られる。厚労省は当初検疫の開始を2月5日としていたが、2月3日と訂正した。女性は5日から発熱していたものの、下船して医療機関に搬送されたのは12日で、13日に新型コロナウイルスに感染しているとの検査結果が出た。5日に下船して医療機関に受診できれば死亡しなかったのではと思われる。高齢者の発熱後の1・2日は重いものがある。上氏は「検疫は国内に新型コロナウイルスを流入させるのを防ぐためであり、彼らには何のメリットもないことだ。メリットとデメリットを天秤にかける医療事故とは根本的に違う。」「検疫で亡くなった人たちは、国民の命を守るために一命を差し出した人たちだ」、「厚労省は乗客や乗員の人権を軽視し続けた」という(上昌弘:2020.2.25)。それを感染研の脇田隆字所長は「(船内での)隔離が有効に行われたと 確認した」とごまかした。国家による殺人罪の隠蔽である。おそらく感染研は閉鎖空間においてどこまで隔離し続ければ感染が広まるのか、死亡者は出るのか、致死率は何%かなどのデータを冷徹に監視したかったのであろう。あまりにも冷酷・無慈悲としかいいようがない。また、このデータは米CDCと共有されることとなるのであろう。CDCが2月15日に船内の米国人を救出すると決めたのは、このまま日本に任せておけば感染者が想定以上に増えすぎて、米国内の批判に耐えられないと判断したからである。しかも、チャーター機は駐留米軍に感染が及ばないよう、慎重に横田基地を避け、羽田空港を利用した。米軍は2月28日、「太平洋艦隊では慎重を期して、COVID-19への要員の感染を未然に防ぎ、高リスク地域を訪れた要員を観察するため、追加の影響緩和措置を講じている」と述べた。日本を汚染地域と認識している。
安倍は、厚労省の感染症対策を牛耳る闇の勢力を掌握できない。掌握できないことが今回のような政治の暴走につながっている。何が起こっているか、現状を把握できない政治家・官僚、研究者の権限が強化され、闇雲な「バンザイ」突撃が行われることで、被害はさらに拡大する。厚労省はクリニックでも診断できる簡易キットの開発に熱心である。安倍も会見で15分で検査できる検査器具の開発に触れている。簡易検査はあれば便利だが、開発されるまで待つなど、悠長なことは言っていられない。武漢の医師の報告によると最初は「痰が絡まない乾いた咳」という初期症状の例もある。胸部レントゲン検査では、陰性だと診断される場合も、CT検査で陰影が確認された症例が出ている。鈴木頌氏は「肺炎と言っても最初はウィルス性の気管支肺炎だから、単純写真では分からない。しかしCTをとると一目瞭然だ。CTをとるということは医療機関に送るときにも大事」であると述べている。中国のようにCTを最初にとる方が診断が早いかもしれない。もちろんレントゲンと比較して大量被ばくとなるがそんなことは言っておれない。