【投稿】「慰安婦は商行為」発言の根深さ
またまた、奥野発言が世間を騒がしている。従軍慰安婦問題について、「慰安婦は商行為に参加した人たちで、強制連行はなかった」と、「明るい日本」国会議員連盟結成後の記者会見で、発言した奥野衆議院議員は、これまでも史実否定の暴言を何度となく繰り返している。法務大臣の時には、暴言に対するアジア各国からの抗議で辞任に追い込まれている。「にもかかわらず」である。
さらに奥野氏の盟友である板垣参院議員は、抗議のため来日中の韓国人慰安婦・金相喜さんが「私は15歳で拉致、連行され、日本軍部隊の慰安婦にされた。私が生き証人だ」と傷跡まで見せて抗議した際に、「カネはもらっていないのか」と何度も尋ね、「いっさいない」と答えると、「客観的証拠はあるのか」とまで開き直っている。金さんはその場で「かつて戦場で私の体を汚し、50年たって今度は私の魂まで汚すのか」と抗議している。
こうした醜悪な議員の「頑迷さ」を支えているものは何か! 朝鮮人の元従軍慰安婦を支援している「ハルモニ(おばあさん)たちを支える会」の朴壽南(パク・スナク)さんが、「奥野議員のような発言が続くのは、日本政府が侵略戦争を認めていないから。」と語るように、発言の“根”は深い。初めて従軍慰安婦だったことを名乗り出た金学順さんは「お金のために日本の軍人に体を売る仕事をすすんで始めたのだなどという日本人が、まだいるということを聞いただけでも体が震えてきます。私たちはお金がほしくて声をあげているのではありません。日本が国としての責任をはっきりさせることを求めているのです」と語っておられる。体の震えが、怒りの震えが伝わってくる。
奥野議員が会長に就任した「明るい日本」国会議員連盟は、昨年の村山内閣が提起した「戦後50年国会決議」に対して「先人の努力を誹謗する決議には反対だ。日本は侵略的行為も植民地支配のどちらもしていない」として、野党の新進党と共に議決に加わらなかった「終戦50周年国会議員連盟」を直接に受け継いだ、もっとも頑迷な保守反動議員の集まりである。その結成趣意書には「侵略国家として罪悪視する自虐的な歴史認識や、卑屈な謝罪外交には同調できない」とする挑戦的な姿勢が露骨に示されている。これに、116人もの自民党議員が加盟していること、その中には現橋本内閣の二人の閣僚と6人の政務次官も名前を連ねている。こうした「歴史も恥も知らぬ」政治家たちが日本国内においては堂々とまかり通っているという事態は、実にいい加減で無責任な政治が横行してきたかという証左でもある。これに関連して、「アジア各地の元従軍慰安婦の現状などをルポした特集番組のロケ取材を進めていたNHK取材班が、上層部の中止決定で解散させられていた」ことも、看過できない事実である。取材に協力してきた韓国挺身隊問題対策協議会が放映中止に抗議し、「中止に至った経緯の真相を明らかにするよう」求めている。
しかし一方で、奥野発言に対して、自民党内部からも批判が出始めた。「7月2日の同党役員連絡会で、野中広務幹事長代理は『異常な時代の異常な出来事について、政府・与党が傷口をいやそうとしている時に残念な発言だ。発言を慎むべきだ。』と指摘。亀井静香組織広報本部長も『国策としてやらなかったとは思うが、軍が実態としてそうしたことを行ったのは事実だ。党全体として奥野氏のような認識は問題だ』と述べた」(7/3朝日新聞)という。また、奥野議員の地元である奈良県内を中心に、関西で抗議が広がっている。「議員辞職を求める」動きもある。こうした「懲りない」議員や同調する議員たちには、その責任を厳しく追及し、引退して戴くしかない。来たる総選挙を待つまでもなく、「即時辞職」を求めて行動することが求められていると思う。
(大阪 田中雅恵)
【出典】 アサート No.224 1996年7月20日