民学同文書 No.5
民主主義学生同盟第四回全国大会 組織方針
–民主主義学生同盟全国化のために–
理論政策誌「新時代」創刊号より 1973年4月20日発行
一、学生運動の基本的特徴と同盟の基本的性格と任務
同盟の基本的性格の徹底と同盟の全国化のために当面次のことが必要である。(正しい政策とスローガン、闘争組織提示については言うまでもない。)
(一) 我が同盟は全国のすべての民主的、良心的学友の共有財産たるべき性格を名実ともに明らかにするためには「先進的学友は民学同に結集せよ」では全く不十分である。それは「すべての民主的学友は民学同に結集しよう」というスローガンによって置き換えられなければならない。同盟に同盟が闘う組織であることをたえず明確にしなければならない。
(二) 同盟内外の民主主義を徹底すること、即ち指導と責任と規律を正しい政策と行動の中でねばり強く確立すること。(後に詳述)
(三) 機関紙を真に大衆的な政治新聞として確立すること。(後に詳述)
(四) 同盟の拠点関西に於て同盟の力を圧倒的なものとし、諸分派による分裂主義から関西の学生運動の統一を防衛すること。
(五) 民主青年同盟(民青)学生班の中で献身的、良心的に闘っている部分(それは全国に広汎に存在する)との接触と話し合いと連帯を深め、共同の闘いをねばり強く追求し、これらの学生が学生運動の統一と高揚のために我々と共に努力するよう働きかけ、民主青年同盟指導部のセクト主義、分裂主義、プチブル民族主義の克服という共通の課題のために共に闘うこと、民主青年同盟の中にはいうまでも全国で最も多数の戦闘的でまじめな青年が広汎に組織されていることを決して忘れることはいけない。この評価は我々の義務と他の潮流とを区別する一つの大きな特徴である。
(六)—-略—--
(七)諸地方で行なわれている諸闘争の中で生れている無数の活動家(典型的には慶応大学での活動家)が、我が同盟に結集するよう強力な働きかけを行うこと。このことが成功するかどうかは同盟が真に大衆的で科学的であるかないかの試金石である。
(八)全国学友の中に、絶望の気分と極左主義の被害をまきちらし、学生運動の再生の事業を混乱させているトロツキー主義者諸集団(マル同中核派、社学同、社青同解放派etc)を、大衆闘争の圧倒的な高まりと、我々の具体的、科学的な批判によって克服する任務をかたときも放棄しないこと、良識と常識と真の大衆的要求からはずれた行動と要求にはっきりと反対すること。
日本国内の諸矛盾が激化するであろう我々の展望からすれば、これらの諸集団のニヒリスティック(絶望的)なアナーキー(無責任)な思想と行動が一定数の学友を一時的にひきつけることは十分考えられる(このことに注意せよ)。従って我々は機械的な反対ではなく学友大衆に真の出口、突破口を具体的に示し、その行動の先頭に立ってこれらの傾向を克服しなければならない。
(九) 以上のことから、自ら浮び上ってくる課題は我々の思想を民主的で科学的なものに向ってたえず純化するための思想闘争と学習活動にたえず大きな関心を払うこと。ニヒリズム、アナーキズム、絶望の哲学、退廃的な気分と行動を、学生層の中から一掃するために闘うこと。(後に詳述)
以上のような基本路線を貫徹することによって我々は全国的、戦闘的、民主的、大衆的、知的、道徳的に高い学生同盟を建設し得るだろう。
二、政策の決定と実行
(一)政策の具体化とは
諸課題に対して特に一局面を規定する課題(それは必ずある。だから要求羅列主義は無意味で、無力で、無能なのだ。決定的問題が明らかになっている時要求をただ羅列して対置することは客観的には反動的になる場合すらあることを銘記せよ。)–全国的問題でも、学内問題でも–に対して具体的政策を示すことは勿論必要であるが、その場合
(a)この段階、この局面に応じた攻撃地点、目標が一見してわかるスローガンを必ず提示すること。
(b)–これが決定的に大切なのだが–要求を実現に導く力を保障する大衆組織の名称、形態、規模、発展テンポ、性格を明示し又考慮すること。
(c) 実際に組織する活動及び組織に全同盟員がなんらかの形で必ず参加し、先頭に立って闘うこと、(このことが大衆に対して責任ある態度を示すことの内容ではあるまいか)
(d) なかんづく各級機関を構成しているメンバーについてはこのことが言える。大衆組織への責任ある参加と私心なき援助と指導が絶対必要である。
(e) 機関を構成しているメンバーが政策の出しっぱなしで、実行は一般同盟員まかせという「活動方式」を断固として排除する。(機関は政策提案グループ、プラン政策者ではない)
(f) このことは機関や同盟を他の組織へ解消したり、同盟による大衆組織の「のっとり」を意味しない。
政策は組織=力にまで具体化されねばならない。
(二) 政策決定
政策はなによりもまず全国委が責任をもって提示するが、政策決定に対して全同盟員が参加するようたえず促さねばならない。つまり同盟のあらゆる組織で、特に基本組織=支部で政策と課題についての活発な政治討論が行なわれるよう機関は計らなければならない。このことなしに政策は全同盟のものとならず、全同盟の政治的意志統一と水準の引上げをもたらさず。ましてや全学友のものとならない。
全同盟員が自己の判断にもとずいて大衆的闘争に参加することはこうしてかちとれる。政治闘争こそが同盟の方針の悪しき抽象化、たちおくれから同盟を守る。
(三) 政策の実行と総括
政策が決定されたら全同盟員が、それぞれの大衆組織地位、自己の政治能力、条件に応じて実行しなければならないことは勿論である。この場合機関は過ぎ去った届出を結論づけ、新しい局面に対し新たなスローガンを提示することが迫られる。
どの局面にいるのか、勝利しつつあるのか、整然と又は混乱しながら後退しているのか、次の攻撃はどこかがあいまいにされたまま闘争指導が放置されるのは明確な敗北よりも大衆の自信を衷失させることを銘記せよ。
全同盟的な総括活動、全大衆的活動及び次の突破口の明示-–それはいかに少ない可能性の場合でも必ず存在する–をさし示しそこへ全勢力をつぎこむこと。(戦術の核心)要するに一たん闘争にとり組んだら最後まで推し進め、途中でうやむやに放棄ないこと、これが大切である。
(四)一般屋からの脱却、他の団体の尊重
一般的「真理」—-真理は常に具体的である—をいつでもどこでも通用するような「真理」を一般的に述べることから脱却しょう。同盟は各分野に於て、なるべくならその分野から活動家を発掘するよう努力することが大切である。自治会、生協、新聞、寮、平和運動、教育問題、諸サークル等々。
大切なことは、これらの分野での活動家を「もぎとったり」「ひっこ抜いたり」しないということである。その団体の正常で継承された発展を妨げ、同盟がその団体を軽視していることを意味するからである。
同盟は、それらの団体がつきあたっている問題を、自己の問題としてそれらへ回答を示すよう努力することが必要である。
そのために機関はその問題を具体的に研究すると同時に、戦線別活動者会議等を適時ひらいていくことなどの方法がある。
(五) 同盟の大衆化のために
同盟の支持者や新学の読者を集めた活動者会議を時期と条件に応じて開き、諸課題や同盟の新聞について支持者の意見をきき、討議を行なうことは、同盟が大衆に深く根をおろす一つの有効な方法である。
(六) 同盟が力量を高め全国化を目指し、正しい戦闘部隊として登場しつつある現在、権力の同盟に対する挑発・弾圧が強められようとすることは予想される。
佐藤内閣が池田とは違った極端に反動的な政策(三矢事件、高杉発言、防ちょう法についての発言を見よ) をとっているとき、このことは特に注目に値する。
文書活動、同盟の諸会議は特に注意を要する。
しかし、学生の場合には、特に街頭デモンストレーション、大衆集会に於て官憲が直接的弾圧を強めようとすることは容易にうかがわれる。
これらに対していかに闘うか、同盟諸活動に於ける民主的、自覚的規律を高めること、街頭デモを少数の無秩序の形で決して組織しないこと。街頭デモを真重に準備し広範な大衆的支持がある場合にのみはじめて実際行動に移ること、決定的な瞬間に圧倒的なデモを一度組織することはその十分の一のデモを十回組織するよりはるかに有効であり、学友大衆に確信を与えるであろう。
正しい意味での戦闘的な形態を常に工夫することを怠ってはならない。
権力から我々と大衆運動を防衛する基本的なかぎは、これらを防衛するものが常に広範な大衆であるということ。権力が最も恐れるのは広範な自覚せる大衆だということをくりかえしくりかえし確認することである。同盟が先に述べた諸活動の方法により、あらゆる分野に根をはり、同盟を大衆が共に防衛するようにたえず大衆との広範な接触を決して怠ってはならない。同盟が無責任なひとりよがりの政策やハネ上り、右翼的方針などによってハダカになり浮き上がっている状態は最も悪いことである。権力の弾圧が不幸にして起きたらその場で慎重かつ毅然たる態度で闘い、だん圧を大衆に知らせ暴露すること。これらのことはいうまでもなく、同盟が小さくかたまり、ゴソゴソしたサークル的活動に専念することを決して意味しない。
三 同盟の組織運営
(一) 同盟内外民主主義の徹底
政策決定に全員が政治討議をもって参加することは前述したが、大切なのはこの場合討議論争は説得と納得にもとずいてのみ行なわれ、行政的に行なわれないこと。
論争はわかり切ったことについては起らず、一局面から他局面の移行期や重点をどこにおくかに対して起って来るのである。論争には節度を守ること、機関は論争の対立点を明確に徹底させ、正しい少数意見が急速に多数に転化できるよう処理することが大切である。正確に表現されていないが正しい問題提起を含んでいる発言に特に注意し、それに高い形態を与え同盟全体のものとすること、新入同盟員に対しては、時にこの態度を厳守する必要がある。
同盟内の言論の自由とは各自が無根拠な勝手なことを無制限に討議するためにあるのではなく、科学的真理(具体的認織)が組織内に貫徹するための絶対的条件であるということ、民主主義とは指導と責任と規律が不可欠の条件としてあることを深く確認することが必要である。(このことについてはJ・Jルソー「社会契約論」参照)
(二)全国委は特に重要な決定については全支部へ直接通信を報告しなければならない。
このことは同盟が全国化し、絶えざる接触が不可能になる段階では決定的である。
(三)支部からすぐ上の機関へ通信が定期的に報告されること、特に重要な動きについては直接全国委へも報告する。
(四)無責任主義について
学生が直接の生活の基礎を持たず、思想が混乱し、労働運動が全大衆に確信を与える程発展していない現在、規律の乱れの根源は大いにある。それは出席率、時刻、同盟費、紙代、同盟通信にあらわれる。
これについては、正しい政策とスローガン、活発な政治討議及び各同盟員の任務分担がはっきりしていることなどによって、各自の目覚をたかめ、訓練する以外如何なる道徳主義によっても克服されない。
四 研究会活動
同盟の思想(政策を含む)的水準を高め、あらめる色合の反動的、反民主的、反科学的思想と闘争し、全日本、全世界の諸闘争の展望を明かにし、学生層の中からニヒリスティックなアナーキスティックな気分の思想を一掃するために同盟は次の文献を研究会用文献として推せんする。
…・略…・
学習、研究活動の要点は
(1) 同盟の思想的・理論的水準のひき上げとその統一のために行なうのだということである。だから経験ある同盟員や機関の個人的なあるいは特定の関心を押しつけたりするものでない。
(2) それは定期的に行なわれ一言二言を徹底的に研究しようとする態度が必要。
(3) 学生は理論的思想的問題に特に鋭い関心を示す階層であり、従って思想の重要性は他階層よりはるかに大である。
(4) 政治・社会の理論を科学として学ぶという態度が大切である。
(5) 資本主義が独占へ転化し、ますます思想文化が腐敗し退廃している今日、我々はニヒリズム、アナーキズム、などの哲学、非合理主義に対して科学的、民主的、合理的思想を具体的に対置することが大切である。
五 機関紙・誌
(1) 同盟の機関紙の根本性格。活動家むけの「理論集」ではなく大衆的政治新聞である。新聞が宣伝者、煽動者、組織者であるとすれば新聞は局面の具体的な主張をたえず明示することが必要。同時に各大学の生々しい大衆闘争や諸活動についての記事を出来るだけ多く載せることが大衆紙としての決定的性格を形づくる。新聞記事についてはなるべく客観的形式でかくこと。活動家の主観、実感をそのままぶっつけたような記事や主張は最低である。同盟の直接の関心事と大衆の直接の関心事がいつも一致しているとはかぎらぬこと。同盟の関心の押売りが主張ではないこと、一言にしていえば、学友の正しい関心にたえず密着していることである。
(2) 新聞の編集技術について少々
(a) 主張は必ず具体的で簡明であること。
(b) 記事は一番大切なことから書くこと。
たとえば集会についてであれば、時、場所、人数、スローガン等々
(c) 見出し四分 本文六分
(d) 三度しゃべれる。見出し・リード・本文
(e) ある闘争について記事を書いたら次号でその後の経過や終束の事情についてもう一度報道すること。
(d) 速報性、定期性
機関紙は当面、三千部をめざす。
一面 主張、学生運動が直接タッチしている闘争の展望、コラム等々。
二面 学生運動が直接タッチしていないが全国民的な、又は労働者階級などの重要な闘争についての報道と解説、評価、外国の学生運動の報道。
三面 世界と日本の政治経済社会評論論文及び学生の生活状況についての図解、図書欄、コラム、他潮流の批判。
(4) 各支部は財政と能力の許す範囲で各支部機関紙を必ず出す。性格は中央機関紙に準ずることは勿論。
(5) 新聞の財政は、紙代、大衆カンパ、同盟を支持する団体及び個人のカンパによって支えられている。
(6) 編集局は三人の専門のメンバー。局長・記者・財政係。各支部の報道記事は原則として支部委員長あるいは班長があたる。
(7) 機関誌
重要な理論問題、又はそれについての論争、他潮流の系統的批判、学生同盟論、自治会論、学生運動論、長期的政策などについては機関誌が必要である。しかし、これは第一に同盟の大衆的全国化と財政の確立取びこの仕事に専念できるメンバーの獲得が必要、将来の課題として重要。