【コラム】ひとりごと–「植村直巳と山で一泊」を読んで
◆「植村直巳と山で一泊」という本を読んでいて、気にかかるくだりがあった。◆「それとふつうの人の山での遭難というと、気温が下がって体の熱を奪われて死ぬということが多いですね。・・・・ただ恐いのはね、助かろう助かろうと焦って、とことんまで歩いて、体力を使い切ってしまうことです。冷静に生きのびることを考えず、どこかに辿り着こうと思って、とにかくどんどん行ってしまう、そして力尽きる。それが恐いですね」◆私が連想したのは、委員長選挙のごたごたといい、近ごろ良いところなしの社会党のことである。◆さらに、引用を続ける。「どんなときでも、状況が厳しければ厳しいほど、体力を使い切らないで、少しでも余力を残すのが大事なんだと思うんです。そうすれば状況を判断する余裕も生まれますし、生きのびる工夫をいろいろやってみることができるわけです」「正しい判断をするには、余力がどうしてもなくちゃいけません」「山で迷ったりして遭難した時はこの体力の温存というのが決め手になるんじゃないでしょうか。50%の体力を残しておけば、わりに周囲の状況が冷静に判断できるし・・・・」◆果たして社会党が遭難状態かどうか不明だが、自滅の遣の方に近いという印象を持っている。10年前マッキンリーに消えた冒険家植村の言葉は、厳しさを増す社会党叩きの中で、冷静な判断を行うためのヒントにならないか。「改革派」としての再生には、開かれた議論を通じた冷静な判断が求められているように思う。 (佐野)
【出典】 青年の旗 No.190 1993年9月15日