【投稿】建設省にレッドカード!長良川DAY98

【投稿】建設省にレッドカード!長良川DAY98
        –少し元気のない集会報告–

9月12・13日と恒例の「長良川DAY98」が、長良川伊勢大橋左岸の河川敷で開催された。私はもうこの取り組みにあまり関わるまいと思いつつも、しがらみから今年も参加しました。簡単に集会・イベントの紹介をしておきたいと思います。

<集会のメインテーマは「建設省にレッドカード!」>
長良川河口堰は、3年前の95年5月、当時の野坂建設大臣(社会党)の判断で「運用」が開始され、堰は閉じられ3年が経過した。多くの学者が指摘したとおり、堰が閉じられたことで、長良川河口堰周辺の生態系は重大な変化をきたしている。
海水と淡水が周期的で微妙な混合を繰り返す「汽水域」は生物の宝庫であり、長良川のしじみなどは、この環境の中で生育していたものだが、堰が閉じられたことで、堰の上下でヘドロの堆積が進行するとともに、下流域では海水の上を淡水が覆い、川底は海水の塩分濃度が上昇するとともに、酸素が不足する状態となった。ヤマトシジミなどの汽水性動物はもはや生存さえ、不可能な壊滅的打撃を受け、ほとんど死に絶えた。
さらに、堰上流域では流れが停滞し、春から秋にかけて、藻類が大発生し、アオコも観測された。運用しても心配ないと建設省がしきりに否定してきた夏期に川底が無酸素状態になる現象も発生、建設省の主張は見事に否定されている。

<利水のなし崩し的修正>
堰の目的のひとつに「利水目的」があったが、工業用水については需要はゼロで、採算のめどはまったく立っていない。こうした状況を受けて、建設省は工業用水から飲用水への利用を考えており、まったく水需要予測がいかに杜撰なものであったがわかる。さらに、河口堰の水は、周辺の住民の下水や廃水、汚水が注ぎこんでおり、危険性の高い飲料水になることは明らかである。さらに、飲料水は建設省の管轄ではなく、厚生省であり、費用負担の変更も考えられる。ただでさえ周辺自治体は河口堰建設負担に苦しんでいるにも関わらずである。(現在工業用水需要が全くないにも関わらず、愛知県720億円、三重県570億円、名古屋市150億円の費用負担がある)

<円卓会議の早期開催を>
実は、河口堰運用開始の時点で、建設省と市民団体、学者などで「円卓会議」が開かれたが、市民団体側の主張に十分に応えないまま、運用の結論が野坂建設大臣によって下され、運用が開始された経過がある。しかし、運用(堰を閉める)にあたって、野坂建設大臣は①運用を開始しても被害は軽微だ。②運用後も5年間モニタリング調査を続けるので、問題が生じれば、モニタリング委員会で運用の見直しもある。③国が国民の血税を使って行う公共事業にまちがいのあろうはずがない、私の判断が正しいかどうかは将来の歴史が判断する、というのを前提とした経過がある。
運用の被害は「甚大」であり、生態系の問題、水需要・利水の問題、災害対策など最新のデータで科学的に議論する場が必要であり、それが運用開始の前提であった。運動側は、こうした状況の中で、早期の「円卓会議」再開を今求めている。

<集会規模はかなり縮小>
状況について長くなった。集会・イベント等は12日にシンポジューム、そして前夜祭。13日は国会議員や各地の環境NGOが活動報告の後、デモとカヌーデモが行われ「建設省にレッドカード!」を訴えた。各地での川を守る運動が広がっているのに対して、長良川のそれは、すでに堰が完成・運用されているという状況から、かつての工事再開反対の時や、運用開始反対のころをピークに参加者は激減と言ってもいい状況ではある。またそれでも500人くらいがデモに参加するという粘り強い運動といっていいのか、少し迷うところではある。科学的データをもとに、建設省と渡り合う、そして公共事業のありかたを問うという政治的課題ともなってきているわけだ。他方で公共事業の見直しが進み、ダム建設計画が中止になった箇所も多く、なぜこれだけ環境破壊が進む長良川河口堰の運用が止まらないのか、それは不思議としか言いようがない。
私も12日からキャンプをしてデモに参加した。建設省はひとつの可動堰を開いていた。カヌーで河口堰上流を散歩をしたが、以前とは水の様子が違う。なにか澱んでいるという感じだ。毎年会う仲間とも再開し、恒例のイベントとは言え、運動パターンに少し変化が必要という感想を得て帰ってきた。10月には、四国徳島の吉野川で「吉野川河口堰」建設反対のイベントがあるそうで、これにも何とか参加しようと思っているところだ。(S)

【出典】 アサート No.250 1998年9月25日

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