【投稿】今、政治改革を問う 政界再編へのカウントダウン
<国民の厳しい目が政治を変える>
いよいよ政界再編が現実味を帯びてきた。本気で政治改革を考えている者も、そうでない者も近づく解散・総選挙を勝ち抜くために必死で「改革派」を名乗っている。果たして政治改革に向けての政界再編は本当に実現できるのか。期待を込めて「政界再編は、近々起こる。」と考えたい。
自民・社会の1:0.5体制が国際情勢の急激な変化に対応した新たなビジョンを示せず、相変わらず建前と本音を使い分ける国対政治を続けるのであれば、早晩その政治的限界に対する国民の審判が下されるだろう。自民が小選挙区制、社会・公明が小選挙区比例代表併用制という形で対立し、共に政治改革への意欲を見せながら成立せずという結論に導くという目論見が一部の指導部にあったとしたら大きな誤算になろうとしている。もはや国民の目をごまかすことはできない。なぜなら、4年前にリクルート・消費税・農政という明確な争点が国民の政治に対する学習を深めさせて以来、自民党のみならず社会党の闘うポーズと現実とのギャップにはもううんざりしているからである。
金丸の不正蓄財への怒りもさることながら、政治を変えることができないことの責任追及が野党第1党である日本社会党に向かうのも当然である。いつまでたっても労組依存から脱却できず、国会の過半数を占めるだけの候補者を擁立できる可能性が見えてこない。さりとて自民党も含めて共に連立政権をうちたてて政権能力を養うという意欲も見えてこない。内側から変わるエネルギーはもう感じられない有り様である。このままでは、思い切ったショック療法=選挙制度改革を含む腐敗政治一掃の徹底的政治改革しかないと国民が思うのもやむを得ない。
4月中旬に政治改革推進協議会(民間政治臨調)が提唱した小選挙区比例代表連用制は、既存政党の議席をほぼ維持させつつ、現行の中選挙区制度を木っ端微塵に破壊しようとするもので、現行制度のまま一票の格差の1:2以内への定数是正によって党勢を拡大したい日本共産党以外は、最終的にこの案を受け入れざるをえないだろう。まさに自民案と社・公案の折衷案ともいうべきものであり、これを成立に至らせなかった政党や派閥は国民の大きな批判に直面すると思われる。それほど国民の政治に対する怒りと逼塞感が大きいとみるべきである。(4月29日のTBS系列「ニューース23」の調査によると政治改革のために選挙制度を変える必要があると答えた人は実に3分の2に達している。)
<生きた議会制民主主義=政権交代への道>
このような根本的治療は、選挙という痛みが感じられる時期だからこそ現実的効果があるのであって、年内にも予想される解散・総選挙が終われば元の木阿弼になりかねない。世論調査で社会党に迫りつつある日本新党といえども、総選挙という国民の審判を2回、3回と受けていく度に一時の勢いが無くなる可能性もある。また自民党=国家官僚という長年の繋がりが簡単に切れると甘く見ることもできない。敵は依然として全国の津々浦々まで利権構造を張り巡らし、歯向かう者を干上がらすことも兵糧攻めにすることも思うがままなのである。このような中央集権=官僚天国・国民奈落の有り様に対する怒りを平成維新の会は明確に国民に訴えることで人気を博している。しかし農業切捨てや弱肉強食の自由経済主義はインテリゲンチャーやエリートサラリーマンの支持は拡大しても、中小企業の経営者や兼業農家、未組織労働者や公務員といった帽広い層の支持を得にくい。あまりに経済理論に偏りすぎており、現実の生身の庶民の暮らしをどうするかいう政治の世界には馴染まない。従って政界再編の触媒にとどまるだろう。
一方、細川護熙率いる日本新党は、6月の東京都議選を勝って勢いをつけ、一気に解散・総選挙の一人勝ちをするのではないか。もちろん50人~60人(あるいはもっと多く)の候補者をどれだけ当選させたかという意味での勝利であるが。問題は勝ったあと、自民党改革派(羽田派等)と公明党、民社党、社会党の一部、社民連などとの新党づくりに向かうかどうかである。何も2大政党制を無理につくる必要はないし、日本でもかつて連合政権が当たり前の時代があったのである。
最後に、社会党が現実に政権を担う政党になるために最大の問題点は、「企業献金の全面禁止」を公明党と一緒になって言うことではないか。公明党は免税の宗教団体から資金援助を受けられるから企業献金を禁止することは他党に揖害を与えることになる。政党を国民の税金で養うことに国民の理解がまだ得られない以上、現実の選挙を勝ち抜き候補者を増やすために、「企業献金禁止」から「企業献金の規制と公開の強化(使途不明金への200%課税等)」への転換に踏み切るべきである。時期をみて国民の意識を政党への公費支援に賛成の方向へと誘導して行けばよいのである。ここに踏み込めるかどうかが社会党の連合政権づくりへのメルクマールとなる。現実の日本は企業社会であり、勤労者の多くは「会社人間」である。残念ながらこの現実から出発せざるをえず、理想で一定の票を取りつづけることはできても政権を奪取するためには、それなりの戦術が必要なのである。国民は耳障りの良い言葉よりも政党が本気でめざすものは何かをシビアに見つめている。 (93年4月30日 大阪M)
【出典】 青年の旗 No.187 1993年5月15日