【映画紹介】「ナヌムの家」
所属する組合から、チケット購入の案内があり、初日の5/18に早速観に行った。
題名の「ナヌムの家」は、「分かち合いの家」という意味だそうだ。この「分かち合いの家」は、ソウル市内鐘路(チョンロ)区にある一軒家で、元「従軍慰安婦」の女性たち6人が、仏教団体の支援を受けて共同生活をしている。彼女たちハルモニの日常生活を、撮影開始当時27才だった新人女性監督ビヨン・ヨンジュが、1993年から94年にかけて丹念に記録し、ハルモニたちの心の<つぶやき>に耳を傾けた作品である。
ハルモニたちの<つぶやき>は、私の胸を射抜いていく。中国湖北省武漢のハルモニの一人、ホン・ガンニムさんの話は強烈だった。「性器が小さくて大勢のヘイタイの相手ができないという理由で、強制的に日本軍の病院で性器を切られた」「毎日小さな部屋でたくさんの兵士の相手をさせられた」「慰安所を取り仕切る女主人-日本人にお金を巻き上げられ、食事もろくに与えられなかった」。
昨年夏、村山首相(当時)は「従軍慰安婦問題」について、歴代首相よりは一歩踏み込んだ表現で「謝罪」した。そして、「国民基金」によって補償していく計画を発表した。その基金である「アジア女性基金」の呼びかけ人に、村山首相自らの度重なる要請に応えて、「国家補償が筋」との自説を持ちながらも三木睦子さんは、呼びかけ人に就任されたと聞く。しかしながら、基金は予定の額には遠く及ばないばかりか、橋本政権になってからの政府の対応は後退しており、国連の勧告にすらまともに応えていない。
失望した三木さんが「呼びかけ人を辞任する」と表明されたのも、当然の結果だ。報道によると、他の呼びかけ人の中にも、三木さんに同調する動きがあるという。日本政府の無責任さ・厚顔無恥ぶりばかりが、際だって見えてくる「従軍慰安婦問題」である。
そういう現状を十分認識しながらも、監督のビヨン・ヨンジュは、「憤りを感じたのは、戦場に連行した日本帝国主義による戦争にというよりも、慰安所生活を終えても故郷に帰れず、自らを隠さねばならない状況を強制した、自分たち自身に対してだった」と語る。彼女は撮影が終了した今でも、2日に1度はハルモニたちを訪ねているという。
しかし、ハルモニたちの痛みを100%理解しているとは思っていない。ただ、ハルモニたちの苦しみが自分たちの苦しみでないわけはないと思うようになったという。ハルモニたちが世の中を見つめる視線で自分も見つめたいし、それを学びたいと語っている(映画パンフレットより)。そして、私も、そう語るビヨン・ヨンジュの姿勢に学びたいと思うし、毎週水曜日、日本政府の正式謝罪と賠償を求めて日本大使館前でのデモを行っている、元「従軍慰安婦」のハルモニたちの姿を焼きつけておきたい。
何はともあれ、映画をご覧になることをお薦めします。(6/28迄、第七芸術劇場で上映中)
(大阪 田中雅恵)
【出典】 アサート No.222 1996年5月26日