【投稿】旧連立野党の新党構想について
去る9月5日、新生・公明・日本新党・民社・自由・新党みらい・高志会・旧改革の会・リベラルの会、民主改革連合などの野党10党派(改革推進協議会)は、首脳会談を開き、新党協議会を設立を確認し、自社さの村山連立政権に対抗する統一政党の動きを進めた。はたして、この新党はいかなる政策を持っているのか。「新党結成にむけての国民へのアピール」と「責任ある政治を求めて・‥新党結成への基本理念」を材料に、新党を概観してみたい。
今回の新党協議会は、今月下旬の臨時国会での統一会派結成から年内での新党結成をめざすものと公明新聞9月8日号は報じているが・‥・。
<政党補助が一番の日的>
新党の結成を急ぐのは、総選挙が近いからでも、統一を求める声が巷にあふれているからでもない。先般成立した政治改革法案の政党補助を受けんがためであることは周知の事実である。民社・日本新党に慎重論があるにも関わらず、新党結成を強行に進めようとする原動力は、この一点に尽さるようだ。
<責任ある政治?>
村山政権の「人にやさしい政治」に対して、「責任ある政治」がキーワードになっている。「・・いかに困難であろうとも問題を先送りせず、改革にまい進する責任ある政治の実現」「38年ぶりに非自民政権を実現し、政治改革をはじめ、さまざまな改革に取り組んだ細川政権、それを引き継いだ羽田政権は、久かたぶりにみた青空であった」とし、「旧来の55年体制の主役たちが既得権の維持のために公然と手を握り・‥改革が後退することを真剣に危惧する」などが「国民へのアピール」のすべてである(かなり情緒的な文書になっている)。
基本理念では、「‥・今日までわが国を支えていたシステムは方向性を見失い、完全に行き詰まっている。・・・日本の良き文化と伝統を活かしつつ、地球社会を視野に入れ、自由・公正・友愛・共生の政治理念を基本とした活力ある福祉社会を築くことは我々の使
命‥」としている。
以下 3項の具体的(?)な政策が提示される。
1、たゆまざる改革では(1)健全な議会制民主主義を確立し、たゆまず政治改革を継続し、官僚依存の政治を打破し、国民に開かれた政治。(2)行財政改革と地方主権の確立では、極力規制を緩和し、行政の肥大化を抑えるべく行財政改革に取り組み、地方主権を確立し、効率的な体制を整え、国民の負担を極力抑制しつつ、その公平を期す。(3)経済改革と生活の質的向上では、規制緩和、高度情報化社会の到来に経済改革を進め、内外佃i格差を是正し、生活の安定をはかり、環境と調和する生活の質的向上をはかる。(4)教育改革では、教育制度の改革、日本人としての誇りを持ち、心豊かな国際人としての素養を高める。
2、長寿福祉社会の基盤の確立では、生きがいを感じうる活力ある長寿社会、経済的安定と雇用の確保、勤労者・生活者の立場に立つ公正な社会をめざし、少子高齢社会を視野に入れ、‥我が国社会の特質にあった質の高い福祉社会を築く。多様な生き方を選択できる男女共同参加型社会をつくる.。
3、平和な世界をつくる‥一国平和主義、一国繁栄主義からの訣別では、国連改革をはじめ世界の運営に積極参加、力に依存する冷戦時代の発想を乗り越え、信頼醸成、予防外交につとめ、世界の繁栄に責任をはたす。核兵器の廃絶、拡散の防止、世界の軍縮をリードする。日米関係の安定と強化、アジア太平洋地域の繁栄に寄与。自由貿易を守り、南北格差の是正、地球環境の保全。人権及び自由の確保に大きな役割をはたす、など。
<時代を反映する基本理念>
こうして全文を読んで見ると、それなりに考えられた内容ではある。地方主権、男女共同社会、官僚依存政治の打破、軍縮、地球規模の環境保全など個々の文言だけでは、それほど私自身も違和感がないほどである。
それだけ、時代の選択枝は狭くなっているのであろう。敢えて言えば戦後補償に代表される問題には触れられていないし、特に「勤労者・生活者の立場に立つ」と言うが、この新党がどの層に立脚するのかは、極めて曖昧である。
全体的には「自社さ」政権の政策と敢えて違いを出そうとしているのだろうが、残念ながらさらに具体的な目標・政策の提示がなければ、明らかにはできないようで、インパクトには欠けている。この点は、新聞各社の主張でも同様の指摘が行われている。
<新党結成に広遠い道>
今後、新党結成までには、党綱領の決定、さらに党首の選出方法や具体的人選、既存の各党派の組織を統合する課題など、様々な問題が待ち受けている。いずれ新生・公明を軸とする「一大保守政党」となるであろうが、新・新党結成というだけでは国民からの関心も期待も少ないことは間違いがない。
他人事と考えず、十分に注目していくことが必要と思われる。
(佐野秀夫)
【出典】 アサート No.202 1994年9月15日