【投稿】ユニオンとしてはじめて政府交渉をセット
<問われる地域ネットワーク>
コミュニティユニオン第5回全国交流集会が9月24日から2日間、東京江戸川で開かれ、40ユニオン・団体、250名以上が参加した。①今年の全国集会の特長は「全国ネット」として初めてパート・派遣・外国人労働者問題をテーマに労働省交渉をもったことである。政策制度の立案過程に関与する交渉の設定は、非自民連立政権の成立という有利な条件に加え、「地域社会に密着した多様なユニオン運動のねばり強い5年間の蓄積」の成果として高く評価できる。交渉には140名が参加し、「政府と市民の土曜協議会」担当議員である岡崎宏美・五島正規両衆議院議員が同席した。
パート問題では「パート法」での「均衡」を欠いた処遇に対する「指導」等のチェックポイントを迫り、労働省側は「個々の事例は答えにくい。行政指導の対象とする」と回答。「指針」の作成ではユニオンと話し合うことが確認された。
外国人労働者問題では労災申請時パスポートやビザの写しの添付が義務づけられている問題、平成4年には外国人が労災で23人死亡しているが、遺族補償給付は一人しか通用になっていない点を問いただした。労働省側は「パスポートなどの添付はあくまでも任意、指導はしていない。労災隠しの排除に努めており、死亡者数の差は調査し報告する」と約束した。
派遣問題では「交通費は賃金と別に支払うのが望ましい。行政指導する」「事前面接は違法、厳しく取り締まる」と回答した。
労働省交渉は今回だけではなく「パート法」の「指針」に「差別禁止」を盛り込むよう今後も継続する。 25日の一橋大学金子郁容教授ら4人のパネラーによるパネルディスカッション「コミュニティユニオンと地域ネットワーク」では、パートや不安定雇用労働者の組織化から始まったユニオン運動が、国籍を問わず地域の労働者の「24時間の生活と労働」そのものが運動の領域となる広がりを反映してきたこと、地域社会の再生やコミュニティの創造に大きな役割が果たせるのではないかという視点から「多様な分野でのネットワークの試みと拡大」にスポットが当てられた。
一方、地域労働運動の中で作られたユニオンは労働運動の再編の最終局面で「まったなし」に運動と組織の「自立」が求められている。分科会でも「どのように活動を継続させるか」真剣な討議が続いた。連合地協によって結成された秋田ユニオンの活動も報告されたが、「連合、自治労をはじめ単産・地方・地区の労働組合との交流、連帯強化。全国安全センター・派遣労働ネットワーク・外国人労働者ネットワーク・労働弁護団、運動に関係する市民運動などとの交流・共闘ネットワークを強める」(94年度活動計画)ことをどう具体化するかが問われている。
さらに今回、「協同事業」「パート労働」「外国人労働者問題」「相談活動」「組織運営」「セクシヤルハラスメント」の6分科会が準備され、社会状況を先取りした運動や試行錯誤をいとわず活動を続ける各地のユニオンの現状が報告された。
また、24日の午前には「女のユニオン・かながわ」が呼びかけたイトウヨーカ堂/イハラケミカルでの「不当解雇」・「セクシヤルハラスメント」にかんする2件の抗議行動がオプションとして取り組まれ、企業側と交渉を行うなど全国集会の前段のタイムリーな設定として好評だった。
<労働組合の”コンビニ”といわれるユニオン>
労働運動への視線が、このところ冷たくなる一方である。とくに活動的な人たちからのきびしい評価がある。大手企業での労働組合は企業システムの一要素として取り込まれ、専業化した人たちの「仕事」になっており、組合員はほとんど「組合」らしい活動には無縁である。それにやはり会社あっての社員、労働者、組合という関係を重く引きずっているようだ。
コミュニテイ・ユニオンはそんな中でも、ちょっとちがった様相だ。ここには正社員もいれば、パート、派遣、外国人もおり、職種も様々だ。それに日本的な下請け重層構造の中の底辺、中小というより零細的な事業所で働く人たちが多い。そんなことから労働組合の“コンビニストアー”ともいわれ、扱う問題も企業内組合のそれとはずいぶん変わっている。でも、それは一人ひとりの組合員の問題をしっかりと据えて問題解決をはかろうという、自然な、むしろ当然あるべき姿勢からでてきている。
だが、もちろんその力量には限界もある。第一には対処療法的な処置しか出来ない問題がやはり圧倒的に多いことである。これは「パート110番」などの相談活動から運動が始まっているということもあるし、「地域」という共通項はありながらも、あまりに広範囲な人たちを組織していることにもよる。しかし、運動の実績が蓄積され、地域社会での認知も進めば自ずとそれは強制力として機能してくることに期待したい。
それだけにユニオンはユニオンだけでなく、さまざまな地域運動との連携をとりながら問題解決をはかっていくという姿勢もある。連合定期大会で山岸会長は「組織率1.8%といわれる中小企業労働運動を最大の運動課題と位置づけ、地域での『目に見える運動』を推進しなければならない」と訴えたが、地域連合とも連携を取りながら運動を進めていくことも今後の大きな課題である。逆に企業内組合にとってもユニオンとの連携は有意義なことであろう。
第二にユニオンは少ない組合員でがんばっているところが多い。それこそ手弁当でやっているところがほとんどである。専従者や事務担当をおけるところなどは小数である。一企業の中とは違い、それこそ普段はアフターファイブの中でしか存在しない活動である。ほっておけば、何もなくなってしまうようなものだ。逆にいえば組合員が助け合わないと何もできない体質なのである。これが今もとめられているユニオンの自立であるが、地域運動との連携の中での自立とともに議論をよんでいる。
この二つの問題がユニオンを支えていると同時に弱さでもある。これらユニオン運動の現状と課題については「ユニオン・にんげん・ネットワーク」(第一書林、2200円)によくまとめられている。この本は先の東京全国集会へ向けて各ユニオンのアンケートを通じてまとめられたものである。興味ある方はご一読を。 (東京・R)
【出典】 青年の旗 No.191 1993年10月15日