【投稿】「教育改革」の今、考える
「学校基本調査 登校拒否の児童・生徒は8万2千人」の新聞記事に、職業柄、目が留まった。平成7年度、「学校嫌い」を理由に30日以上、学校を欠席した小学生は1万7千人、中学生6万5千人で、過去最高を記録したことが、文部省が7日まとめた8年度学校基本調査の結果で分かった。小学生は前年度より8百人、中学生は3千3百人それぞれ増加した。全児童・生徒数に占める割合は、小学生0.2%、中学生1.42%で、前年度と比べ、それぞれ0.02ポイント、0.1ポイント上昇した。(日本教育新
聞) 全国的に、児童・生徒が減少し続けている中での「増加」である。絶対数は減っているのに、「登校拒否」者は増え続けているのである。ここに、問題の深刻さがある。 「文部省は15日、深刻化するいじめや不登校(登校拒否)問題で子どもたちの相談をしている『スクールカウンセラー』の派遣対象校を、現行の全国約5百校から来年度は約千校に倍増する方針を固めた。子どもの心理を把握し高度な専門知識に基づいて適切な助言を与えることができるため評判が高く、現場から派遣を求める要望が強かった。いじめ問題では、地域や家庭を巻き込んだ対策を進めるため、全国の主要都市で市民参加型のいじめ問題の討論会を開くことも決めた。」そうだ(朝日新聞、8/16朝刊)。行政サイドでそれなりの対策を講じているが、成果はいか程のものか・・・。いささか疑問である。
先ず、不登校(登校拒否)者の数については公表されたが、その実態については分からない。個人のプライバシーの問題もあり、詳細には発表できかねるとは思うが、なぜ不登校(登校拒否)状態になっているかの真摯な分析なくして、的確な対策は立てられない。せめて、前年度より増えた分だけでも、一つのデータとして公表し、当事者や関係者のみならずみんなで考えるいけるチャンスをつくる方がよい。学校だけで取り組んでも、事は何ら好転しないばかりか悪化の一途を辿っているのだから。
「市民参加型」を提唱するならば、もっと情報を公開する必要がある。これまでの事例だと、「いじめ」問題が起きた時、学校側は教育委員会に報告しても、当事者の保護者にはいろいろな事実を知らさず事を処理しようとして、保護者が学校に対し根強い不信感を持つに至るケースが多い。「参加型」とか「地域に開かれた学校」とか、「教育改革」の大スローガンの下、教育現場で叫ばれているが、実態をどうつくるのかが問題だ。
「市民参加」の前に、「子ども参加」「生徒参加」を実現させたいと思う。「子どもの権利条約」が批准されて日が経つが、子ども自身の条約なのに、条約の存在そのものを知らされていない子ども達がまだまだ多い。「個を育てる教育」、これも昨今の流行教育用語だが、「個」を育てる近道は、自分達の学校をどうつくっていくのか考える段階から「参加」させていくことだと、私は固く信じている。しかし、そう考えない、というより、考えることができない「頭の固い先生」が非常に多い。「先生は教師」との信条が染み着いているのである。「荒れている」学校ほど、子ども達自身に「再建計画」を練らしたらよい。必ず良いものが出てくるはずだ。茶髪を黒に染め直すことや、つまらない授業を棚に上げて私語を注意する等、本末転倒に近い「教育」にエネルギーを使い果たすのではなく、「子どもの権利条約」の本道に立ち帰ろう!
(大阪 田中雅恵)
【出典】 アサート No.225 1996年8月24日