【投稿】次の総選挙で何が争点になるのか
○政界再編いっきに加速
政局は細川辞任によって一気に流動化している。細川政権は、政治改革を前進させる政権としての歴史的使命を終えた途端に、その求心力を失った。さらに自ら墓穴を掘るように国民福祉税構想の提唱とその白紙撤回や日米首脳会談の決裂、内閣改造をめぐる不手際といった細川首相個人の指導性と庶民感覚の欠如をさらけ出し、内閣の崩壊は時間の問題であった。細川首相には辞任後も、自民党政権を崩壊させた佐川マネーに手を染めたことに対する反省と疑惑の全容解明への真摯な姿勢が見られない。また細川は小沢、市川のいわゆる一・一コンビに接近して自己の理想を反故にしつつあり、彼の個人商店である日本新党は分裂に向かっている。自民党も後継首相の指名をめぐって真先に名乗りを挙げた渡辺が新党を結成する意思を固めたり、北川・鹿野の若手グループも新党を結成するなど党の求心力の低下を止められない。社会党と民社党も一・一コンビの渡辺擁立劇に参加するグループと新党さきがけに同調して渡辺擁立に抵抗するグループに分裂する危険性がある。
問題を複雑にしているのは、ただ単に小沢を中心とする「普通の国」=軍事大国路線と武村を中心とする「小さくともキラリと光る国」=平和外交による国際協調路線との対立と次の総選挙を小選挙区で闘うのか、中選挙区で闘うのかという対立とが入り乱れていることである。小選挙区の区割もしないうちに中選挙区で選挙をするということになれば、選挙結果によっては政治改革が後退する可能性がある。本音では中選挙区で選挙をしたいという自民党と社会党の連携プレーが解散・総選挙を早める可能性がある。
○最大の争点としての外交・防衛政策
現行中選挙区か小選挙区かということはともかく、次の総選挙の最大の争点の一つは外交・防衛政策である。軍事大国路線をめざす小沢の新生党、渡辺新党、公明党、日本新党連合対平和国家路線をめざす武村の新党さきがけ、自民党の一部、社会党と民社党の一部の連合が日本全国で入り乱れて闘うことになる。それが小選挙区制での選挙であれば、自治体において一度勝った首長の下に権力が一気に集中することや自治体選挙における小選挙区の過去の経験から見て、最初に小選挙区で勝利した者に選挙区の有権者の相談や献金が集中することは必至で、敗者が巻き返すことはかなり困難になる。従って、おそらく年内には予想される解散・総選挙にむけて各陣営の激烈な闘いが始まっている。軍事大国路線側の政策は平和を愛する国民の感情に配慮して「国連の常任理事国になるべきだ」というソフトな主張として外務省との合作の下に打ち出されるだろう。
しかし、国連の常任理事国に日本が積極的に手を挙げることは、日本の軍事力の強化と軍事的な国際貢献という名の海外派兵=日本の国益に基づく軍事介入への道を開くことになるだろう。従って、平和を愛する国民の大多数の願う恒久平和の世界秩序とは相いれないものになりかねない。むしろ、軍事力を最小限にしながらアジアの平和と安全を保障するアジア版CSCE(全欧安保協力会議)の創設や国連の平和維持活動の強化への平和的手段による貢献、全般的軍縮の実行力を持つ国連への抜本的改革に対する加盟各国の協力体制の構築にこそ力を注ぐべきである。
○官僚国家に対する革命
総選挙でのもう一つの大きな争点は、現行の官僚支配を打倒する政策をどの党が、あるいはどの陣営が明確に打ち出せるのかということである。世界の流れと相容れない官僚支配の弊害が日に日に明らかになりつつある今日、明確に政治の優位を打ち出すことこそ「国民主権」の実現のために必要である。しかし官僚の支配は徳川幕府のように堅固であり、小選挙区の利益を実現したい国会議員に対する官僚による露骨な利益誘導が繰り広げられるだろう。選挙で国民の信任を得た政治が官僚を使うという行政改革に与野党とも力を合わせて着手するべきである。そこに手をつけることができなければ、何時までたっても国民が政府をつくるという民主主義の本来の姿を実現できず、世界のなかでの日本の発言権は低いままに止まるだろう。 (1994年4月15日 大阪M)
【出典】 アサート No.197 1994年4月15日